間違いだらけのネットワーク作り(144) 2000/09/09
記事評「VoIP検討ユーザのチェックポイント」(日経コミ9.4)

今日は久しぶりに次男と映画を見に行きました(小遣いがなくなった時だけ声がかかるのです)。 題名は「U571」。 米海軍のサブマリナーが活躍する戦争映画です。 テーマは「成し遂げる」ということでしょうか。 アメリカ映画らしい力強さがあります。 漫画の「沈黙の艦隊」より緊迫感もスピード感もありますので、見て損はありません。 ただ、軍隊礼賛映画ですから平和主義の人には勧められません。

今週、某国産メーカーからスイッチング・ルータの詳しい説明をしてもらい、ついでに色々雑談しました。 やはりやることがシッカリしていますね。 DiffserveやIntserveに既に対応し、ATM、フレームリレー等多様なWAN回線にも対応。 実用環境での実験結果も聞きました。 リモートを公衆フレームリレー、基幹をATMで構成、VoIPの往復の遅延時間(アナログ音声が送信されて、相手から帰ってくるまでの時間=耳で感じる遅延)は400ms未満とのこと。 公衆フレームリレーのアクセスは128K。 往復で400ms未満なら使い物になりますね。 スケーラビリティという意味でも使えると思いました。 GKの呼処理能力も充分。 呼接続時間も掲示板に書き込まれていたCISCOの6〜7秒より速いです。 当たり前のこととは言え、ベンダーが事前に充分テストしてからユーザに提供するというのが、いいかげんなベンダーがはびこる現在では貴重です。 

掲示板を見るとCISCOしか使ったことがない、とか、責任者がCISCOに統一したがっているとか、書いている人がいます。 たまには国産メーカーの話も聞いたらどうでしょう? 客観的に技術や製品を評価・選択できる能力をみがくことの方が、CCNAの試験勉強より価値があると思いませんか? もっとも自分はネットワークを企画するのでも、設計するのでもない、ルータをインストールするのが仕事だと思っているなら話は別です。 

記事評「VoIP検討ユーザのチェックポイント」(日経コミ9.4)

6月5日号の「VoIP導入の機は熟したか」(ホームページから記事評にリンクしています)以来、3ヶ月ぶりに日経コミュニケーションがVoIPの記事を掲載しました。 この記事の表題「VoIP検討ユーザのチェックポイント」。 日本語としておかしいと思いませんか? これではチェックの対象がユーザになります。 「A社はVoIPを検討しているが、VoIP機器を売る前に財務状況をチェックしよう」という感じ。 意図することを素直に理解して貰うにはスッキリ「VoIP導入のチェックポイント」とすべきでしょう。 ツマラナイことでしょうか? 皆さんが顧客に提出する提案書をレビューしているとしたら、提案書全体の内容が要約された表題はあだやおろそかにしないハズです。 

さて、中身です。 先ずはマクロな観点で。  6月の記事が「着実に増えるユーザー、評価は上々」、「トラブルを恐れるな解決策は確立されてきた」とあおる一方だったのに対し、この記事はVoIPを低速回線で使うとき起きる問題について触れ、日本精工のように本格導入を見送った事例も取り上げるなど、だいぶ現実的なトーンになっています。 マクロな誤謬を指摘するなら、「目的と手段を取り違えている」ということです。 それはこの記事に限ったことではなく、VoIPを導入している多くのユーザ、たとえばこの記事で紹介されているTOTOさんや横河電気さんにもおそらく当てはまることだと思います。 VoIPの目的はデータ・音声統合で経済効果を出すということ。 もっと正確には「データ・音声統合で経済効果を出すこと」が目的であり、VoIPはその一つの手段でしかありません。 ところが、どう考えても合理的とは思えないほど時間と手間とコストをかけてVoIPを導入する。 いつの間にか、VoIP自体が目的になっており、VoFRやVoATMあるいは「データ・音声統合をしない」という他の手段との経済性比較などしてないんじゃないか?

TOTOさんの事例はこの雑誌だけでなく、セミナーなどでよく眼にします。 ここしか名のとおった企業でVoIPをやっているところはないんじゃないか? と思うほどよく出ますね。 セミナーで公開されている情報によれば、98年の7月から試行を始め、99年度末で22拠点、そして今年度低速リンク拠点120カ所を接続するとのこと。 22拠点は768Kとか1.5Mで接続されており、フラグメントやヘッダ圧縮などなくても簡単に接続できるのは当然ですね。 真価が問われるのは低速リンクの120カ所を接続してどうなるか、です。 それにしても手間と時間のかけすぎだと思います。 手前味噌ですが、私はVoFRで100支店の銀行ネットワークを97年7月に完成させました。 支店のほとんどは64K回線で、電話2チャネル、TCP/IP、HDLCを統合。 銀行でお使いいただいても問題ない音質で現在も稼動しています。 設計から完成まで約8ヶ月でした。 データ・音声統合による経済化が目的であれば、オーバヘッドが大きく低速回線に不向きなVoIPなど使わなくてもVoFRで安く速くネットワークは構築できるのです。 

TOTOさんが4年近くもかけてネットワークを構築すること自体に疑問を感じます。 ただ技術的には低速リンク拠点の始末をどうつけるか、大変興味があります。 日経コミュニケーションの詳細なレポートを期待したいです。 今回の記事で疑問なのはp.96「TOTOのように、現在1.5Mビット/秒回線を使いながら、音質向上のためにフラグメンテーションを導入する企業もいる。」という記述です。 先ず、P.95の表1に「当初から品質に問題なし」とあるが「改善を要する品質」というのが真実なのか、という疑問。 もう一つは1.5MではMAX1.5KBのデータ・パケットで音声パケットが待たされても待ち時間は8ミリ秒にしかならず、フラグメントなど意味はないのに何故いまさらフラグメントを使うのか?という疑問です。

もっとClearな記事を書いて欲しいですね。 TOTOさんがもし、この記事を読まれたら本当の理由を教えていただきたいものです。

横河電気さんのネットワーク構成の疑問はデータ用のアクセス回線/PVCとVoIP用のアクセス回線/PVCを別々にして本当に経済効果が出るのか? ルータにはアクセス回線を統合して優先制御する機能すらないのか? という疑問です。 同様の疑問をY子さんが入会申し込みのメールに書いてきました。
以下、引用。
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日経NETWORKの広告記事で、UCさんのVoIPがのっていました。 うまくいっていると書いてあったので良く読んでみると、「一般回線とほとんど変わらない高品質な音声による通話は保てないため云々」と書いてありました。  それでデータ系とは別のネットワークを張り直し(!?)、懸念を解消とのこと。 これって、有線(PBX)の方がいいのでは? これで「回線コストを半分以下に押さえることに成功している」って、回線コストは押さえられたけれど、バカ高いルータなどの機器、工事費用、人件費は一体全体どう考えているのだろう???と「めちゃくちゃ」「甚だしく」疑問に思ったのですが、私、間違っていますでしょうか?
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疑問を持って当たり前です。 回線コストが半分以下というのもデータ系と音声系を別にしていて? と不思議ですね。
いっそデータ・音声統合などしない方がルータも極々安いものですませられ、保守費用を含むランニング・コストも安価になるのではないでしょうか? もちろん音質は公衆なので最高になりますし。

p.93のVoIP化の判断基準のフローチャート。 考え方は単純だけどゴチャゴチャしていて分かり難い。 コメントしだすと切りがありませんが、ネットワークの規模=拠点数を2拠点か、3拠点以上かで区分する、というのが単純すぎますね。 20拠点だろうが、100拠点だろうが同じということはありません。 

いやあ、自分で書いていてもツマランなあ、といやになりました。 読む人はもっとツマラナイでしょう。 くどいですが、「目的と手段の取り違え」というのはネットワークに限らず、ITではよく犯す間違いです。 時々、「もともと目的は何だったんだっけ」と振り返ることが大事です。 技術の好きな人ほど陥りやすいので気をつけてください。

p.s.この夏の痛快事の一つは7月末に数10億円規模のネットワークが完成したこと。 ちなみにデータ・音声統合はしていません。 某ルータ屋さんの製品も一切使っていません。
 
 
 

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