はいぼう岡山県勝田郡奈義町で採話されたお話です。「シンデレラ」のお話によく似ています。普通はおかみさんは主人公をいじめる のですが、このお話のおかみさんはやさしい人のようで、話を読んでいても、なにか ほっとします。そのぶん、あまりドラマチックではないかも知れません。 むかし、あるところに、どえらい(たいへんな)分限者(大金持ち)があったそうな。 その分限者にゃあ、てつだいの男が十人、女が十人も住んでおった。分限者夫婦には、ひとりむすこがおったんじゃが、いまだに気に入った相手がのうて、嫁をもらわずにおった。
ある年の春、村でしばいがあった。おかみさんは、てつだいの女たちに、
ところが、てつだいの女の中に、気だてのやさしいすなおな十四・五才の女の子がおった。朝早うから、夜おそうまで、ふろをたいたり、かまの下の灰をとったり、なべやかまのすすをとったりするもんじゃから、髪は、灰をかぶって白うなり、顔や首は、なべずみで真っ黒うなっとった。
むすこも、しばいを見に行っとった。前の方で見とったが、ふと後ろの方を見ると、今まで見たことのない、きれいなむすめが立ってしばいを見ておった。
つぎの日から、むすこは、そのむすめのことを思いつめて、病気になってしもうた。分限者夫婦は、なにも知らんもんじゃけん、心配して、つぎいつぎい医者にたのんでみてもろうたが、いっこうにむすこの病気はよくならん。三日たち、四日たち、むすこは、ますます弱るばかりじゃった。
そこで、夫婦と番頭は、顔をつき合わせて相談した。
夫婦と番頭は、困りはてて、
「若だんな、おかげんはいかがですか。」 それから、むすこの病気は、すっかりよくなり、はいぼうは、この分限者の若だんなの嫁となり、しあわせにくらしたそうな。 話者 勝田郡奈義町 安東克之
このお話について、主人公は男の子ではないのかという2件の問い合わせがありました。 このお話以外の「灰坊」について少し書いてみます。 灰坊について 日本昔話通観28(昔話タイプインデックス)の分類によるあらすじ 継母が召使いに継子の肝を取れと命じるが、召使いは継子を逃がし、かわりに猿の肝を持ち帰る。 継子が亡母の墓で寝ていると、亡母が現れ、望みのかなう扇をくれる。 継子は長者の灰坊にやとわれ、祭りの日に、扇できれいな衣服と馬を出し、立派な姿で人々を驚かす。 長者の娘が寝込み、占い師が、恋わずらいだから、娘が盃を受けた召使いを婿にとれば治ると言う。 娘は最後に、灰坊の盃を受け、灰坊は扇で出した衣服をつけ美男子となって婿に迎えられる。 (注)主人公は必ずしも継子ではなく、「鬼ヶ島脱出」、「姉は蛇」、「聞き耳ずきん」、 「三枚のお札」「一寸法師」など、さまざまタイプに複合して展開する。また、しば しば申し子でもあるが、継母との関係を中心に、厄難から逃れる点を基調とする。た だし、さまざまな理由で勘当されることも少なくなく、この点では、流離の運命に見 舞われた主人公が、亡母や神仏に授けられた呪宝で出世する話である。 ------------------------------------- 岡山県備中町で伝わる「灰坊太郎」のお話のあらすじ 朝日長者と夕日長者という長者の家があった。朝日長者の奥さんが亡くなり、後妻を迎えたが、 その後妻は、継子の男の子をじゃまにするようになった。 継母は病のふりをして、継子の肝を食べると治ると旦那さまに言う。息子に「母のために死んでく れるか」というと「喜んで死にましょう」と言い、可愛がっていた犬と山へ向かう。 父が刀を振り上げ、息子を殺そうとすると、犬がわんわんと父に飛びかかって殺させないようにす る。父が犬に「おまえが身代わりになるというのか」と問うと、犬は静かになって、うなずいたよう に見えた。そして、父はその犬を殺して、その肝をもって帰る。 継子の男の子は、その夜は木の上で一夜を過ごすが、夜中にガサゴソという音で目が覚める。亡く なった母が現れて、木の下に、なんでもほしいものが出てくる笛と扇をおいておくので、朝になった ら、それを持って、小鳥が道案内をするから、ついていくようにという。 朝になって、そのとおりにすると、大きな屋敷(夕日長者)に着き、そこで風呂焚き(灰坊)にな って住み着く。 -------その後は、上記通観のあらすじと同じ----------- 灰坊太郎は、夕日長者の一人娘の婿となり、幸せにくらす。 |