間違いだらけのネットワーク作り(154) 2000/11/18
「ソフトスイッチ」

12月13日(水)午後6時から情報化研究会+忘年会を赤坂NTT葵荘で開催することにしました。 本当は土曜研究会にしたかったのですが、12月の土曜日は会議室の予約が取れなかったのです。 テーマは「IP−VPNとQoS」。 キャリアはIP−VPNで優先制御などのQoS保証を計画したり一部実現していますが、それをVoIP等でどう活かせるか、効果がどの程度か、といったことをキャリアまたはユーザの講師に話していただきます。 詳しいことは会員ページ、および会員向けメールで後日連絡します。

ネットワーク掲示板、結構書き込みがありますね。 ルータの設定をどうすれば良いか、といった現場でネットワークを担当している方の身近な疑問やら問題が多いですね。 それはそれで、このページを見ている人には意外に初心者が多いんだな、とか、Ethernetのカスケード接続といった簡単そうなことでも結構奥が深いんだな、と面白く読んでいます。 

さて、1ヶ月前に掲示板に書かれた質問で、こんな質問こそ議論が盛り上がって欲しいと期待したのに「無視」されてしまった質問を、仕方がないのでここで取り上げます。 

ソフトスイッチ

質問は次のようなものでした。
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投稿者:ミスター2  00/10/17 Tue 12:15:58

      ソフトスイッチについて教えてください。

      日本テレコムとMCIワールドコムが、VoIPサービスを始めるということが発表され
      ています。
      詳細はよくわかりませんが、いずれのサービスも「ソフトスイッチ」なる技術を使
      うとアナウンスされております。
      日本テレコムはシスコ、ワールドコムはルーセントがそれぞれサプライヤになると
      のことです。

      と、いうことで「ソフトスイッチ」という奴が非常に気になっています。
      以下に私の疑問を箇条書きにしてみました。
      どなたか教えてください。
      ・どんなプラットフォームで動作しますか
      ・どんなテクノロジを使いますか
      ・何ができますか
      ・既存のVoIPゲートウェイ、VoIPルータ、VoIP-PBXと比べてどんな特徴がありますか
      ・価格は?
      ・実際のところ、ちゃんと動いてますか?実績はありますか
      ・将来的に企業内ネットワークへの展開もあると思いますか
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ソフトスイッチを教科書的に定義すると、「中継用電話交換機の機能をIP網とその上のソフトウェア処理で代替する技術」となるでしょう。 いつもどおり、私の理解は「文学的」なので技術的不正確さはご容赦。 ソフトスイッチの目的は電話機を収容するLS(LocalSwitch:市内交換機)とバックボーンを構成するTS(TallSwitch:中継交換機)からなる電話網のバックボーン部分をIP網で代替すること。 これからトラヒックの激増が予想されるIP網と電話中継網を別々に投資せず、IP網に一元化することでキャリアの投資削減を図るのがねらい。

別に難しいアイデアではなく、企業のVoIPやVoATMでも内線電話交換はIPやATMのルーティングで処理されるため、中継用電話交換機が不要になるのと同じです。 ただ、キャリアのネットワークですから規模が大きいだけ。

どんなプラットフォームで動作するか

ソフトスイッチの仕組みを簡略化して書くと下図のようになります。


SS7はこのページでも取り上げたことがありますが、LS〜TS間、TS〜TS間で電話番号などの制御情報を通話用のチャネルとは独立したデータ通信網でやり取りする方式です。 電話網ではLSはTSと接続され、SS7のラインも通話用のラインもTSにつながりますが、ソフトスイッチではSS7はCA(CallAgent)に、通話チャネルはMG(MediaGateway)に接続されます。 LSからはあたかもTSにつながっているように見えます。 左の電話機から右の電話機に電話をかけた場合の流れを見てみましょう。

@電話機からの電話番号がLSに渡される。
ALSは電話番号等の情報をSS7でCAに通知する。
BCAはMGに発信側LSの使用チャネル番号を通知。 MGはこの通話に割り当てるIPアドレスとポート番号を通知。 発信側LSとMG間が接続される。
CCAはSS7を使って着信側LSに電話番号等を通知。
DCAは着信側MGに発信側MGのIPアドレスとポート番号を通知。 着信側MGはこの通話に割り当てるIPアドレスとポート番号をCAに通知。 着信側MGと着信側LSのチャネルが接続される。
E着信側LSはベルを鳴らす。
F着信側電話機の受話器が上げられると着信側LSはSS7でCAに通知。 CAは着信側MGのIPアドレスとポート番号を発信側MGに通知、発信側と着信側のIPアドレス、ポート番号が対応付けられる。  CAはSS7を通じて発信側LSに受話器が上げられたことを通知し、通話が始まる。

いやあ、長い道のりですね。 ちなみにCAとMG間のプロトコルをMEGACO(MediaGatewayControl)と呼びます。 MEGACOはIETF標準です。

既存のVoIP−GW、IP−PBXと比較するのは用途が違うのであまり意味がありませんね。 これらがアドレスの解決とルーティングをGKとH.323で実現しているのに対し、ソフトスイッチはCAとSS7、MEGACOで実現しています。 GWの機能はVoIP−GWであれ、MGであれ同じですね。

価格は買ったことがないので分かりません。 キャリア用だから高いでしょうね。 本当にTSを使うより安くなるのかな?

実績ですか、ニュースを見る限り、北米の地域電話会社等が導入を進めているようですね。 日本テレコムは何時から始めるのでしょう? でも、上図を追っただけでも接続に時間がかかりそうですし、通話を開始してからのIP網内のQoSをどう保証するのか、難しいことが色々ありそうですね。

企業内ネットワークでの利用はないでしょう。 現在TDMを使った大規模内線網ではSS7を使っているユーザが結構います。 しかし、しょせん1企業に閉じた内線網であり、SS7やMEGACOなど使わなくてもH.323で始末がつけられます。 企業内ネットワークではSS7やTSは無用になるでしょう。 H.323ベースの「ソフトスイッチ」が出来る、ということです。

でも、世の中には目的と手段を考えないユーザが多いので、カッコいいから使ってみよう、と企業内でMEGACOを使うもの好きなユーザも出ないとは限りません。

さて、掲示板にリアクションがあるのを期待します。 久しぶりにペイントで図まで書いてしまって、勉強になりました。
 
 

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