間違いだらけのネットワーク作り(161) 2001/01/13
記事評「広域LANサ−ビスvsIP−VPN」(日経コミュニケーション1.15)

この前の3連休を使って、NET&COM21フォーラム「VoIPによる大規模ネットワークの構築技法」の講演原稿を完成させました。 スライド数80枚の大作(?)です。 昨年は「VoATM/FR/IPによるデータ/音声統合網構築技法」というテーマだったのですが、今年はVoIPに絞ってしまいました。 「VoIPなんてまだまだ」というOpinionをここ1〜2年書いてきた自分の豹変ぶりに感心します。 まあ、会社でも朝令暮改人間と思われているのでどうってことありません。 「ころころ言うこと変えるな」と言われて私が言い返すのは、「自分の考え方が変わったわけじゃない。 状況が変わったんだ。」  世の中もお客様のニーズもコロコロ変わる時代。 朝令暮改は最高の賛辞(?)かも知れません。

ところで、1年ほど前まで大した規模でもないVoIPをやって「これからはVoIPだ!」とベンダーのセミナー等で盛り上げていたいくつかの企業は最近めっきりおとなしいですね。 どうなっているんでしょう? その後。 大規模拠点から小規模拠点まで含む、全社規模のVoIPを目指していたはずですが。 成功したなら、今こそブチあげて欲しいものです。 

記事評「広域LANサ−ビスvsIP−VPN」(日経コミュニケーション1.15)

日経コミュニケーション2001年1月15日号(P.312)が広域LANサービスとIP−VPNの比較をしています。 ネタが古いですね。 情報化研究会では昨年10月14日に第8回土曜研究会「L2−VPNとL3−VPN」を行い、NTTコミュニケーションの方とCWCの方に講演(バトル)をしていただき、両者のメリット・デメリットを比較しました。 その後、12月14日にはNTTコミュニケーションズの方に「IP−VPN」の詳細を説明していただきました。 

日経コミュニケーションの記事、さらっと読みました。 けっこう公平に書けていますね。 でも、「アウトソーシング志向ならIP−VPN、自社で運用したければ広域LANサ−ビス」(p.138 図5)は大間違いですね。 私のようなSIは広域LANサービスであれ、何であれ一括してアウトソーシングを受けています。 あらあら、図5には「別途インテグレータなどとアウトソーシング契約を結ぶ格好になる」とちょこっと書いていますね。 別途結べばいいじゃないですか。 アウトソーシングならIP−VPNなどと断定するのはおかしい。 

せっかくですので、(150)「L2−VPNとL3−VPN」(第8回土曜研究会より)2000/10/21に掲載した比較表を(158)「IP−VPNの実像に迫るA」2000/12/16、日経コミュニケーションの今回の記事の情報を加えてメンテナンスしておきましょう。

私の言いたいポイントは次のとおりです。
@技術的にL2−VPNの方が優れている
技術的に優れている、というのは「難しい技術を使っている」という意味ではないですよ。 MPLSと比べれば、L2SWはシンプルですね。 使いやすい、という意味で優れているのです。 理由は次のとおり。
○L2−VPNは帯域がエンド〜エンドで確保されている
これがCWC広域LANサービスの最大のメリットです。 設計ができる。  日経コムの記事ではIP−VPNはユーザの利用帯域よりVPN内の帯域を大きく取る、と書いてありますが、そんなこと100%保証できるわけがない。 もし出来るなら、キャリアは堂々と「帯域を保証します」と言い切るはずです。

○ルーティングも含めてL2−VPNはL3のプロトコルが自由
日経の記事でIP−VPNはOSPFが今後対応予定と書いてありますが、99%無理です。 「IP−VPNの実像に迫るA」でも書きましたが、現在のIP−VPNの最大のネックはキャリア側ルータの処理能力、とりわけプロバイダー・エッジのルータです。 MPLSを搭載しただけでガックリ処理能力が落ち、ユーザごとのルーティング・テーブルを管理し、優先制御までしているケースもある。 IP−VPNがスタティックとBGP4しかやってないのは、処理負荷が軽いからです。 計算量の多いOSPFをユーザに開放したらルータがもちません。

○網内遅延が少ない
日経の記事でも技術的にL2VPNの方が遅延が少ないと書いてあります。 実測でも少ないです。 これはVoIPをやるときには重要な要素ですね。

○ルータがいらない
L3SWを使えば大規模なネットワークでもルータは一切いりません。

A自由に作るか、事業者に任せるかが、ポイントではない
日経の記事では表題に「料金体系/水準が似通う新型サービス  自由に作るか、事業者に任せるか」とあり、広域LANサービスを使うと自由に使えるけど自分でやらなきゃいけない。 IP−VPNだとキャリアにルータの提供から含めて任せられる。 つまり、IP−VPNの方がユーザは楽できる、といいたいようです。 そんなこと、ぜんぜんマトはずれ。 ユーザが自由にサービスや技術・製品を選択し、構築・保守・運用を一括して業者に任せられる。 そのために私のようなSI事業者がいるのです。

現に私のビジネス上のお客様は設計・構築・各種の回線の一括提供・ネットワーク機器/サーバの運用・保守を一括で任せていただいているケースがほとんどです。 キャリアに身も心も任せて回線サービスや機器の自由な選択が出来ない「囲い込まれた」状態になる必要などありません。 
 
 

L2−VPNとL3−VPNの比較
(2000/10/16第1版、2001/01/13第2版)
L2−VPN
(CWC・広域LANサ−ビス)
L3−VPN
(NTT−C・Arcstar)
コンセプト −Ethernet over SONET
−プロトコル・フリー、ルータレスなWANの実現
−セキュリティが保証されたベストエフォート型の高速・高品質(?)IPネットワーク
サービス開始時期 −平成11年10月 −平成12年7月
提供地域 △83都市(2000年3月、沖縄のぞく) ○112AP(2000年末予定)
網構成 −センタースイッチ1ヶ所+SONETバックボーン −バックボーン・ルータ+ユーザ収容ルータ
UNI −10Base−T、100Base−T
−終端装置はイーサネット終端装置
−HSD、DA、ATMメガリンクに準じる
−終端装置はDSU/ONU
アクセス回線 −HSD、ATM、DA、FWA(1.5M以上)
−128KDA
−HSD、DA、ATMメガリンク
帯域保証 ○バックボーン帯域をSONETの時分割多重で確保 △保証なし
網内遅延 ○小 △L2に比較して大
QoS △優先制御等なし △なし(優先制御は予定あり)
セキュリティ −VLAN(物理ポートがユーザごとに独立) −ラベル(バックボーンの物理ポートは共有)
伝送可能なプロトコル ○IP、DecNET、等Ethernetで扱えるもの △IPのみ
回線バックアップ ○OSPF、EIGRP等による冗長化や負荷分散が容易 △スタティック、BGP−4しか使えず、難
VoIP対応の難易度 ○帯域が保証され網内遅延が少ないため、エンドシステムで音声の優先制御をすれば比較的容易 △帯域保証、優先制御とも網側にないため難
設計の自由度 ○帯域保証があるため帯域設計ができる
○ルーティング・プロトコルが自由
○ルータレスが可能、ルータやL3SWの選択が自由
○VoIPの設計が容易
△帯域保証がないため帯域設計のしようがない
△スタティックまたはBGP−4
△ルータが不可欠、将来特定ベンダーのルータとそれ以外でサービスに差が生じる恐れ
△VoIPの設計難
接続機器 ○10、100Mイーサネットなので接続機器が安価 ×1.5M超ではATMなのでルータが高価
回線の速度 △128K〜45M ○64K〜135M
月額通信料 △11万円(128K×2拠点接続、拠点が増えると安くなる)
△65万8000円(1.5M×2、拠点が増えると安くなる)
○9万4000円(128K×2)
○57万6000円(1.5M×2)
安定性 ○シンプルな仕組みなのでトラブルが起きにくい △ソフト依存、ルータの処理能力がトラブル起因になりやすい

月額通信料は帯域保証があるものと、ないものを比較しているので意味があるのかどうか。  10月21日の記事でも書きましたが、L2VPNをCWCだけでなく他のキャリアもどんどんやるべきだと思います。 キャリアの設備投資も高価なルータを多用するL3−VPNより、L2−SWで構成できるL2−VPNの方が少なくてすみます。 エンドユーザの選択肢を増やした方がデータトラヒック全体の利用が伸びるのではないでしょうか? 

今週は8人の方が情報化研究会に入会しました。 その中の一人がメールに次のようなことを書いていました。
”私は通信キャリア入社以来、SIをスーパーユーザへ提供しております。 当社においても目的もなくIP−VPNへの移行提案が熱を帯びており、本来のサービス特性を無視されコスト のみで販売されていることに頭を悩ましております。 キャリアとしてIP−VPNは"おいしくない"サービスですが有効なサービスを発掘するためにも避けては通れないのではと考えております。” 

「おいしくない」サービスを何故売るんでしょう? 「有効なサービスの発掘」といいますが、トラブル対応の嵐の中で何かいいサービスが見つかるとでも言うのでしょうか? むしろ、自由度の高いL2VPNの方がキャリアも付加価値が付けやすいのではないでしょうか?

L3VPNはルータ・ベンダーの戦略に乗っかった1キャリアが安さだけが取り得のサービスでフレームリレー・ユーザの切り崩しを仕掛け、仕方がないので残りの2キャリアも追随。 結果的にフレームリレーのユーザがIP−VPNに移行しているだけで、キャリアの収入は減少。 儲かるのはルータ・ベンダーだけ。 と、ひねくれた見方をしていますが実際どうなんでしょう?

大手キャリアにCWCのような独自サービスを開発する気概が欲しいですね。
 
 
 
 

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