間違いだらけのネットワーク作り(138) 2000/07/29
「QoS制御は専用装置orルータ?」

先週の土曜日は家族で西海岸に行っており、この記事は休載しました。 7月15、16日は研究会のコアメンバーで松山へ行き、そして家族旅行、と完全に夏休みモードになっています。 西海岸では久しぶりで訪れたグランドキャニオンとラスベガスが印象に残りました。 前回のグランドキャニオンは春だったのですが、まだ寒さが残り、曇りがちの天気でした。 夏のグランドキャニオンは深い青の空に綿のような雲が浮き、その下に雄大な渓谷が広がる、春とは全く印象の違うパノラマでした。

ラスベガスはテーマホテルが立ち並び、ダウンタウンも再開発されてきれいになっていました。 泊まったのはBELLAGIO。 イタリアのリゾートをテーマにしたホテルで98年、18億ドルをかけてつくられたホテルです。 ホテルの前に広大な人口湖が作られ、その湖上での噴水ショーを売り物にしています。 歩くと1周30分はかかる湖の周りに大音量のスピーカーがしかけられ、カンツォーネの楽曲に合わせてコンピュータ制御された噴水が「舞い」ます。 ノズルの方向と水圧が自在に変化し、水の軌跡が垂直になったり、人が体をくねらすように回ったり、静寂な湖面から爆発音のような音とともに75メートルの高さに円形、あるいは直線に噴出したり、と華麗さと迫力をかねそなえたショーです。

写真は部屋から見た噴水ショーです。 部屋からビールを飲みながら見るのもいいのですが、やはり湖畔で見るほうが音も水の迫力もあって飽きません。 夜6時から12時までは15分おきにショーがあるのですが、家族5人、4回続けて1時間、堪能しました。

さあ、夏の旅行記のようになっていますが、帰ってくると日経BP社からうれしいメールが来ていました。 1月に出版した「企業内データ・音声統合網の構築技法」が完売まじかのため、増刷が決まったとのこと。 半年で売れるとは予想していませんでした。 おそらくこのページを読んでくださっている方の多くが購入してくれたおかげだと思います。 あらためて御礼申し上げます。 これからも一人でも多くの方に役立てていただければと思います。

やっと本題です。 研究会に入会を申し込んでこられたパケッティア社の原田さんに、米国でVoIPの状況はどうか、QoS制御はパケットシェーパ−のような装置ですべきか、ルータですべきか、という質問をしたところ懇切に答えて頂きました。 ご本人の了解が得られたので名前も社名もオープンで引用します。

QoS制御は専用装置orルータ?

以下、引用。 例によって*に続くのは松田のコメント。
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松田さま

原田@パケッティアです。入会のご承認の件、ありがとうございます。

米国では、ビデオカンファレンスシステムのようなものは盛んです。 これらのシステムはVoIPのテクノロジを使用しますが、音声「だけ」を対象としたVoIP自体は、あまり一般的では無いようです。 というのも、アメリカでは市内通話は基本料金に含まれていたり、長距離電話料金も競争が激しく安価なので、VoIPを用いたソリューションはあまり大きなコスト削減に繋がらないからです。 VoIPを使わずとも電話代自体が日本などに比べて安価だからです。 従って、米国ではVoIPに関して、日本ほどの盛り上がりを見せていないのが現実です。

*これは従前からこのページで言ってきたことと同じですね。 日本も電話料金はどんどん安価になっているので同様の状況になりつつあるのではないでしょうか? 単純な電話でなくブロードバンドを利したビデオコンファレンスに比重が移っていくのではないでしょうか。 IMT2000がインパクトになると思います。

また、データ系と音声系の責任部署が異なる為、社内の政治によってデータ系と音声系統合の障壁になっていましまっていたようです。 (これに関しては両部門に関しての責任者となる、CIOのプレゼンスが高くなりデータ系と音声系統合の意思決定の推進方向に移行しやすくなってきているようでが。)

次に、帯域制御を行う仕組みは、ご指摘のようにルータが行うものと、弊社のPacketShaperのように専用機器を用いるものがあり、それぞれに一長一短があります。

ルータベンダは、QoS管理をルータで一元化した方が管理が楽、と説明しますが、実際にはQoSをルータ上で実現するにはCPUの負荷が大きく、例えばCisco社の製品であれば、7500クラスの高性能ルータでないと、パフォーマンスに影響が出ます。 また、RSVPはネットワーク上の、全ての機器がRSVP対応していなければならず、旧来の機器を使用できないので既存の設備投資が回収できなかったりすることも多く、RSVPを用いた事例というのは、米国においても(私の知る限り)ほとんどありません

*ルータでのQoSというとRSVPがその決めてのように書かれていますが、使われていないのですね。

弊社のようなソリューションは、ルータ存在が前提であくまでルータの機能を補完するもので、ルータの機種やネットワーク構成に依存する部分が少なく、既存のネットワークにシームレスに導入できます。 弊社としては、このような専用機器によるソリューションの方が、応用が効き、柔軟に対応ができる分、ルータによるソリューションに比べて、メリットが大きいと考えております。 恐らく、ワールドワイドで今年パッケティアの最大のユーザとなる企業は、シスコ製品を世界中で販売している、シスコのパートナー企業でしょう。

尚、WFCBQ(WFQやCBQも含む)のような仕組みは、管理対象パケット毎に待ち行列を作り、ある程度パケットを間引くことで、帯域管理を実現しようとするシステムです。 例えばHTTP(WEB)を抑制するような制御にはこのような仕組みでも問題なく動作しますが、セッション毎の管理ができないため、VoIPのような呼毎のセッションを管理するには不向きです。 PacketShaperのレイテンシコントロール技術は、例えば、VoIPであれば1通話毎の帯域幅を明示的に指定でき、他のトラフィックから守ることが可能です。
 

また、QoSを考える時、重要なのは制御技術だけではなく、トラフィック分類機能も大切です。 つまり、どのようなトラフィックが流れているかを分析し、重要なトラフィック・遅延に対してセンシティブなトラフィックをあまり重要でないものから区別する能力です。 PacketShaperは、200種類以上のトラフィックを自動分類することができます。 特にOSIの階層構造の第7層まで見ますので、例えばOracleであれば特定のDBにアクセスするトラフィックのみを優先(あるいは抑制)することができます。 他にも、NetMeetingを他のH323上の他のアプリケーションと区別し抑制したり、HTTPをURL毎で管理したり、Citrixを公開アプリケーション毎に管理するなど、VoIP以外にも様々なトラフィックを識別できます。VoIPだけでなく、様々なアプリケーションを統合したネットワークを考える時、弊社のソリューションは非常に応用範囲の広いものである、と考えております。

VoIPに関しては、日本の方がよりノウハウを蓄積しているところも多いと考えています。 松田さま、VoIPのマーケットを日本主導で立ち上げましょう!!
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*「日本主導」はいいのですが、特定ベンダーのために「日本主導でVoIPのデバグをしている」状況では情けないですね。 また、国産VoIP製品がより広く海外に浸透して初めて「日本主導」といえるのであって、海外製品を広めるために努力したいとは思いません。

*私の実際の仕事ではデータ・音声統合の比重は下がっています。  実はここ数ヶ月、私がもっともエネルギーをそそいでいるのは衛星ネットワークです。 電話とは全く異次元の世界です。

*また、現在コンサルティングをさせて頂いている企業ではVoIPのためのQoS制御といううよりも、IP上のアプリケーション間でQoS制御をどうするかの方が重要だと思っています。 たぶん大規模で先進的なネットワークを持つ企業ではどこでもそうではないでしょうか? トラヒックに占める割合が20%を下回る電話をどうするかよりも、80%超え、さらに急速に増えているIPトラヒックをどうハンドリングするかが重要です。

*IPトラヒックの中にはWeb、メール、基幹業務、FTPなどがありますが、感覚的に4〜5種類くらいに分類したQoS制御が適切ではないかと思っています。 トラヒックを細かく分類するのは管理も大変ですし、制御装置の負荷も大きくなります。 そんなに細かな制御ができるかどうかも疑問ですし。

*原田さんが言うように、ネットワーク層より上位レベルでのトラヒック識別は必要ですね。 基幹業務をWEBに対して優先しようとしても、ERPアプリケーションがブラウザ・インタフェースで使われるようになっているため、TCPポート番号などでは区別できなくなっています。 

*実はコンサルティングさせていただいている企業でも既にパケットシェーパ−を多数使っています。 ここで問題になっているのは数10メガという高速回線が当たり前になる次期ネットワークではパケットシェーパ−のWindow制御方式の帯域制御では無理ではないか、ということです。

*原田さんや、ルータ・ベンダーの方からさらなる情報を期待します。

***情報化研究会の方へ  7月15、16日の松山研究会で参加者が作った俳句と写真を会員ページに掲載しています。 ご覧ください。
 

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