間違いだらけのネットワーク作り(151) 2000/10/28
「IPのQoSとATMのQoS」

昨日、日本工業技術センターのセミナー「VoPとポリシー・ベース・デザイン」が行われ、講師をつとめました。 SONYやNTTの方が活発に質問してくれたおかげで、楽しく話すことが出来ました。 SONYのCLIEは売れてるけど画像が粗くてダメですね、などといつも通り余計なことも言いました。 基本的にはSONYファンで、TV、MD、ビデオカメラ、パソコンとSONYで固めているのですが、CLIEだけは秋葉原でイメージと映像を見て買う気が失せました。

情報化研究会の方も何人かおり、遠くは北海道の方が来てくれていました。 ありがたいことです。 QoSの考え方についてATMをモデルに説明しました。 ATM交換機を企業ネットワークで使うのをすすめはしないのですが、ATMのサービスクラスやQoSの考え方はIPネットワークの設計にも応用がきくからです。  セミナーではDiffServやIntServのQoSとATMのそれとの比較までは出来ませんでした。 そこで、今回はお勉強モードでIPのQoSとATMのQoSを比較したいと思います。

ところで、今週の掲示板で石川を中心に東名阪にTDMネットワークを伸ばしているユーザ企業の方が、ATMへ更改するためのアドバイスを求めています。 正直言って私は昨年からATM交換機を提案すること自体止めています。 もちろん、回線としてのATM専用線は使いますが。 いまだ、TDMをATM交換機に更改するニーズはあるんですね。 わずかな掲示板の情報、大阪等のTDMから9.6kの専用線がさらに伸びている、から想像するとレガシーが残っているんですね。 そんなのはATMなど使わす、レガシー自体を捨ててしまうか、捨てられないなら安いFRADと公衆FR網に移行するのが正解です。 新ネットワークはIPで統一、音声とデータを統合するかどうかは経済効果の有無で決める、というのがたぶん正しい基本ポリシーでしょう。 レガシーなど新ネットワークに統合する必要ありません。 やがてなくなるのですから。 掲示板では名前を明かしておられませんが、tawasiさん、現在のネットワーク構成を詳しく教えてもらえば、より適確にコメントできますよ。

前置きが長くなりました。 本題に入ります。

IPのQoSとATMのQoS

ATMの出番は減ったとは言え、QoSの考えかたを整理するのにATMのサービスカテゴリーとQoSパラメータ、トラヒック・パラメータは便利な道具です。 IPの世界でもQoSの実現方法が開発されつつありますが、例によって「文学的理解」のためにATMと対比してみましょう。 少し、強引なところがありますが。
 
 

IPのQoSとATMのQoS
IPのQoS
ATMのQoS
アプリケーション
BE(Best Effort) :QoSなし UBR(Unspecified Bit Rate):QoSなし www、メール、FTP、etc
DiffServ(Differentiated Service)
-AF(Assured Forwarding):相対QoS保証
 4種類のプライオリティ別優先制御、3種類の廃棄優先制御
該当するサービスカテゴリーなし BEよりはまし、ということでVoIP、オンライン・トランザクション処理
DiffServ
-EF(Expedited Forwarding):絶対QoS保証
 帯域保証あり、遅延保証なし
VBR(Variable Bit Rate)に近い
PCR(PeakCellRate)/SCR(Sustainable Cell Rate)
で帯域保証の指定
同上

IntServ(Integrated Service)
-CL(Controlled Load Service):絶対QoS保証
 帯域保証あり、遅延保証なし
同上 同上
IntServ
-GS(Guaranteed QoS Service):絶対QoS保証
 帯域保証あり、遅延保証あり
CBR(Constant Bit Rate)/rt-VBR(real-timeVBR)
PCR、SCRで帯域保証、CTD(CellTransferDelay)、
CDV(cell Delay Variation)で遅延およびJitterを保証
VoIP、インタラクティヴ・ビデオ、etc

サービス・クラスという観点でIPのQoSとATMのそれを対比しました。 ATMのサービスクラスは固定速度で遅延が極小のCBR、リアルタイムで可変速度のrt−VBR(帯域はSCR≒平均速度で保証)、ノンリアルタイムのnrt−VBR、ABR(AvailableBitRate:最低帯域をMCRで保証)、UBRの5種類があり、アプリケーションに応じたクラス分けがされ、その性格をよくあらわすトラヒック・パラメータ、QoSパラメータが定義されています。 IPのQoSはそれと比べれば大雑把です。 

もともとIPのいいところはシンプルで使いやすいこと。 しかし、サービスは基本的にBE。 本来BEであるIPに帯域の保証や遅延の保証を求めれば、その仕組みが複雑になるのは当然。 IPでQoSを実現するにはルータで優先制御をつかさどるPacketSchedulerの機能が重要ですが、帯域、遅延とも保証しようとすると複雑で実装が難しく、コスト高になるのがネックになっています。

結局、IPはシンプルで機器が安いから、これからはルータでインフラを作るんだ、と大見得を切って次世代ネットワークの構築が始まりましたが、ATMで出来ることと同じことを追求すればIPの世界も高価になる、ということのようです。 

IP−VPNは一部のキャリアが優先制御のサービスは始めていますが、NTTのスーパーVPNにしろ、JTのSOLTERIAにしろ、BestEffortです。 セミナーの資料など見るとVoIPも大丈夫とうたっていますが、何を根拠にしているんでしょう?  バックボーンがジャブジャブに空いているからでしょうか? バックボーンが通常時ジャブジャブでも予期しないトラヒックが発生するとふくそうすることは充分考えられますし、ユーザが増えれば増えるほどトラヒックの動きは予測が難しく、予期しないトラヒックは発生しやすくなります。 ジャブジャブだから大丈夫、なんて信用はおけません。

また、バックボーンがジャブジャブでも、ユーザの拠点とバックボーン間は常に「有限」です。 アクセスライン上のQoSが無ければVoIPなどまともに動くとは思えません。 ここ当分はIPによるデータ・音声統合網を作るにも、IP−VPNよりは専用線を使ったネットワークが現実的でしょう。 
 
 
 

ホームページへ