たぬきとかたつむり
「動物競争の話」
まけずぎらいのかたつむりがおかしいですね。だまされているたぬきもお人好しです。
昔 むかし、その むかし、山の奥に、たぬきとかたつむりがおったそうな。
ある日、たぬきが、
「かたつむりさん、おまえは、まい日 おなじところをいんじり、くんじり はいまわって、かわいそうだなあ。いっぺん、わしのじょうぶな足で、ひろい せけんへつれていってあげようか。」
いうたそうな。
かたつむりは、
「いいや、ひとのせわにならんでもええ。いこうとおもえば、どこへでもいく。うそじゃとおもうんなら、かけくらべでもしてみるか。」
と、いいかえした。
「よしきた。やろう。むこうの山の一本松のねもとまで。」
それで、そうだんがきまったと。
で、ふたりはかけだしたそうな。
そのとき、はや、かたつむりは、たぬきのふさふさしたしっぽの先に、くいついておった。
たぬきは、「かたつむりのような おそいもんとは、きょうそうにならん。」と、ごっそりごっそり あるきはじめた。
あるくうちに、たぬきは、のどがかわいてきたそうな。
「まあ、水でも のんでいくとするか。」
と、たに川をおりて、水をピチャピチャ のみはじめた。
そのとき、かたつむりは、しっぽから飛びおりて、ひょっこり出てきた。
「たぬきさん、あんた、はや のどが かわいたかな。からだの大きいものは そんじゃなあ。」
「ありゃ、はや 来とったんか。ふしぎじゃなあ。いや、こんどこそ いそぐぞ。」
「よういどん。」
かたつむりは、また しっぽにくいついた。
たぬきが、はしるまんまに ゆられながら、一本松のねもとまで来た。
「こんどこそ、かたつむりは よう 来んじゃろう。」
と、たぬきは うれしゅうなって、しっぽを ぴぴっと ふったそうな。
そのひょうしに、かたつむりは ふりおとされて、そばの いわに ぶつかった。
「ビシャーン」
だいじな からが われて、からだが とび出してしもうた。
ひがあたると、ちかちかして いたいそうな。
「どうじゃ、かたつむり、わしのかちじゃぞ。」
と、たぬきが いばった。
すると、かたつむりは、つのを ふりあげて、
「いいや、わしは とっくに来て、あつうて かなわんけえ、きものをぬいで すずんどるところじゃ。」
いうたそうな。
昔こっぷりにゃんこの目。
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