間違いだらけのネットワーク作り(136) 2000/07/08
「VoIP論議 in 幕張」

5月にあった次男のピアノ・コンサートの曲がCDになってきました。 デジタル録音やCD焼付けの機材が手ごろな価格になったので、趣味の楽曲をCDにするのも簡単になったのですね。 次男の曲は「渚のアデリーヌ」という癒し系の曲だったのでさっそく私のMDにもダビングしました。 我が子の曲、と思えば鑑賞にたえられるレベルです。

VoIP論議 in 幕張

7月7日(金)は幕張にある雇用・能力開発機構高度ポリテクセンターで「データ・音声統合網の設計技法」というレクチャーをしました。 雇用・能力開発機構は労働省の外郭団体です。 ネットワークをはじめ、メカトロニクス、電気・電子などなど企業の第一線で仕事をしている方を対象とした技術研修がおこなわれています。 私の講義は今年で3年目になりますが、今回が私にとっては一番勉強になりました。 講師が勉強になった、とはおかしいと思うかもしれませんが、受講者が私の経験していないことをしていれば、私にとっては先生、ということになります。 

先生になっていただいたお一人は情報化研究会の方。 ルータを使ったVoIPで相当な経験を積んでいます。 あと二人の先生は電話のプロです。 NTTのD70デジタル交換機の開発やSS7の開発にたずさわった方と現場で電話局用交換機の工事にながく取り組んでいる方です。 VoPではIPとかFRの技術なんて誰でもすぐマスターできるのですが、電話を勉強するのは大変です。 お二人はVoPは難しいんじゃないか?と心配されていましたが、 電話のプロにとってVoPなんてしごく簡単です、ODTもSS7も知らずにVoIPのインストールをしている連中を追い越すのは簡単ですよ、と激励しました。 以下、私が皆さんに話したこと、私が教えて貰ったことを羅列しましょう。

私の主張したネットワーク屋としてのポリシー

テキストは私の著書「企業内データ・音声統合網の構築技法」です。 最初に申し上げたのは特定のベンダーやキャリアの奴隷にだけはならないように、ということです。 本の「はじめに」に次のように書いてあります。

”本書ではATM、フレームリレー、IPという3つのパケット技術を扱っている。 これらは排他的な関係にはない。ユーザニーズによって適合する技術は変わるし、複数の技術を組み合わせることが最適な解であることも多い。 要件を分析し適切な技術や製品を選択して設計する。 この「選択」というプロセスがないのは何処かに「無理」や「無駄」を含んでいると私は思う。

 「選択」できるということは「自由」である、ということである。 かつてメインフレーマー(大型汎用コンピュータのメーカー)全盛時代にはメーカーがサポートを打ち切ると言えば、したくもないOSのバージョンアップをし、高価なハードウェアを買わざるを得ず、独自プロトコルの世界に封じ込められて自由な機器選択もままならなかった。 選択の自由が無かったのである。  現在のネットワークの世界も同じ状況に陥りつつあるのではないだろうか? 特定技術や製品への画一化は知らないうちにその信者を「選択する能力を持たない」奴隷にしてしまう。”

という、私のOpinionです。 自由で客観的な技術・製品の選択、設計ということをしなかったら、ネットワーク技術者は特定のベンダーやキャリアの奴隷になってしまいます。 ところがVoIPの先生になっていただいた方の話を聞いていると、相当ベンダーからの締め付けがあるようですね。 公正取引委員会に聞こえたら即問題になりそうなくらい。 イメージとブランドに弱いユーザにも問題があるかも知れません。 私は国産のATM交換機やハイエンド・ルータを使った大規模ネットワークの事例を紹介し、企業ユーザも客観的な事実にもとづいて説明すれば、我々ネットワーク屋の主張を理解してくれるものだ、ということを示しました。

VoIPの先生も新しい製品を使ったネットワークにも取り組み、新境地を開こうとしているとのこと。 頑張って欲しいものです。

VoIPの先生に教えてもらったこと(Qは私、Aは先生)

Q.米国ではVoIPは盛り上がってないと認識しているがどうか?
A.盛り上がっていない。 しかし、ケーブルテレビでは関心が高いようだ。 ただ、2000ユーザ、3000ユーザも収容できる製品がない。

Q.日本テレコムのSOLTERIAでは何故、ML−PPPをサポートしないと思うか?
A.やはりSOLTERIA側のルータの負荷が高くなるからではないか。 

Q.いろんな優先制御機能(Queuing手法)を使う上で留意点は何か?
A.ソフトバージョンによって他の機能との組み合わせの可否が変わる。  128K以下の回線で使うとトギレが出ることがある。

Q.音声のパケット化は何ミリ秒分で使っているか?
A.20ミリ秒。

Q.無音圧縮は使っているか?
A.使っていない。 しかし、デフォルトが無音圧縮ありのため、勝手にデフォルトに戻らないようにする設定がきわめてわずらわしい。

Q.起こりやすい問題は何か?
A.エコーと無音圧縮だ。

その他、いろいろINPUTしてもらいましたが、このくらいにしておきます。

電話の先生に教えてもらったこと

Q.デジタルPBX+デジタル電話でエンド〜エンドがフル・デジタルの場合でも、電話機の回路でエコーは発生すると聞いているが本当か?
A.PBXで発生することはないと思う。 電話機については分からない。

Q.同一のPBX配下で2Wインタフェースの電話機ではVoPの音質が良く、デジタル電話ではNGというケースがあった。 どんな原因が想定されるか?
A.PBXのボードの特性だと思う。

Q.デジタル電話でレベル測定をする手段はあるか?
A.アナライザーがある。

最後に私が聞かれたこと

Q.これからのキャリアサービス、企業の利用はどうなると思うか?
A.先のことは分からないが、主体性のないキャリアがベンダーの戦略を鵜呑みにしてIP−VPNでユーザを奴隷化しようとしているように見える。 つまり、ユーザが回線サービスや機器を選択できない状況だ。 リストラ中の企業が手を出すのは分かるが、立派なネットワーク技術者がたくさんいる企業の情報部門がIP−VPNに関心を示すのは何故だろうと不思議でしょうがない。 IT部門というのは自社にとって有用な技術、製品、サービスを主体的に検討し選択することが存在価値だと思っていたが、女子高生が厚底サンダルが流行りだとなれば、一斉に厚底サンダルをはくように、情報システム部門の部長もIP−VPNが雑誌に出ているとIP−VPNがいいと思うらしい。

身も心もキャリアにささげて自社の情報部門はつぶすつもりなのだろう。 ネットワークも渡し、サーバやアプリケーションはデータセンターに渡し、キャリアの寡占状態が完成。 その状況で安価で高品質なサービスが本当に得られるのだろうか?

皆さんがネットワークの仕事をどんなポリシーでしようが個人の自由だが、知らないうちに自分の存在価値がなくなっている、といったことのないようにしてください。 
 

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