間違いだらけのネットワーク作り(125) 2000/04/22
「VoIP情報 from 京都」

先週土曜日(4月15日)NTT京都支店で研究会を行いました。 NTTコミュニケーションズの塚田さん、石川さん、石戸さん、NTT西日本の竹本さんが準備から当日の受付けや会場設営にいたるまで骨をおってくださったおかげで、東京や名古屋からの参加者10人を含む31人が集まり大成功に終わりました。 参加した方の集合写真は会員ページに掲載します。 午後1時から5時までミッチリ、私とNTTのAさんの講演と質疑。 私からもずいぶん質問させて貰いました。 質問に対して講師だけでなく、VoATMからIPまで経験豊富な名古屋のIさんや社内でVoIP同好会を作っている東京のKさん、Mさんが詳しい答えや経験談を話してくれたため情報量が倍増しました。

当日はあいにくの雨で花見はできませんでしたが懇親会にも20人以上が参加し歓談しました。 翌16日は好天。 岡崎法勝寺町のしだれ桜を見て帰路につきました。 しだれ桜はソメイヨシノより開花が遅いため、ちょうど満開でした。 ここのしだれ桜は大ぶりで形の良い樹がきれいな小道に沿って並んでいます。 しだれ桜といえばNHK大河ドラマのタイトルバックで大きな孤樹が使われていますが、あれは奈良県にあるしだれ桜とのこと。 東京ではしだれ桜はあまり見かけませんが、京都の人は昔から好むらしく方々に植えられています。 名前のとおり流れるように垂れた枝と花が優美なきもの姿を連想させます。 

岡崎法勝寺町のしだれ桜
 

VoIP情報 from 京都

私の講演内容はVoice over Packetsの基本的な仕組みと留意点、これからの企業ネットワークの考え方(表題は「よもやま話」)等について2時間ほど話しました。 その内容は「企業内データ・音声統合網の構築技法」の3章の内容+αです。 話のすべてをここには書けませんので印象に残った部分のみ紹介します。

○エコーキャンセラー

話の途中で名古屋のIさんにルータのエコーキャンセラーについて質問しました。 昨年9月にPRISMを見学した時点ではダブルトーク時相手の音声が聞こえなくなるという現象がありましたが、これは改善されたようです。 エコーというのは奥深いもので、私たちが日常使っている普通の電話では常に受話器からエコーを聞きながら話しています。 これを側音といいます。 これがあると「電話が動いている」と感じさせ自然に使えるのです。 側音は低遅延(数ミリ秒)なので益はあっても害はないのですが、VoXXで通話先のPBX等からエコーが帰ってくると200〜300ミリ秒も送れて自分の声が聞こえることになりますから、耳障りで会話に支障をきたすのです。 そこで受信側のGWがエコーキャンセラーでエコーを中和します。 エコーがどの程度遅れてGWに帰ってくるかを予測し、そのタイミングでエコーと逆位相の信号をかぶせて中和するのです。 エコーの遅延を予測するには通話開始時にエコーキャンセラのトレーニングが必要です。 このトレーニングがすばやくでき、また、エコーの遅延が大きくても対応できるものが優れたエコーキャンセラーということになります。

Iさんにどの製品のエコーキャンセラーが優れていますか? と質問すると言下に国産メーカーの名前をあげました。 とにかくIさんが色んな製品を使っているのには感心します。

○VoIPの問題点と改善点

Aさんは「VoIPインストールの実際と音質評価」というテーマで話してくれました。 たくさんのスライドを用意してくれましたが、特に97〜98年のVoIP製品の問題点と現時点の改善点というまとめのスライドが参考になると思いますので引用します。

97〜98年VoIP製品の問題点
-------------------------------------------------------------------------
・品質保証の方法が限られているためトラヒック増加に伴う音声帯域の圧迫に弱く、通話中の途切れが目立つ。

Queuing→WFQ+IP Precedence、CQ(各APの帯域幅確保)、PQ、ベンダ独自仕様のQueingアルゴリズムの使用
優先制御→未実装、動作不具合の場合、PacketShaperやATMで優先制御
帯域予約→RSVP
フラグメンテーション→MTUサイズ変更
ヘッダ圧縮→ベンダ独自の圧縮アルゴリズム

・ゆらぎ制御の方法がほとんど存在していない

・海外仕様製品と日本仕様製品の違い
 海外仕様のアナログ用GWの場合、物理的に回線を切断しないと回線が切断されない
 一定以上の音域をフィルタすることによる保留音の異常
 音声、FAXで特番を別に設ける必要性(FAX自動認識機能がない製品)
 

VoIPの改善点
--------------------------------------------------------------------------
・Queuing、優先制御対応の工夫、フラグメンテーション、CODECサポートの充実(?)
 Queuing→WFQ、ベンダ独自Queuing実装製品の増加(CBWFQ等)
 帯域予約→CBWFQ?、一部独自(帯域予約についてはどのベンダも手詰まり?)
 フラグメンテーション→FRF12、ペイロード選択の幅が広がる
 音声CODEC→CODEC選択の幅が広がる
 
・ゆらぎ制御の多様化
 ジッタバッファの制御値の幅が広がる、もしくは自動化
 *ゆらぎ制御というとゆらぎそのものをコントロールするようですが、そうではなくゆらぎを吸収するバッファの調整幅が広がった

・帯域確保
 RTP Priority  RTPパケットに最大確保帯域を設定(動的)
 Compressed−RTP  RTPヘッダ圧縮・解凍
 *以前はヘッダ圧縮を使うとルータの処理能力が10分の1になると言われたがアルゴリズムの改良でかなりよくなった

 variablePayload  1パケットに格納する音声データの大きさを設定し、低帯域におけるヘッダの無駄を軽減する
 *ベンダの推奨は40バイトとのこと。 しかし、CS−ACELP8Kとすると圧縮遅延15ミリ秒+格納遅延40ミリ秒=55ミリ秒の遅延が生じるし、伝送遅延も増える。 格納遅延というのは40バイト、すなわち40ミリ秒分の音声データをパケットに詰めるために必要な時間です。

*総じて、いろいろな手段が登場しているが「これをやれば大丈夫」という決め手はなく、「あれこれやってみないと分からない」という状況。
特にVoXXでは遅延とそのゆらぎに起因するトギレが問題になりやすいですが、個々のルータで優先制御をして遅延を抑えてもエンド〜エンドでどうなるかという保証はできないのが難しいところです。

*締めくくりに、「公衆フレームリレーを使って約200拠点のVoIPをやろうとしているところがあるが、どう思いますか?」と皆さんに聞いたところ、VoIP同好会のKさんが一言、「さわらぬ神にたたりなし。」

*私はレイヤ3だけでQoSを確保するのは無理があると思います。 レイヤ2以下のQoSを併用した方が大規模ネットワークでは現実的でしょう。 また、レイヤ2以下のQoSをルータだけで活かせるか?というとルータのフレームリレーでの帯域制御やATMでのシェーピングが甘いことを考えると、それも難しそうです。

おまけ

名古屋のIさんがCiscoWaveを聴講した感想メールを送ってきたので引用します。

以下、引用
---------------------------------------------------------------------------
アドバンスト・テクニカルセッションの中の「VoIPの チューニングとトラブルシューティング」を試しに聞いてみました。

内容は次のとおりで、CiscoのVoIPに関する設定をしたことのある方には大した内容ではないと思います。
どちらかと言えば、IPは大丈夫だけど、音声は少ししかわからない方を対象かな?と思います。

そうか言って、これからVoIPの導入を検討しているエンドユーザー向けでもなく、なんとなく中途半端です。 こんな内容なら、わたしでもやってあげますよ!という程度で大した収穫は ありませんでした。 唯一の収穫は、CiscoがようやくFAXリレーについてのドキュメントを出したことです。

 ■ 内容

1 PBXとの接続
PBXを知っている方にはごく普通の何でもないことと、Cisco側の簡単な設定についての説明です(初歩的な内容)。

2 音声NWのレベルチューニング
得るべきものは全くなし(初歩的な内容)。

3 番号計画と接続時間短縮
特段の内容はありません。 どうやって、PBX、Routerを含めた接続時間を短縮するかといった具体的な記述がなく、素人的な内容です。

4 FAX&Clock
ようやくCiscoからの見解が出てきました。内容は、特別なことは書いてありませんが、「CiscoのFAXリレーがこうやって動作している」と書いてあるのをわたしは初めてみました。 わたしのG3FAXのアナライズ結果と同様の内容がCiscoなりに書かれています。

5 VoiceQuality
よくみるPQ+WFQ、PQ+CBWFQの説明でした。 CBWFQの動作についての細かな説明はありませんでした。

6 Router performance
cRTPのFS化の効果をCPU使用率のグラフで宣伝しています。

以上 CiscoWAVE情報でした。
-----------------------------------------------------------------------------

*現場で様々な製品を手がけているIさんからすれば満足できないのは仕方がないと思います。 現場の生の現実を知りたい方は情報化研究会に参加された方がいいかも知れません。(と、宣伝になりました)

*実は私のところの若手にもCiscoWaveのVoIPセミナーに参加して貰いました。 Iさんの受けたコースではなく、丸1日の長いコースです。
私「どうだった?」
彼「いろいろ制約があって設計が難しい。」
私「たくさん来てた?」
彼「100人くらいの会場で半分くらい。 意外と少なかった。 エンドユーザでなくプロが多かった。」

以上、おまけでした。
 
 
 
 
 
 

ホームページへ