間違いだらけのネットワーク作り(132) 2000/06/10
「VoIP導入の機は熟したか〜現場からの声」

今日は次男・三男の中学の運動会。 短距離走、綱引き、棒倒し等々定番の競技が多い中、「3年生有志による集団行動」という演技がありました。  なんのことはない、60人ほどの生徒が先生の号令、「その場足ふみ」、「前進」、「先頭回れ右」、「気をつけ」、・・・にしたがって動くだけ。 でも、これが大ウケ。 昔、私が中学生だったころは全員がこれを当たり前のようにやっていたのですが、考えてみれば今の運動会では「気をつけ」なんて使いませんね。 見ている生徒たちは自分達がやったことのないことがもの珍しく、まるでロボットのような動きが面白かったのでしょう、「気をつけ」でピシッとなるだけでドット歓声がわいていました。 父兄は「俺達が中学のころはこうだった、なつかしいなあ、こいつらがやるのを見るとカワイイなあ」とでも思うのでしょうか、最後はマーチの変わりに手拍子を打っていました。 

日本人はやはり画一的集団行動が好きなのでしょうか?  「回れー、右、電話はVoIP!」で、VoIPを導入しようとしていませんか? VoIPはトレンドではあるでしょうが、適用するネットワークの規模、求められる品質、そして何より「今」の製品でいいのかどうか、主体性を持って考えたいものです。

VoIP導入の機は熟したか〜現場からの声

先週の日経コミュニケーションの記事評は結構関心をもたれたようで、普段の週よりアクセス数も多く、メールによるコメントも頂きました。 その中から現場でVoIPに取り組んでいる方の生の声をよく代表していると思われる情報化研究会のYさんと、Sさんのメールを引用させていただきます。 

例によって*に続くのは松田のコメントです。

Yさんからのメール
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日経コミュニケーションの6月5日号はかなりVoIPに好意的な書き方をしていると思いませんか?

この例にあがっている数件については、たまたま、別件のシステム構築で打合せをした際に、ベンダーの技術者や営業の方から「かなり大変な思いをしている情況」を聞かせてもらったり、自社製品を売りたいが現時点ではVoIP導入はすすめたくないといった本音を聞いたり、相談を受けたりしていました。  この記事を読んで「あの情況が日経コミュニケーションにはこう書かれるのか」といった実態がよくわかりました。

しかし、VoIP導入後の評価が高い点について、記事にも書かれていましたが、正直ベースで「VoIPの通話品質が悪くなるほどにはデータ・トラヒックを流していない」のが実態だと思います。 あるいは某社のようにWAN側に十分な帯域を確保しているケースです。

あとは、通話品質をあまり気にしない方が多いといった点でしょうか。 または、通話品質は使う方が個々に判断して、気に入らない人は外線で通話をするなどの方法が残されているから大きな問題にはならないという見方も出来ます。  これは、当初の予想トラヒックと現在ではどう違うのかを検証しないと全くわからないので、導入した窓口の方の語り口と実態は謎なのです。

おそらく、プライベートネットワーク上で音声通信を行なっておらず、VoIPで初めて音声まで含めてNW化する場合、一律に、この規模の拠点は何chなどと音声ch数を決めて、全てが本社集中と仮定して・・・といったストーリーだとすれば、きわめて本社に相当するロケーションで音声ch数が多くなっているのも合点が行きます。 この場合も、予想以上に音声通信が使われていない可能性ありといえないでしょうか(これは推測ですが)。

(中略)

少なくとも音楽を聞くときにCDでもCDからディジタルコピーしたMDでも、どっちでもかまわない人(気にならない人)は、音質面での問題は全くなしと見ていいでしょう。 ただし、一般の公衆網利用の場合、ちゃんとした環境で通話していれば、CDとMDの差よりも10〜100倍程の違いはあるので、判らないことのほうが嘘っぽいと思いますが・・・。

VoIP化した際の接続時間はあまり大きくな問題として取り上げられていないのですが、これは音声通信を主目的としてTDMでPNWを構築していたユーザーが本格的にVoIPに移行していないことの表れではないでしょうか。*TDMネットワークでは接続時間は5〜6秒

繋がるのに10秒くらいかかるとか、着信したと思ったら無音など言うことでOKを出すユーザでしたら、「VoIPの音声通信は別に無くても業務に支障はきたさない程度のおまけ」といえないでしょうか? 「情況によって音声に2秒もの遅れがでる」というのも、国際通話でもこれほどひどい情況はなく、この情況下では、まともな会話など出来ないと思います。

全体を見て、今のところ、大勢としてVoIPはLAN間通信主体のNWを持っていたユーザーが音声統合の手段として選択しているといった情況に思えます(だから評価基準もきわめて甘い)。

(中略)

記事の後半で、「IP−VPN上でのVoIP利用」がまさに理想のソリューションのようにかかれていますが、本当にそうなのでしょうか?
*単に扇情しているだけだと思います。

日経コミュニケーションの5月15日号にかかれているIP−VPNの記事をみて、うちの営業担当がIP−VPNでVoIPに決めるって本当にわめいてました(私は、あとでどうなっても一切知らないよ!といっておきましたが、その後どうなったことやら・・・)

*雑誌の記事を鵜呑みにして方式を決めるなんて・・・。 大手の通信事業者がこれじゃあ日本の通信の未来も暗い。 雑誌の情報の至らないところを正すくらいのことをして欲しいものですが。

VoIP over FRのフルメッシュ構成と同等レベルをIP−VPNで提供できるとすれば、VPNのネットワーク内でかなり確実なQoSを提供してくれないと実現し難く思います。  エッジのルーターの優先制御ではどうにも出来ない部分をIP−VPNで何とかするとなると、
 

 1 各拠点のIP−VPNへのアクセス回線が十分高速である

 2 各拠点のアクセス回線速度が極端に違わない(アクセス回線速度が非対称であることに起因する諸問題点が無視できる)

 3 VPNネットワーク内でVoIPに対するQoSを提供してくれる
 

 といった条件がそろえば、IP−VPNを利用してVoIPも実用的な選択となるのでしょう。

*そうですね。 でも日産自動車がPRISMを使うのに電話を統合しないのはこれらの条件が整ってないのと、電話網の規模が大きくて対応できる製品がないからではないでしょうか。 クロスウェーブ・コミュニケーションも網内のQoSはありませんから難しいですね。
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Sさんからのメール
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松田様

毎回の記事を楽しみにしています。 現在VoIP案件の現地調整中です。 トラブルの合間に記事を確認したところ思うふしが多々ありますのでメールを差し上げました。

弊社ではA社のVoIPを推進しています。 導入させて頂くお客様の帯域は64K、128Kが主でこの当たりのQoSはなかなかうまく動いています。 A社以外のメーカはわかりませんがA社でいえばある拠点規模ではVoIP実用レベルです。

しかし、チューニング機能(無音圧縮を無効にしても効いてしまう等)の不良が機種、モジュールの組み合わせで出たり出なかったり、顧客の感性に影響する機能が不十分で不安定です。 更に基本ソフトのバージョンが上がってデグレート、といった事態も年中行事で、この点が我々の悩みです。 現在もこの点で障害にあたりお客様を困らせています。 「ちゃんとデバックして出荷しろ」と声を大にして言いたい気分です。

弊社にも多くのVoIP案件が寄せられています。 弊社独自の評価の結果から様々なパターンで制限事項を設定しています。 その制限事項を超える案件は全てお断りしています。 しかしこのような制限事項すら潜り抜けて思いもよらぬ障害で悩むのが現状ともいえます。(音声パケットがちゃんと届くだけに悔しい。)

さてと、今から対策です。やれやれといった感じです。 これからも役に立つ、そして楽しい情報を宜しくお願いします。
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*VoIPの現状を象徴する言葉を抜粋すると、
「自社製品を売りたいが現時点ではVoIP導入はすすめたくないといった本音」、
「ある拠点規模ではVoIP実用レベル」、
「顧客の感性に影響する機能が不十分で不安定」、
「弊社独自の評価の結果から様々なパターンで制限事項を設定しています。 その制限事項を超える案件は全てお断りしています。 しかしこのような制限事項すら潜り抜けて思いもよらぬ障害で悩むのが現状」
「さてと、今から対策です。やれやれといった感じです。」
 

*Sさんのメールは土曜日の夜8時頃受信しました。 私が記事をアップロードしたのを現場で読まれたのですね。 そしてまた、VoIPのトラブルシューティングに取りかかったようです。  Sさんの言葉がVoIPの現状を一番的確に表していると思います。 VoIPは「やれやれ」。 

*今、私が設計しているネットワークは東京・大阪間だけで内線100チャネルを超えています。 TDMから移行する方式としてVoIPもはやり言葉ではあるので検討はしていますが、規模・音声品質・SS7への対応等超えるべきハードルが高すぎます。

*このネットワークで内線電話の全トラヒックに占める割合は20%を下回っています。 IPトラヒックは急激に増加していますから、今後音声の比重はますます下がるでしょう。 そんなマイナーになるもの、無理にデータと統合しなくていいんじゃないか、という案も真剣に検討しています。 「データ・音声統合網の構築技法」という本を書いているから、データと音声は統合する設計しかしない、というほど石頭じゃありません。 「やれやれ」と統合しても、ベンダーにデバグしてくれて有難うといわれるだけ。 エンドユーザにメリットはないでしょう。

*あらあら、どこかの自動車屋さんの発想もそうなのでしょうか?  
 
 

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