間違いだらけのネットワーク作り(137) 2000/07/15
「VoIP論議へのコメント」

明日、あさっては松山で道後温泉と俳句を研究会のメンバーと楽しむため、1日はやく記事を書いています。  少し安直ですが、研究会のYさんが前回の記事に対して詳細なコメントをくれたので、それを紹介したいと思います。 私の元の記事より情報量が多くて参考になると思います。

Yさんよりのメール

松田様
 

 Yです。
 

| 間違いだらけのネットワーク作り(136)2000/07/08
| 「VoIP論議 in 幕張」
 

| 5月にあった次男のピアノ・コンサートの曲がCDになってきました。デジタ
| ル録音やCD焼付けの機材が手ごろな価格になったので、趣味の楽曲をCDに
| するのも簡単になったのですね。次男の曲は「渚のアデリーヌ」という癒し
| 系 の曲だったのでさっそく私のMDにもダビングしました。我が子の曲、と
| 思え ば鑑賞にたえられるレベルです。
 

  リチャード・クレーダーマンの「渚のアデリーヌ」ですか。懐かしい曲です。  確か、20年ほど前に、ポール・モーリアとか、レイモン・ルフェーブルなどの老舗?を相手にイージーリスニングの世界で大ヒットしたのを覚えています。

  ピアノは弾き方で、微妙な音の強弱と音の重ね方を帰ることは出来て、 「渚のアデリーヌ」は音と音の間隔や、音の強さで非常に情緒的な曲になるので好きな曲でした。

  そういえば、私も15歳くらいまであまり上手ではなかったのですが、ピアノやエレクトーンを弾いていました。けれど、今はもう全く駄目です。 何とか、携帯電話用の着メロ(他の人が殆ど使っていない曲にしたいので)を作るのに、ポロポロとやるくらいです。

  今思えば、ピアノを弾くのをやめなければ良かったと思っています。 長く続く趣味として続けていくと、きっといいことがあると思います。
 
 

| VoIP論議 in 幕張
|
| 7月7日(金)は幕張にある雇用・能力開発機構高度ポリテクセンターで「デ
| ータ・音声統合網の設計技法」というレクチャーをしました。雇用・能力開
| 発機構は労働省の外郭団体です。ネットワークをはじめ、メカトロニクス、電
| 気・電子などなど企業の第一線で仕事をしている方を対象とした技術研修がお
| こなわれています。私の講義は今年で3年目になりますが、今回が私にとって
| は一番勉強になりました。講師が勉強になった、とはおかしいと思うかもしれ
| ませんが、受講者が私の経験していないことをしていれば、私にとっては先生、
| ということになります。
 

  そうですね。他の分野のプロの方って、私が思いもつかない方法で問題点を解決してくれますし、疑問というか混沌とした内容の整理の仕方にも特徴があって、新発見が沢山あります。 また、コストと品質と利便性の選択基準も独特な考え方なんかがあって非常に参考になることが多いですね。
 

| 先生になっていただいたお一人は情報化研究会の方。ルータを使ったVoIP
| で相当な経験を積んでいます。あと二人の先生は電話のプロです。NTTのD
| 70デジタル交換機の開発やSS7の開発にたずさわった方と現場で電話局用
| 交換機の工事にながく取り組んでいる方です。VoPではIPとかFRの技術な
| んて誰でもすぐマスターできるのですが、電話を勉強するのは大変です。お二
| 人はVoPは難しいんじゃないか?と心配されていましたが、電話のプロにと
| ってVoPなんてしごく簡単です、ODTもSS7も知らずにVoIPのイン
| ストールをしている連中を追い越すのは簡単ですよ、と激励しました。以下、
| 私が皆さんに話したこと、私が教えて貰ったことを羅列しましょう。
 

  D70のプロの方ですか。私も15年前は、NTT仕様の交換機(A形、C400、D10、D70)しか知らない時代がありました。この場合、電話のつながる仕組みは共通ですが、NTTの独自仕様によっていますので、 交換機間のインターフェース条件や、各種の基準、試験方法は根本的に別世界のものと考えなければならない実情があります。

  交換機と伝送装置の接続や試験などは、仕様にあわせた専用の試験器があるため、原理などを知らなくても全く支障がない様に出来ています。

  したがって、NTT仕様といわゆるPNWで使う仕様は全く異なり、私も当初はD70とPBX、M20やPCMMUXとTDMの仕様やインターフェースの違いに慣れるのが大変でした。 とくに、NTTの交換機を専門としている方は、端末機器や伝送機器に対する理解があまりない場合が多く、例えば、D70に接続されるアナログ電 話のロス(PAD)はどこでどの程度入るか?を聞くと、技術基準でこのよ うに設計されているとは説明してくれますが、具体的にどこで、どの接続時に、どれだけのPADが入るかはを知っている人は1%以下になります。

  私も7年ほど前にD70のPKG回路図を調べてPADの位置と設定値を調べたことがありますが、PADは4dBと8dBを設定可能なのですが、その制御はソフト制御でしたので、その部分の交換処理ソフトウェアのドキュメントを見ることが出来なかったため、交換設計部門へ聞いたことがありますが、約1週間あまり、随分色々なところへ電話をしまくったことがあり、中には、そんなこと(PAD挿入)は出来ないと言われたこともありました。
 

  したがって、D70を専門にやっている方から見ると、NTT仕様と異なる一般的な仕様の壁と伝送の壁があるので、VoPは難しいとなると思います。 これは、日本国内onlyでPNWの世界を理解している方が、グローバルでのPNW構築が難しい(日本の仕様やインターフェースの常識が使えない世界が出てくる)と言うのと同じ感じかもしれません。

  最近、PBXとVoP−GWの接続で共通線を使えるかどうかが話題になりますが、ISDNユーザ・網インターフェース、ISDN共通線、SS7共通線、Dch共通線(Dp共通線)の区別がつかない方ばかりで情報が混乱している情況なのです(ああ恥ずかしい)。
 

| 私の主張したネットワーク屋としてのポリシー
|
| テキストは私の著書「企業内データ・音声統合網の構築技法」です。最初に申
| し上げたのは特定のベンダーやキャリアの奴隷にだけはならないように、とい
| うことです。本の「はじめに」に次のように書いてあります。
|
| ”本書ではATM、フレームリレー、IPという3つのパケット技術を扱って
| いる。これらは排他的な関係にはない。ユーザニーズによって適合する技術は
| 変わるし、複数の技術を組み合わせることが最適な解であることも多い。要件
| を分析し適切な技術や製品を選択して設計する。この「選択」というプロセス
| がないのは何処かに「無理」や「無駄」を含んでいると私は思う。
 

  おっしゃる通りです。但し、音声は圧縮する場合、CODEC1リンクやセル1リンクが必須かどうかなどを考慮しないといけない点が厄介ですね。
 

|  「選択」できるということは「自由」である、ということである。かつてメ
| インフレーマー(大型汎用コンピュータのメーカー)全盛時代にはメーカーが
| サポートを打ち切ると言えば、したくもないOSのバージョンアップをし、高
| 価なハードウェアを買わざるを得ず、独自プロトコルの世界に封じ込められて
| 自由な機器選択もままならなかった。選択の自由が無かったのである。現在の
| ネットワークの世界も同じ状況に陥りつつあるのではないだろうか?特定技術
| や製品への画一化は知らないうちにその信者を「選択する能力を持たない」奴
| 隷にしてしまう。”
 

  しかし、これは積極的に冒険をしろと言った意味に理解してしまう方が多いのも事実だと思いませんか?
 

| という、私のOpinionです。自由で客観的な技術・製品の選択、設計と
| いうことをしなかったら、ネットワーク技術者は特定のベンダーやキャリアの
| 奴隷になってしまいます。ところがVoIPの先生になっていただいた方の話
| を聞いていると、相当ベンダーからの締め付けがあるようですね。
 

  あの会社ってそんなに締め付けをするんですか?
 

| 公正取引委員会に聞こえたら即問題になりそうなくらい。イメージとブランド
| に弱いユーザにも問題があるかも知れません。私は国産のATM交換機やハイ
| エンド・ルータを使った大規模ネットワークの事例を紹介し、企業ユーザも客
| 観的な事実にもとづいて説明すれば、我々ネットワーク屋の主張を理解してく
| れるものだ、ということを示しました。
 

  しかし、ATM機器はともかくとして、国産のハイエンドルーターはあまり選択肢が無かったのも事実ですし、国産機器の最も悪い点は、機能面でのドキュメントがなかなか公開されないのが欠点です。 いちいち、知りたいことが判る技術者をアサインして、ドキュメントの内容について説明を受けないといけないのです。
 

| VoIPの先生も新しい製品を使ったネットワークにも取り組み、新境地を開
| こうとしているとのこと。頑張って欲しいものです。
 

  最近、ATMや話題のIP−VPNが1M超の回線として魅力的です。 某社のむちゃくちゃ高くて大したことが出来ないいATMインターフェースを除くと結構色々な製品がありますが、多数のトラヒックが集中する拠点はやはり選択に悩みます。

  音声も最近、ATMポート、FEthポート、CESポートを持つ低価格ルーターやSWが出てきたこともあり、VoPかCES(TDM)か難しい選択を迫られます。
 

|
| VoIPの先生に教えてもらったこと(Qは私、Aは先生)
|
| Q.米国ではVoIPは盛り上がってないと認識しているがどうか?
| A.盛り上がっていない。しかし、ケーブルテレビでは関心が高いようだ。た
| だ、2000ユーザ、3000ユーザも収容できる製品がない。
 

    探せばあるのですが、かなりの設備となってしまうこともありますし、そこまでコストをかけても大して効果はないという判断では? もともと、米国では音声圧縮自体を使わない(あるいはコストメリットがない)ことが多いのも影響しているのではないでしょうか?
 

| Q.日本テレコムのSOLTERIAでは何故、ML−PPPをサポートしな
| いと思うか?
| A.やはりSOLTERIA側のルータの負荷が高くなるからではないか。
 

    ここで言うML−PPPは一般的なML−PPPではなく、L2でフラグメントを行なう目的をもったX社のML−PPPのことを指すのでしたら、一般性が極めて薄いので、どうやって普及させるかも課題となります。

    L2でのフラグメントはFRF.12は広く使われますが、ML−PPPでのフラグメントはC社以外では使われず、Bchを束ねてバルクするため(Bchの数でパケットを分割して伝送・再組み立てを行なう)に使われます。

    ルーター負荷が高くなるのも事実ですが、ML−PPPはリンク単位ですので、SOLTERIA側のエッジルータだけの対応で良いので、そんなに負担になるのでしょうか?それよりも、ML−PPPを採用して、ユーザーに特定のルータを使えと強要することにわだかまりがあるのでは?と思います。
 

| Q.いろんな優先制御機能(Queuing手法)を使う上で留意点は何か?
| A.ソフトバージョンによって他の機能との組み合わせの可否が変わる。12
| 8K以下の回線で使うとトギレが出ることがある。
 

    利用する回線にもよりますが、音声パケットサイズとフラグメントサイズをベンダーの推奨に紛らわされずに行なうと、手堅いバージョンでは、接続シーケンス上で時間がかかることはありますが、単一周波数を流す場合など特殊な場合以外、途切れが判ることは殆どないはずですが・・・。

    ただし、音声ch分の帯域を優先制御で確保できない(些細な設定誤りやバグ対策設定の漏れ)場合は、エコーキャンセラーが悪さをして、途切れが発生します。
 

|
| Q.音声のパケット化は何ミリ秒分で使っているか?
| A.20ミリ秒。
 

    私は、聴感上、余程遅延が気になる場合(殆どない)以外、この設定を使ったことはありません。
 

| Q.無音圧縮は使っているか?
| A.使っていない。しかし、デフォルトが無音圧縮ありのため、勝手にデフォ
| ルトに戻らないようにする設定がきわめてわずらわしい。
 

    X社の無音圧縮は会話中に気になって殆ど使えないと思います。 Y社の場合は、私は気になるのですが、お客様は気にならないと言うことがよくあります。 Z社はまだあまり試していないのでこれからです。

    しかし、X社の勝手にデフォルトに戻る悪いバグ(これで、無音圧縮は有効になりG3FAXがmax7.2kになってしまいます)は設定である程度カバーできるとはいえ、結構面倒で、全部対策が出来ているかを確認するとなると、気が遠くなる場合がありますね。
 

| Q.起こりやすい問題は何か?
| A.エコーと無音圧縮だ。
 

    エコーは確かに。極端な話、VoP−GWはそのままで、PBXを更改されちゃったりするとエコーが出ます。 私の場合、PBXごと、設定可能であれば、エコーキャンセラのパラメータやレベルダイヤ上のレベル配分を、エコー上最適と思われるように設定してあるので、たまに出ます。 このときは対応方法は判っていますが、お客様と営業担当の方針により、すぐ最適値近くにセッティングし直すかレベル配分変更をする場合と、あくまでPBXで対応するよう求めるケースがありますが、技術サポートの立場としては、後者は少し酷(いじめに近い)かなと思います。
 

| その他、いろいろINPUTしてもらいましたが、このくらいにしておきます。
|
| 電話の先生に教えてもらったこと
 

    この中で注意していただきたいのは、恐らくディジタル電話はISDNを指すということです。 PBXのディジタル多機能電話機とISDNのディジタル電話機では伝送方式は全く違いますので注意が必要です。
 

| Q.デジタルPBX+デジタル電話でエンド〜エンドがフル・デジタルの場合
| でも、電話機の回路でエコーは発生すると聞いているが本当か?
| A.PBXで発生することはないと思う。電話機については分からない。
 

    これは電話機側で発生原因となる個所は、側音を作る回路が最も発生原因なりやすいでしょう。 次に、多機能電話機は感度がよいものが多く、送話口から受話口への
   回り込みも若干あります。

    また、マイクとスピーカーでハンズフリー通話が可能なものは、エコーキャンセラーを搭載しています。
 

| Q.同一のPBX配下で2Wインタフェースの電話機ではVoPの音質が良く、
| デジタル電話ではNGというケースがあった。どんな原因が想定されるか?
|
| A.PBXのボードの特性だと思う。
 

    これは、2W(アナログ)インターフェースの場合、PBXの内線PKGでエコーキャンセラーを持っています。 ディジタル多機能電話機では電話機内にCODECや側音回路、場合によってはエコーキャンセラーを持っています。

    したがって、エコーキャンセラーの実装位置が違いますから、エコー消去タイミング(本来の信号が通過してからエコー消去点までエコーが戻ってくるまでの時間)が変わります。 また、エコーキャンセラーの動作想定時間も2W(アナログ)とディジタル多機能電話機では異なります。
 

|
| Q.デジタル電話でレベル測定をする手段はあるか?
| A.アナライザーがある。
 

    ISDN端末でしたら、確かにISDN用(BRIインターフェースを持った)一般的なアナライザ(インターネットアドバイザなど)でレベル測定ができます(T1なんかでも可能です)。  しかし、PBXのディジタル多機能電話機は独自インターフェース(レイヤ1から独自)ですので、メーカーで持っている試験器以外での測定は出来ないでしょう。
 

*皆さんお気づきのように、このYさんはNTTの社員です。 やはりNTTにはいるんですね、こういうsuperな人が。 私は困った問題があると質問メールをYさんに送ることがあります。 

*私のように「文学的」に技術を理解して、技術よりも話術で勝負している人間はいつもYさんのような人の世話にならざるを得ません。

*これからも時々、私がYさんとやりとりするメールで参考になるものがあればご紹介したいと思います。

*Yさんのメールのおかげでスバヤク記事が出来ました。 あした5時起きで羽田に行く私としては大助かりです。

*7月22日は旅行で海外にいますので、この記事は休みます。  夏休みと正月と年2回の休刊日です。

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