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Chapter 12

Nervous System 神経系

Chapter Concepts この章のコンセプト

12.1 Neurons and How They Work ニューロンとその働き
12.2 Peripheral Nervous System 末梢(X抹消)神経系
12.3 Central Nervous System 中枢神経系
12.4 The Cerebral Hemispheres 大脳半球
12.5 Higher Mental Function 高次精神機能
12.6 Homeostasis 恒常性
12.7 Drug Abuse 薬物濫用(乱用)


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 それは1995年のある暖かな土曜日のことであった。群集が Virginiaの Culpeperに集まり、乗馬のコンペを楽しんでいた。全てが申し分なかった・・・不意に一頭の馬がトラックで死んで止まってしまうまでは。超人人気騎手の Christopher Reeveは投げ出されて宙に舞い、大地に打ちつけられた。Reeveは上の二つの頚椎(Atlas 環椎 と Axis 軸椎)を潰され、感覚脊髄とそれ以下の部分に傷害を受けた。程なく彼は麻痺した。医者は一命をとりとめて何よりだといった。
 脊髄はロープ状の神経経路の束であり、体の脳以外の部分 との間のメッセージのやり取りを行っている。脊髄は脳と合わさって中枢神経系(CNS)を構成している。中枢神経系は感覚入力を解析して、恒常性の維持に役立つ反応を調整する。末梢神経系(PNS)は神経でできている。神経は感覚情報を中枢神経系に運び、また、中枢神経系からの運動の指令を筋や腺に運ぶ(Fig. 12.1)。
 Reeveの脊髄が損傷した際、中枢神経系は傷害部位以下に位置する身体の部分との連絡の通路を失った。Reeveは身体のほとんどの部位からの感覚を受けなくなったし、手足を動かすことも出来なくなった。しかし、眼や耳からの脳神経は依然として彼に見ることや聞くことを可能にしていたし、脳は彼に感情や記憶や思考力を与えていた。彼の内臓も正常に機能していたし、そのことはまるで彼の傷害は想像していたより悪くないかのようであった。この章では、神経系の構造神経系が無数の機能をもたらす様について考察する。

12.1 Neurons and How They Work ニューロンとその働き

 神経組織には二種類の型の細胞でできている。神経膠(しんけいこう)細胞 と ニューロン(無理やり訳すと神経単位)である。神経膠細胞 は ニューロンの支持と栄養を行っている。ニューロン は実際に神経活動電位を伝導する細胞である(Fig. 3.7 参照)。

Neuron Structure ニューロンの構造

 外観は異なっていても全ての神経組織はちょうど三つの部分、つまり、1. 樹状突起、2. 細胞体、3. 軸索 でできている。Figure 12.2の運動ニューロンを見れば、樹状突起が信号を細胞体に送る突起であることがわかる。細胞体は、ニューロンの中の核やその他の細胞内小器官を含んだ部分である。軸索は神経活動電位をその全長にわたって伝導する。軸索は長い線維に見えることがある。
 ニューロンには三種類のクラスがある。1. 感覚ニューロン、2. 運動ニューロン、3. 介在ニューロンである。それぞれの機能は中枢神経系との関わりと絡めてFigure 12.2にわかりやすく記載してある。感覚ニューロンは感覚受容器から情報を受け取って中枢神経系に送り、運動ニューロンは中枢神経系から出た情報を効果器(筋線維や腺)へ送る。介在ニューロンは中枢神経系内のニューロンどうしの間の情報を伝える。介在ニューロンは感覚ニューロンからの入力を受け取ることも、他の中枢神経系内の介在ニューロンからの入力を受け取ることもできる。それ故、介在ニューロンは筋や腺に指令を運動ニューロンを通じて送り出す以前に信号を加算することができる。



Figure 12.1 Organization of nervous system. 神経系の器官


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Figure 12.2 Types of neurons. ニューロンの型

Myelin Sheath ミエリン鞘

 長い軸索は、シュワン細胞(神経鞘細胞)と呼ばれる神経膠(こう)細胞でできているミエリン鞘の防壁に取り囲まれている。(Schwann はドイツ人生理学者) ミエリン鞘は、シュワン細胞が軸索を幾重にも取り囲んで幾層かの形質膜の層を形成して形成される。シュワン細胞の形質膜は、ミエリンを含んでいる。ミエリンは脂肪を含んだ物質で電気の絶縁性が高い。ランビエの絞輪と呼ばれる部分で区切られているミエリン鞘は神経線維の白い光沢を放つ色調をつくっている(Fig. 12.3)。
 多発性硬化症(MS)は、ミエリン鞘の病気である(脱髄性疾患)。病変が進行すると、硬い瘢痕が形成されて正常な神経活動電位の伝導が阻害されて、結果として様々な神経筋症状が現れる。その一方で(他方で)、ミエリン鞘は神経の再生に重要な役割を果たしている。軸索が偶発的に傷害を受けると、軸索の遠位端は退行変性し、ミエリン鞘はそのまま残って新しい線維が成長するための経路を提供する。

あらゆる神経は三つの部分からなる。樹状突起、細胞体、軸索である。感覚ニューロンは情報を受け取って中枢神経系へ送り、介在ニューロンは感覚入力を加算して、その後で運動ニューロンが中枢神経系から出る指令を送り出す。



Figure 12.3 Myelin Sheath. ミエリン鞘


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Nerve Impulse 神経活動電位

 神経活動電位という手段を用いてニューロンは情報を伝える。神経活動電位の姿は摘出した軸索とオシロスコープと呼ばれる電圧(電位)測定装置を用いて調べられる。電圧の測定には、ミリボルト(mV)の単位が良く用いられる。電圧は二つの地点の間の電位の差を測定したもので、この場合は、軸索の内外の電位差である。電圧はオシロスコープの画面上の輝線、あるいは経時的に観察されるパターンとして現れる。

Resting Potential 静止電位

 Figure 12.4 に示したような実験装置で、オシロスコープは二つの電極に接続されている。一つの電極は軸索の内部に、もう一つの電極は軸索の外に設置されている。軸索は本質的には、膜で仕切られ軸索原形質(軸索の細胞質)で満たされた管である。軸索が活動電位を伝導していない間は、オシロスコープは膜の内外の電位差を約-65mVと記録する。この値は軸索の内部が外部に比べて負に荷電していることを示している。この状態は活動電位を伝導していないことから静止電位と呼ぶ。
 この極性(荷電の違い)の存在は、軸索膜(軸索の形質膜)の内外のイオンの分布の違いと相関している。Figure 12.4aが示すように、ナトリウムイオン(Na+)の濃度は軸索の外の方が内よりも高く、カリウムイオン(K+)の濃度は軸索の内の方が外よりも高。イオンの不均等な分布は、ナトリウム-カリウム ポンプ の働きによる。ナトリウム-カリウム ポンプ は膜内タンパクで、能動的に Na+を軸索の外に出して K+を軸索の内に入れる。このポンプの働きによってNa+とK+の膜の内外での不均等な分布が維持されている。
 このポンプは常に働いている、というのも、軸索膜はある程度は膜電位を構成するイオンを通過させ、イオンは濃度の低い方へ拡散するからである。膜は K+を Na+よりもよく透化するので、膜の外部の方に内部よりも多く陽イオンが存在する。このことがオシロスコープ上に記録される極性の原因となる。軸索原形質内の、大量の負に荷電した有機イオンも静止状態の軸索膜の内外の極性の原因となっている。

ナトリウム-カリウム ポンプ によって、軸索の外部に高濃度の Na+が、内部に高濃度の K+が存在する。イオンの不均等な分布により、軸索の内部は外部と比べて負に荷電している。
Action Potential 活動電位

 活動電位は、神経活動電位が発生した際の軸索膜の内外の極性の急速な変化である。活動電位は全か無かの法則の現象である。刺激によって軸索膜が閾値と呼ばれるある値まで脱分極すると、活動電位が発生する。活動電位一回の強度は不変であるが、強い刺激の方が弱い刺激のときよりもより早い頻度で発火(活動電位が発生)する。
 活動電位には二種類の型のゲートチャネル膜内タンパクが必要である。開いて Na+を膜を通過させるチャネルタンパク と 開いて K+を膜を通過させるチャネルタンパク が存在する。ナトリウムチャネル の方が カリウムチャネルよりも早く開く。

Sodium Gates Open ナトリウムゲートが開く 活動電位が発生すると、ナトリウムチャネルのゲートが先ず開いて、Na+が軸索内へ流入する。Na+が軸索内部へ移動すると、膜電位は-65mVから+40mVへ変化する。このことは、Na+が軸索内へ流入することで軸索内の荷電が負から正へと変化することより脱分極である。

Potassium Gates Open カリウムゲートが開く 次に、カリウムチャネルのゲートが開いて、K+が軸索外へ流出する。K+が軸索外部へ移動すると、活動電位は+40mVから-65mVへと戻る。このことは、K+が軸索外へ流出することで軸索内の荷電が負へと戻ることより再分極である。


神経活動電位は、軸索膜を介しておこる電気化学的変化である。脱分極の間 Na+は軸索の内部に移動し、再分極の間 K+は軸索の外に移動する。

Propagation of an Action Potential 活動電位の伝達

 活動電位が軸索を下行する際、軸索の連続した部分は脱分極した後で再分極する。ドミノ倒しのように、軸索の上流の部分の活動電位が次の部分の活動電位を惹起する。
 活動電位が進むとすぐに軸索の再分極した部分は不応期になる。不応期の間はナトリウムチャネルは開くことができない。このことにより、活動電位が逆行することはなく、活動電位は常に軸索を下流の枝に向かって流れる。
 ミエリン鞘を持つ軸索では、ゲートを持つ活動電位を発生させるイオンチャネルはランビエの絞輪の部分に集中している。イオンの交換はランビエ絞輪の部分のみでおこっているので、活動電位はミエリン鞘をもたない軸索よりも早く伝わる。この現象は跳躍伝導(ちょうやくでんどう)と呼ばれる。つまり、活動電位は絞輪から絞輪へと「跳躍(ジャンプ)」するのである。跳躍伝導により、活動電位の速度は 200メートル/秒(=450マイル/時間)を記録する。

活動電位は軸索の全長を移動する。

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Figure 12.4 Resting and action potential. 静止電位と活動電位


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Figure 12.5 Synapse structure and function. シナプスの構造と機能



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Transmission Across a Synapse シナプスを介した伝達

 あらゆる軸索は多数の細かい末端を持つ枝に分岐する。末端のそれぞれには先端に軸索バルブ(軸索球)と呼ばれる腫脹した部分が存在する(Fig. 12.5 a,b)。軸索バルブはそれぞれ別のニューロンの樹状突起(あるいは細胞体)に近接している。この近接した領域はシナプスと呼ばれる。シナプスの上流のニューロンの膜はシナプス前膜と呼ばれ、シナプスの下流のニューロンの膜はシナプス後膜と呼ばれる。間の狭いギャップはシナプス間隙と呼ばれる。
 シナプスを介した伝達は神経伝達物質と呼ばれる分子によって行われる。神経伝達物質はシナプス小胞内に貯蔵されている(Fig. 12.5b,c)。神経活動電位が軸索に沿って軸索バルブに到達すると、ゲートを持ったカルシウムイオン(Ca++)のチャネルが開き、カルシウムがバルブ内に流入する。この突然のCa++濃度の上昇は、シナプス小胞がシナプス前膜と融合するように働く刺激となり、神経伝達物質分子はシナプス間隙内へと放出される。神経伝達物質はシナプス間隙を拡散してシナプス後膜へ達する。シナプス後膜に於て、神経伝達物質はその伝達物質に対して特異的な受容体タンパクと結合する(Fig. 12.5c)。
 神経伝達物質の種類や受容体の型の種類によって、シナプス後ニューロンの反応は興奮性になったり抑制性になったりする。ゲートを持ったイオンチャネルを利用する興奮性神経伝達物質は作用が早い。他の神経伝達物質はシナプス後細胞の代謝に影響を及ぼし、それ故、作用が遅い。

Neurotransmitter Molecules 神経伝達物質分子

 少なくとも25種類の異なった神経伝達物質が同定されているが、その中でよく知られている二つと言えば、アセチルコリン(ACh)ノルエピネフリン(NE)である。
 神経伝達物質はシナプス間隙へ放出されて、シナプス後の反応が惹起されると、シナプス間隙から取り除かれる。シナプスの中には、シナプス後膜内に神経伝達物質を迅速に不活性化する酵素をもつものがある。例えば、酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)はアセチルコリンを分解する。別のシナプスでは、シナプス前膜が迅速に神経伝達物質を再吸収し、シナプス小胞に再構成したり、分子に分解したりする。神経伝達物質がシナプスに短時間存在することにより、シナプス後膜の連続した刺激(もしくは抑制)が回避される。
 興味を引く事実がある、それは、多くの神経系に影響を及ぼす薬物の作用が神経伝達物質の作用を阻害したり増強したりすることであることである。Figure 12.18 で述べているように、薬物は神経伝達物質の放出を増強したり阻害したり、神経伝達物質の作用を模倣したり、受容体をふさいだり、シナプス間隙から神経伝達物質を除去するのを阻害したりすることがある。

シナプスを介した伝達には、神経伝達物質の放出が必要である。神経伝達物質はシナプス間隙へ拡散してシナプス前のニューロンからシナプス後のニューロンへ移動する。




Figure 12.6 Integration. 統合


Synaptic Integration シナプス統合

 ニューロン一つは多くの樹状突起と一つの細胞体をもっていて、樹状突起も細胞体も他の多くのニューロンとシナプスを形成することができる。ニューロン一つに対して1,000〜10,000のシナプスが存在することは珍しくない。それ故、一つのニューロンは、多くの興奮性と抑制性の信号を受信する末端なのである。興奮性の神経伝達物質はニューロンが活動電位を発生するように傾くシグナルと呼ばれる電位の変化をつくり出し、抑制性の神経伝達物質はニューロンが活動電位を発生しないように傾くシグナルをつくり出す。興奮性のシグナルは脱分極を発生させる効果があり、抑制性のシグナルは過分極を発生させる効果がある(Fig. 12.6)。
 神経はこれらの入力されたシグナルを統合する。統合とは興奮性と抑制性のシグナルを合計することである。ニューロンが多くの興奮性のシグナルを受け取れば(異なったシナプスからの複数のものでも、単一の頻回のものでもよい)、軸索が神経活動電位を伝える可能性が高まる。他方で、ニューロンが抑制性と興奮性の両方のシグナルを受け取れば、信号の合計により軸索が発火する(神経活動電位を伝える)可能性は妨げられる。

統合は抑制性と興奮性のシグナルの加算であり、シナプス後ニューロンが受け取る。




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12.2 Peripheral Nervous System 末梢神経系
 末梢神経系(PNS)は中枢神経系の外に存在し、軸索の束である神経を含んでいる。神経の内部の軸索は神経線維とも呼ばれている。
 ニューロンの細胞体は、中枢神経系あるいは神経節の中に見られる。中枢神経系とは、つまり、脳と脊髄である。神経節(単数形 ganglion, 複数形 ganglia)は末梢神経系の細胞体が集まったものである。
 ヒトには12対の脳神経が存在し、脳に接続している(Fig. 12.7a)。その内の幾つかは感覚神経、つまり、感覚神経線維のみを含んだものである。別の幾つかは運動神経であり、運動線維のみを含んでいる。残りの線維は、感覚と運動の両方の線維を含んだ混合神経である。脳神経は、身体の中で主に頭頚部や顔面に関与している。しかしながら、迷走神経は、咽頭や喉頭だけでなく、大部分の内臓にも枝をのばしている。
 ヒトは31対の脊髄神経をもっている(Fig. 12.7b)。対をなす脊髄神経は脊髄から二本の短い枝、もしくは根(こん)を出して脊髄から出ている。後根(背側根)は、感覚ニューロンの軸索を含んでいて、感覚受容器からの活動電位を脊髄へ伝導している。感覚ニューロンの細胞体は後根神経節内にある。前根には運動ニューロンの軸索を含んでいて、脊髄から効果器へと活動電位を伝導している。あらゆる脊髄神経は、多くの感覚と運動の線維を含んだ混合神経である。脊髄神経のそれぞれはその部位により、特異的な領域を支配している(支配領域を持っている)。

末梢神経系の中で、脳神経は活動電位を脳とやりとりし、脊髄神経は脊髄と活動電位をやりとりする。



Figure 12.7 Cranial and spinal nerves. 脳神経と脊髄神経


脳神経12対を覚えておくと、解剖のとき楽になるゾナ。

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Somatic System 体性神経系

 体性神経系は体外からの感覚を受け取る受容器から感覚情報を受け取って中枢神経系に送り、中枢神経系から出た運動指令を骨格筋に送る。骨格筋の随意的なコントロールは必ず脳に端を発する。刺激に対する不随意な反応は反射と呼ばれ、脳が関与しているか、あるいは脊髄のみが関与しているかである。宙を飛んでいる物体を見ると目は瞬き(またたき)、鋭利な画鋲に触れれば、思考する余地なく手はびっくりしてよける動作をする。


The Reflex Arc 反射弓

 Figure 12.8には脊髄のみが関与した反射の経路が示されている。手が先の鋭い鋲(びょう)に触れれば、皮膚の感覚受容器から神経活動電位が生じ、感覚を伝導する軸索を通って活動電位は脊髄に達する。脊髄に背側から(後根から)入る感覚ニューロンは、多くの介在ニューロンに信号を送る。介在ニューロンの内の幾つかは運動ニューロンとシナプスを形成している。運動ニューロンの短い樹状突起と細胞体は脊髄内にあり、軸索は腹側から(前根から)脊髄を出ていく。神経活動電位は運動線維の軸索を通って効果器に達し、効果器は刺激に対する反応をもたらす。この場合、筋が収縮して手を鋲から引っ込めるようになる。様々な他の反応をおこすことができる。最も考えられるのは、鋲を見て怖気づき、苦痛で叫ぶことだろう。一連の反応は、関係している介在ニューロンの幾つかが神経活動電位を脳へ送っているという事実で説明できる。脳は刺激を恐れてこれらの反応をおこすように指令するのである。

体性神経系では、神経は、外部の感覚受容器から情報を受け取って中枢神経系へ送り、運動の指示を骨格筋へ送る。不随意反射は、我々に外部からの刺激に対して迅速に反応することを可能にさせている。

Figure 12.8 A reflex arc showing the path of a spinal reflex. 脊髄反射の経路である反射弓


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Figure 12.9 Autonomic system structure and function. 自律神経系の構造と機能



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Autonomic System 自律神経系

 末梢神経系の自律神経系は心筋と平滑筋及び分泌腺の活動を調節している。自律神経系は交感神経系と副交感神経系に分けられる(Fig. 12.9 と Table 12.1)。交感神経系も副交感神経系も、(1) 自律的に機能し、通常不随意な支配である。(2) 全ての内蔵を支配する。(3) 2本のニューロンと1つの神経節を利用して活動電位を伝える。一番目のニューロンは中枢神経系に細胞体をもち、節前線維をもっている。二番目のニューロンは神経節内に細胞体をもち、節後線維をもっている。
 例えば、血圧、呼吸数といったものを調節する反射行動は、特に恒常性の維持に重要である。これらの反射は、内臓と接している感覚ニューロンが情報を中枢神経系に送った際に開始する。反射は自律神経内の運動ニューロンの働きによって完了する。

Sympathetic Division 交感神経系

 交感神経系の大部分の節前線維は、脊髄の中部(上中下の)、あるいは胸腰部から発生し、脊髄を出てすぐに脊髄の近傍に存在する神経節で終了する。それ故、交感神経系では節前線維の長さは短く、臓器と接触する節後線維の長さは長い。



 交感神経系は緊急事態の際に特に重要であり、「ヤル か ズラカル か」の選択と関係がある。敵からよける とか 危機から逃げる 必要があるときには、筋の活動に準備万端なブドウ糖と酸素の供給が必要である。交感神経系により心拍数は加速し、気管支は弛緩する(→気道が広がる→呼吸が増加)。他方で、交感神経系は消化管を抑制する。攻撃を受けている際には、消化活動は緊急に必要でない。節後線維から放出される神経伝達物質は、主にノルエピネフリン(NE)である。ノルエピネフリン(=ノルアドレナリン)の構造はエピネフリン(=アドレナリン)の構造に類似している。アドレナリンは、副腎髄質から放出されるホルモンで、通常、心拍数と筋の収縮性を増加させる働きがある。

交感神経系は、「ヤル か ズラカル か」の選択と関係がある反応をもたらす。
Parasympathetic Division 副交感神経系

 副交感神経系は数本の脳神経(つまり、迷走神経(第X脳神経)) と 脊髄の仙髄(下の端)の部分から出る線維を含んでいる。それ故、副交感神経系は、しばしば自律神経系の脳神経領域と仙髄領域の部分であると考えられている。神経節が標的臓器の近傍もしくは内部に存在するので、副交感神経系では節前線維の長さは長く、節後線維の長さは短い。



 副交感神経系は、しばしば「ハウスキーパー(家政婦と主婦の意味がある)の領域」と呼ばれ、安静時の状態と関係があるような身体内の反応を促進する。例えば、眼の瞳孔を収縮させ(瞳孔括約筋が収縮して縮瞳)、食物の消化を促進させ、心拍を遅くする。副交感神経系で利用される神経伝達物質はアセチルコリン(ACh)である。

副交感神経系は、安静状態と関連があるような反応をもたらす。
Table 12.1 Comparison of Somatic Motor and Autonomic Motor Pathways
Items 項目 Somatic Motor Pathway
体性運動経路
Autonomic Motor Pathway
自立運動経路
Sympathetic
交感神経系
Parasympathetic
副交感神経系
Type of control
支配形態
Voluntary/Involuntary
随意か不随意
Involuntary
不随意
Involuntary
不随意
Number of neurons per message
情報あたりの必要ニューロン数
1 2 (線維の長さ:
preganglionic 節前 < postganglionic節後)
2 (線維の長さ:
preganglionic 節前 > postganglionic節後)
Location of motor fiber
運動線維の位置
Most cranial nerves and all spinal nerves
大部分の脳神経と脊髄神経
Thoracolumbar spinal nerve
胸腰部の脊髄神経
Cranial(vagus) and sacral spinal nerves
脳神経(の迷走神経)と仙骨部の脊髄神経
Neurotransmitter
神経伝達物質
Acetylcholine
アセチルコリン
Norepinephrine
ノルエピネフリン
Norepinephrine
ノルエピネフリン
Effectors
効果器
Skeletal muscles 骨格筋 smooth and cardiac muscle, glands
平滑筋、心筋、腺
smooth and cardiac muscle, glands
平滑筋、心筋、腺




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12.3 Central Nervous System 中枢神経系

 中枢神経系(CNS)は脊髄と脳でできている。中枢神経系は情報を受け取って運動指令が発せられる部位である。脊髄と脳の両者は骨により保護されている。脳は頭蓋に閉じ込められているし、脊髄は椎骨に取り囲まれている。また、脊髄と脳のどちらも、髄膜として知られている保護膜に取り囲まれている。髄膜炎はこの被いの炎症である。髄膜の間の空間は脳脊髄液で満たされている。脳脊髄液は中枢神経系のクッションと保護の役割をしている。脳脊髄液の量が少くなる原因は、時に脊髄の周りで検査手技である脊髄穿刺(つまり腰椎穿刺)を行うことによってひきおこされる。
 脳脊髄液は、脳の脳室 や 脊髄の中心管 の中にも存在する。脳の脳室は、脳脊髄液を産生したりリザーバーとして溜めておく機能をもつ内腔である。通常、余剰な脳脊髄液は心血管系に排出される。しかしながら、脳脊髄液の排出の阻害が起こることがある。新生児で脳(頭蓋腔)が脳脊髄液の蓄積によって拡大することがあり、この状態を「水頭症」と呼ぶ。成人で脳脊髄液が過剰になると、脳は(縫合がしっかりと形成された)頭蓋骨に押し付けられ、損傷を受けることがある。(この状態は「脳ヘルニア」と呼ばれる。)

中枢神経系は体軸の正中に位置し、脳と脊髄でできている。中枢神経系は、感覚情報を受け取って、随意筋運動の着手を行っている。

The Spinal Cord 脊髄

 脊髄は脳底から伸びて、大後頭孔と呼ばれる頭蓋骨の大きな開口部を通って、椎骨でできた脊柱管に入る(Fig. 12.10)。

Structure of the Spinal Cord 脊髄の構造

 Figure 12.11aには、椎骨が配列してつながって脊柱管を形成している様子が示されている。脊髄から伸びている脊髄神経は、脊柱管と脊柱管の間の開口部を通る。
 脊髄の(横)断面図を見ると、脊髄には、中心管、灰白質、白質が存在することがわかる(Fig. 12.11b,c)。中心管の中には、脊髄を保護している髄膜の場合と同様に、脳脊髄液が満たされている。灰白質(かいはくしつ)は、正中に位置しており、断面はアルファベットの Hのような形状をしている。灰白質が灰色なのは、細胞体と短くてミエリン鞘をもたない線維を含んでいるからである。感覚ニューロンと運動ニューロンはこの部位に見られ、介在ニューロンがその間に存在するような構造をとっている。脊髄の後根は灰白質に入る感覚神経の線維を含んでおり、脊髄の前根は灰白質から出る運動神経の線維を含んでいる。後根と(page 257)前根は脊髄が脊柱管から出るより前に合流する。脊髄神経は末梢神経系の一部である。
 脊髄の白質は灰白質の周囲の領域に存在する。白質が白いのは、ミエリン鞘をもつ介在ニューロンの軸索が束をなして走行していて、xx路(tract, 例えば錐体路 pyramidal tract といったような)と呼ばれる構造を呈しているからである。上行性の経路は脳へ情報を運ぶ経路であり、主に脊髄の背側(後側)に存在し、下行性の経路は脳からの情報を運ぶ経路であり、主に脊髄の腹側(前側)に存在する。経路は脳へ出入りする前に(体軸の正中に対して)交差するので、脳の左側は身体の右側を支配し、脳の右側は身体の左側を支配している。

脊髄は脳底から伸びて椎骨でできた脊柱管に入る。脊髄の断面を見ると、中心管、灰白質、白質が見られる。


Functions of the Spinal Cord 脊髄の機能

 脊髄は幾千もの反射弓の中枢である。Figure 12.11には、感覚受容器から効果器の筋へ至る脊髄反射の経路が示されている。脊髄内の介在ニューロンはそれぞれ他の多くのニューロンとシナプスを形成していて、それ故、他の介在ニューロンや運動ニューロンに情報が送られる以前に、入力される情報の統合が行われる(Fig. 12.6)。
 脊髄には、脳 と 脊髄から出る末梢神経 を連絡するという意義がある。誰かが貴方の手に触れれば、感覚情報が感覚受容器から感覚神経線維を通って脊髄に達し、脊髄内の上行路を通って脳に至る。随意的な足の運動の際には、脳に端を発する運動活動電位が脊髄の下行路を通って脊髄内を下って、脊髄を出て運動神経線維を通って筋に達する。それ故、脊髄が傷害されると、感覚と随意運動の支配を失い、麻痺を生じるのである。脊髄が完全に胸椎領域で一刀両断されれば、下半身と下肢の麻痺が生じる。この状態は 対麻痺(paraplegia)と呼ばれる。(cf. ちなみに 片麻痺 hemiplegia は正中から見た片側の麻痺) 脊髄の傷害が、頚椎領域であれば、通常、四肢が侵される。この状態は 四肢麻痺(quadriplegia)と呼ばれる。

脊髄は反射行動の中枢である。脊髄は脳と体の大部分の間の連絡の役目も担っている。脳との間を行き来する経路が交差するので、脳の左側は体の右側を支配しているし、逆もまた真なりであるのことよ。

Figure 12.10 Central nervous system. 中枢神経系



Figure 12.11 Spinal cord. 脊髄



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The Brain 脳

 ヒトのは生物学の最後の秘境であると言われている。近代神経化学の最終到達地点は、脳の様々な部分の構造と機能を解明して、1,000以上ありヒトから健常な生活を奪う精神疾患を予防したり治したりすることができるようになることである。この部分では、脳に関する知見の一端と、最近の研究の手段について述べている。
 脳の各部分について、脳幹や間脳や小脳を参照しながら見てみよう。脳には4つの脳室がある。第四脳室、第三脳室、二つの側脳室である。脳幹と第四脳室、間脳と第三脳室、小脳と二つの側脳室を関連付けることは学習の手助けになる。

Figure 12.12 The human brain. ヒトの脳


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The Brain Stem 脳幹

 脳幹は脳の内側の部分で、延髄、小脳、橋、中脳を含んでいる。延髄は、脊髄と橋の間に存在する。延髄には、多数の心拍数、呼吸、血管収縮(血圧)を調節する生命維持中枢が存在する。延髄には、嘔吐、咳、くしゃみ、しゃっくり、嚥下の反射中枢も存在する。延髄には、脊髄と高次脳中枢の間の上行路と下行路が存在する。
 橋(きょう, pons)という単語の意味はラテン語で橋(はし)を意味する。そして、その名前のとうり、橋は小脳と小脳以外の中枢神経系をつなぐ軸索の束を含んでいる。加えて、橋は延髄と共同で呼吸数を支配し、視覚刺激や聴覚刺激に反応しておこる頭部の運動に関わる反射中枢をもっている。
 中脳は大脳と脊髄の間や大脳と小脳の間の経路の中継駅の役目をしている。中脳には、視覚、聴覚、触覚に対する反応の反射中枢もある。

The Cerebellum 小脳

 小脳は脳幹と第四脳室で仕切られている。小脳は二つの部分でできていて、狭い中間部分(訳注: 解剖学用語では、虫部 vernis (むしの漢字は誤植ではない、念のため))で繋がれている。小脳の表面は灰白質で、内部の大部分は白質である。小脳は、感覚情報と運動情報の両者を統合し中継している。小脳は、ピアノを弾くとか野球で球を打つといった新しい運動技能の習得に必要である。

The Dienchephalon 間脳

 視床下部と視床は間脳に含まれる。間脳は第三脳室を取り囲む領域である。視床下部は第三脳室の底面を形成している。視床下部は自律神経系の統合中枢である。視床下部は、飢餓、睡眠、口渇、体温、水分バランスを調節して恒常性の維持に役立っている。視床下部は下垂体をコントロールしていて、それ故に神経系と内分泌系の間のつながりを形成しているといえる。
 視床は第三脳室の側面と基部に位置している二つの塊でできている。視床は感覚情報を統合し、脳の視床以外の部分から大脳へ上行性に流れる感覚活動電位の中継基地として働いている。視床は、覚醒 や 記憶と感情といったような高次精神機能 にも関与している。
 松果体は、ホルモンであるメラトニンを産生していて、間脳内に位置している。最近、多くの関心が、メラトニンの我々の日常生活のリズムに果たしている役割に関して注がれていて、飛行機による時差ぼけや不眠症の改善に効果があるのではないかと考えられている。科学者は、メラトニンが思春期の発来に関係があるのではないかということにも関心を寄せている。
The Cerebrum 大脳

 大脳は、終脳とも呼ばれ、ヒトの脳の最前部にあり、大きな容積を占めている。ヒトの身体が左右の二つでできているように、大脳も左右の二つの部分でできている。半側のそれぞれは、左右の大脳半球と呼ばれている(Fig.12.12b)。二つの大脳半球は、脳梁内の架橋路によって接続されている。
 大脳は、1. 感覚入力の受信 と 2. 随意運動反応が発信される以前の統合の実現 を行う高次中枢である。大脳は、脳の大脳以外の部分と連絡し、脳の大脳以外の部分の活動を調節している。見てのとうり、大脳は、学習と記憶、及び言語と会話のために必要な高次思考過程も実現している。

The Reticular Formation 網様体

 網様体は、核と脳幹の全長にわたって伸びる線維の複合ネットワークである(Fig. 12.13)。この文の核とは、は中枢神経内の細胞体の塊のことを意味する。網様体は、より高次の中枢に送られる感覚シグナルと、脊髄へ発せられる運動シグナルを受け取る。
 網様体のある部分は網様体賦活系(RAS)と呼ばれ、視床から昇って大脳に達し、覚醒を促す役目をしている。網様体賦活系は、不要な感覚刺激を除去する働きをもっていて、その働きによって、我々はテレビから学習し続けることができるのである。網様体が活動していなければ、睡眠になる。網様体賦活系に重篤な傷害を受ければ、昏睡状体になる。



Figure 12.13 The reticular activating system. (脳幹-)網様体賦活系





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12.4 The Cerebral Hemispheres 大脳半球
 大脳縦裂と呼ばれる深い溝によって大脳半球は左右に分断されている。sulcus 溝(複数形: sulci) と呼ばれるによってそれぞれの半球は葉に分けられている(Fig.12.14)。前頭葉は大脳半球の前方であり、頭頂葉は大脳半球の後方である。後頭葉は頭頂葉の背側(後側)であり、側頭葉は前頭葉と頭頂葉の下方に存在する。

The Cerebral Cortex 大脳皮質

 大脳皮質は、薄いが複雑に入り組んだ灰白質の外層で、大脳半球を被っている。大脳皮質には、1,000,000,000(109=10億)以上の細胞体を含んでいて、感覚、随意運動、意識と関連した状態で行うあらゆる思考過程を行っている部位である。
 大脳皮質には、運動野と感覚野があり、連合野もある。
前頭葉の中心溝のすぐ前は主運動野である。随意運動指令は主運動野で開始され、身体の各部位は主運動野の特定の部分により支配されている。我々の多才な手は、主運動野の広範な部分を占めている。主運動野の前面には運動前野が存在する。運動前野は巧緻運動活動のための運動機能を構成して、その指令が主運動野に送られて、そこから出た信号が小脳で統合を受ける。会話するというヒトに独特の能力は、左前頭葉に位置する運動言語野である Broca(ブローカ)の領域により営まれている。Broca野から発生したシグナルは、運動前野を経由して、主運動野に達する。
 主感覚野は、中心溝のすぐ後ろ(背側)にある。皮膚や骨格筋からの感覚情報はこの部位に到達し、身体の各部の感覚は身体の順序に合わせて配列している。後頭葉の主視覚野は、眼(網膜)からの情報を受け取る。主味覚野は味覚を司っている。

Figure 12.14 The cerebral cortex 大脳皮質



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その名のとおり、連合野は細胞体が情報を統合する場所である。体性感覚連合野は主体性感覚野のすぐ後ろに存在する。この領域は皮膚や筋からの感覚情報を処理し解析する。後頭葉の視覚連合野は、新たな視覚情報と以前に受信したことのある視覚情報を関連付ける。視覚連合野は、見たものを「決定する」ことができる、例えば、顔や道具や以前に見たものなら何でも。側頭葉の聴覚連合野は、音の認識に関して、視覚連合野と同様の働きをする。前前頭野は、前頭葉の連合野であり、他の連合野からの情報を受け取り、その情報を理由付けや行動の計画に利用する。前前頭野でおこる統合は、危険と感じ適切な行動をとるという人の重要な能力の原因となっている。
 頭頂、側頭、後頭の連合野は外側溝の背側(後側)の末端で合流する。この領域は総合解釈野?(自作)と呼ばれている。それは、あらゆる感覚連合野からの情報を受け取り素早くに入力シグナルを統合して、それを前前頭野に送って迅速な反応を得られるようにするからである。ヒーローと呼ぶべき人物は、素早く状況を評価して他の者を危険な状況から救い出す行動をとる人物である(訳注: 比喩のつもりであることは自明)。


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Limbic System 辺縁系

 (大脳)辺縁系は、経路と核の複雑なネットワークであり、大脳の各葉と間脳の中間部分を組織している(Fig. 12.15)。辺縁系は高次精神機能と原始的な感情を混合してそれらの統合された全体像を形成している。辺縁系は、性行動や食事といった行動が快楽であると感じることの原因となったり、精神的ストレスにより血圧が上昇することの原因となる。
 辺縁系の二つの重要な構造は海馬と扁桃体であり、それらは学習と記憶に必要である。海馬は、前前頭葉に連合野に貯蔵されている過去の経験がもたらす警鐘を伝えるのに都合よい位置に存在している。扁桃体は、特にそういった経験を増幅することができる。前頭葉を辺縁系に含めるということは、理由付けにより我々が強烈な感情を排除して行動できるということを意味している。

大脳の灰白質は大脳皮質と核でできている。白質は経路でできている。辺縁系は脳の様々な部位の特異的な結合であり、脳の機能と感情を統合している。

White Matter 白質

 大脳の残りの大部分は白質でできている。脊髄を理解しているということは、中枢神経系の白質は長くてミエリン鞘をもつ線維でできていて経路を形成している、ということを知っているということである。主運動野から発して下位脳中枢と連絡している下行路 と 下位脳中枢から発する上行路 は、感覚情報を主体性感覚野へと送る。大脳内部の経路は、Figure 12.14 に図示したように情報を種類の異なった感覚、運動、連合野から受け取っている。前にも述べたように、脳梁(のうりょう)は、左右の大脳半球をつなぐ経路を含んでいる。
 大脳の大部分は、経路でできていて、白質の深層には皮質下核が存在する。(大脳)基底核は、主運動野より発せられる運動性活動電位の中継基地として働いている。基底核はドパミン(ドーパミンでもいい)を産生する。ドパミンは抑制性の神経伝達物質で、様々な骨格筋の活動のコントロールに役立っている。ハンチントン舞踏病やパーキンソン病は、どちらもコントロール不能な運動が特徴であるが、基底核の機能不全が原因であると考えられている。

Figure 12.15 The limbic system 辺縁系(大脳辺縁系)






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12.5 Higher Mental Function 高次精神機能

 生物学の他の分野の研究と同様に、脳の研究は検査の技術革新によって進歩してきた。神経科学者は、幅広い範囲の技術を自由自在に用いてヒトの脳を研究することができる。その中には、脳の機能を記録するための近代技術も含まれている。

Learning and Memory 学習と記憶

 脳梁により左右の大脳半球が共同して働いていることがわかるのと同様に、辺縁系により皮質領域が下位の中枢と共同で学習と記憶をもたらしているであろうことがわかる(Fig. 12.16)。記憶は、心の中に考えを保持したり、つい昨日覚えたばかりの単語から一生を形作る幼少時の情緒的な体験までにわたる過去の出来事を呼び出したりする能力である。学習は過去の記憶を保持し、利用する際におこる。

Types of Memories 記憶の型

 我々は皆、短い時間の間に7桁の電話番号を覚えようとした経験がある。我々は会話を脂溶とする際、会話の内容を脳の最前部にとどめようとする。その活動は実際正しい、というのも、短期記憶の間、前前頭野は活動しているからである。前前頭野は連合野で、前額のすぐ裏側に存在するのだ! 電話番号の中には心に焼き付いているものがある。言い方を変えれば、そういった電話番号は長期記憶になったと言える。心に焼き付いている電話番号の事を考えてみて、その番号と関連のある場所や人のことを考えずにそれを思いつくかどうか調べてみてほしい。大部分の場合は、直にその番号を引き出すことができないであろう。何故なら、長期記憶は意味記憶(数、単語など)挿話記憶(人物、出来事など)と呼ばれるような記憶の混ざり合ったものだからである。Figure 12.16 に記した長期記憶のフローチャート(流れ図)には、二組の矢印がある。ひとつは意味記憶に対応するもので、もうひとつは出来事記憶に対応するものである。脳損傷により、人によってはある型(意味/出来事)の記憶能力が損傷しつつ、もう一方の記憶は存続するといったことがある。出来事記憶が機能しなくても、変換して記憶を維持することができる。しかし、最近の出来事に対する記憶は思い出すことができなくなる。もしも、そういった記憶機能に障害がある人に話しかけて部屋を去れば、部屋に戻った時には忘れられているのだ!
 技能記憶は、出来事記憶に依存して存在するもう一つの型の記憶である。技能記憶とは、自転車に乗るだとかアイスホッケーをするだとかいったような筋の運動をすることができるようになることである。最初に技能を覚える時点では、技能が完成する時点と比較して、大脳皮質の運動野がより多く関与している。言い方を変えれば、技能を学ぶ際に当初は自分が何をしているのか考える必要があるのが、後になって行動は自動的になるということである。このことは、前主運動野は意識下で主運動野と連絡することができるということである。

Memory Storage and Retrieval 記憶の貯蔵と回復

 記憶障害を回復できるための最初の段階は、何かを思い出す際に脳のどの部分が活動しているかを知ることである。研究者はそういった作業を実に上手にこなす。海馬は海馬(seahorse→タツノオトシゴ/セイウチ/ジュゴン)のような形状をした構造で、側頭葉の深部に存在していて、記憶が貯蔵される感覚連合野 と 記憶が利用される前前頭野 への架橋を渡せる特異的な場所に存在する。前前頭野は、記憶が貯蔵される際と貯蔵された記憶が精神へ運ばれる際 に海馬と連絡する。ある種の記憶が非常に情緒的に記憶されるのは何故であろうか? 扁桃体は怖れの状態の原因であり、危険 を 1. 間脳 と 2. 皮質感覚野 の両方から受ける感覚刺激 と関連付けていると考えられている。
 我々の長期記憶は、大脳皮質の感覚連合野全体に断片として貯蔵されている。視覚情報は視覚連合野に貯蔵され、音情報は聴覚連合野に貯蔵される云々(うんぬん)。海馬は感覚情報を集めて、Uncle Frank や 夏休み の事を思い出す際に前前頭皮質で利用できるようにする。そして、扁桃体は情緒的なニュアンスを記憶に加える。

Long-Term Potentiation 長期相乗作用

 脳の様々な部位の記憶に関する機能を知ることは役に立つ一方で、精神疾患(障害)を治療するための重要な手段として細胞レベルで記憶を理解するということがある。
(段落は次頁へ継続)


Figure 12.16 Memory circuits. 記憶回路

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Figure 12.17 Language and Speech. 言語と会話



長期相乗作用(LTP)は海馬内でのシナプスにおける増強反応である。LTPはおそらく、記憶の貯蔵に必要であるだろうが、厄介なことに、LTPはときにシナプス後ニューロンを強く興奮させて、細胞死の形態の一つであるアポプトーシスをおこさせることがある。この現象は興奮毒性と呼ばれ、突然変位が原因で発生する。(長く生きればそれだけあらゆる特異的な変位が発生しやすくなるということである。) 興奮毒性は神経伝達物質であり海馬で活性の高いグルタミン酸の作用が原因でおこる。グルタミン酸がシナプス後膜の特異的な型の受容体と結合すると、カルシウム(Ca++)が急速に移動し、その影響で細胞が死に至る。海馬内の脳細胞が徐々に消失することは、アルツハイマー病(AD(って常染色体優性と紛らわしくない?))の基礎病変となる。
 アルツハイマー病は、徐々におこる記憶の消失が特徴であり、最終的にあらゆる日常生活動作が不可能になる。人格の変化がアルツハイマー病の発生の合図となる。健常な50〜60歳の高齢者が数年来遇っていない友人の名前を忘れることは日常的にある。しかしながら、アルツハイマー病の患者は、毎日行き来する隣人の名前すら忘れるのだ。時と共に、患者は道を探すのも困難になり、簡単なお使いすらできなくなってしまう。アルツハイマー病の患者は混乱して同じ質問を何度も繰り返すようになる。精神障害の他の徴候がやがてあらわれて、患者は徐々に病床に伏しがちにり、肺炎のような合併症が原因で死に至る。
 アルツハイマー病患者のニューロンには、核を取り巻く神経原線維変化(線維性タンパクの束)、軸索の枝の周囲にタンパクに富んだアミロイドプラークと呼ばれる蓄積物がかぶさっている。興奮毒性がどのようにして放出されてアルツハイマー病のニューロンの構造変化を形成するかに関しては未知であるが、研究者の中には、グルタミン酸による傷害から脳細胞を護ることのできる神経保護薬を開発しようとしている人たちがいる。ある型の神経保護薬はグルタミン酸受容体をブロック(閉塞)し、その作用によってカルシウムイオンの流入と興奮毒性を防ぐことができる。
Language and Speech 言語と会話

 言語は明らかに意味記憶に依存したものである。そのため、脳の何がしかの同一の領域(野)が記憶と言語に関与していると想像することができる。単語を見ることと聞くことは、それぞれ後頭葉と側頭葉で行われている。そして、単語の製造と発声は前頭葉の運動中枢で行われている(Fig. 12.17)。
 発語障害の患者を調べることで、ブローカ野(ブローカの言語野)と呼ばれる運動言語野の損傷によって発語の機能障害が生じるようになることが既に知られている。ブローカ野は発語筋(唇、舌、喉頭など)の主運動領域のすぐ前側に位置する。ウェルニッケ野と呼ばれる側頭葉の感覚言語野の損傷によって、会話の理解に機能障害が生じる。あらゆる脳の様々な領域の間の経路の途絶によって、周囲の理解と正しく会話することが著しく障害されるだろう。実際、下位中枢の損傷、特に視床の損傷によっても発語障害が生じることがある。視床は感覚情報を伝えており、大脳皮質が必要な感覚入力を受け取ることができなくなれば運動野は適切な出力(発語)を組み立てることができなくなるということを覚えたい。
 ある興味深い言語と会話とはそれた話題として、左脳と右脳は異なった機能をもっているという認識がある。左大脳半球にはブローカ野とウェルニッケ野が存在するが、右大脳半球には存在しない。実際、左大脳半球は通常、言語機能に関して強い役割を果たしていて、会話機能にはそれ程役立っていない。(page 265)1940年代初頭に行われた癲癇(てんかん)の治療の試みの中には、脳梁を外科的に切断するというものがあった。後の研究によって、脳の分断を受けた患者は、物体に対する名前付けを左大脳半球で視認した場合にのみ行えることがわかった。物体が右大脳半球のみで視認されれば、脳の分断を受けた患者は特定の目的にあった物体を選ぶことができても名前付けをすることができない。上記のような研究や様々な研究によって、以下の行のような良く知られている左脳と右脳を対照する概念が導かれた。

Left Hemisphere
左大脳半球
Right Hemisphere
右大脳半球
Verbal
言語に関する
Nonverbal, visuo-spatial
言語とは関係ない、空間認識
Logical, analytical
論理的、分析的
Intuitive
直感的な
Rational
理性的な
Creative
創造的な

 更に、人物によってそれぞれ一側の優位半球があり、人格特質を構成する要素となっているという考えが一般的になっている。しかしながら、最近の研究により、左右の大脳半球が同一の情報を別個に処理しているという学説がある。右半球はより包括的で、その一方で左半球はアプローチが具体的であるというのである。
記憶に関して、行動、構造レベル、細胞レベルといった様々なレベルで研究されている。細胞レベルでの記憶に関する知識は、精神疾患に対する治療に役立つだろう。言語は記憶に依存している。左大脳半球の特別の領域は会話の理解と発語の能力に役立っている。



12.6 Homeostasis 恒常性

 神経系と内分泌系は身体の中の他の系の機能を調節している。内蔵の支配 と 血液と組織液の組成の調節 は、通常、無意識に行われる。無意識の支配は、視床下部と延髄の反射が原因でおこっている。視床下部と延髄は自律神経系を用いて、心拍数、血管収縮、呼吸数といった重要なパラメーターを調節している。心血管系は、弛緩した状態と比較して「ヤル か ズラカル か」の状況下でより強力に働いて酸素を骨格筋に運ぶ。 264頁には、どのようにして神経系が身体の他の系とともに働いて恒常性を維持しているかを述べている。視床下部は内分泌系と密接に関わって働いたり、血液の浸透圧の調節に役立つホルモンであるADHを産生している。 腎臓はホルモンによる支配を受けていて、血液の食塩と水分のバランスを調節している。血液の浸透圧が著しく低下すると、組織内に組織液が増加し、リンパ系が排出できないくらいの量に達する。
 随意運動は直感的には恒常性に役立っていないように思えるが、実際には、いつも行動が可能な限り適度な状態に保たれるように調節している。随意的な調節がなければ、極限状態で恒常性を維持できるか神経系の能力を試すことになってしまう。



12.7 Drug Abuse 薬物濫用(乱用)

 多様な薬物を気分や感情の状態を変える目的でに用いることができる(Appendix D 参照)。神経系に作用する薬物には二つの大きな作用がある。(1) 辺縁系への作用 と (2) 特定の神経伝達物質の作用の促進や抑制である(Fig. 12.18)。刺激物質は神経の興奮の頻度を上昇させ、抑制物質は興奮の頻度を減少させる。以前にも増して、研究者は、脳内の神経伝達物質であるドパミンが、気分に主に関わっていると考えるようになっている。コカインは、ドパミンの効果をドパミンのシナプス間隙での吸収を阻害することで増強することが知られている。薬物常用、精神疾患への対抗を目的として開発された多くの新薬が、ドパミンの放出、受容、分解等の作用をする。
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 薬物乱用は、一定量の薬物を服用して、有害な作用のある活動電位を上昇させるような状態で明らかになる。薬物乱用者は、薬物に対する精神上/身体上の依存性の両者かどちらかを有する。依存性は、薬物に対しての思考時間や服用までの用意の時間が長かったり、しばしば指示された量より多く服用することが原因で形成される。以前は薬物常用と呼ばれていた身体依存性があると、薬物に耐性があるということになる。つまり、同様の効果を得るために薬用量を増やさなければならず、服用を中止すると禁断症状が出るのである。

神経系に作用する薬物は身体依存性と禁断症状をおこす。


Figure 12.18 Drug action at synapse シナプスでの薬物の作用
Alcohol アルコール

 アルコールは、抑制性伝達物質であるGABA(ギャバ/ガバ, γアミノ酪酸) や 興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸 の作用に影響を及ぼすことがある。アルコールは、一旦吸収されると、主に肝臓で代謝される。そうすると、肝臓では通常の活動が制限され、脂肪の分解ができなくなる。脂肪の蓄積は、肝臓の退行性病変の最初の段階であり、たった一晩の深酒(ふかざけ)が原因となるのである。深酒が続けば、退行性病変の第二段階として線維性の瘢痕組織が出現する。この段階では、深酒を停止すれば、肝臓は回復して正常な状態になることが可能である。深酒を停止しなければ、最終段階の病変であり回復不能な肝硬変になる。肝細胞は死亡し、硬化し、オレンジ色に変化する(cirrhosis の意味はオレンジ)。
 アルコールは身体の中で、エネルギー源として用いられるが、アルコール(飲料)は、身体を健康に保つために必要な、ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸、脂肪酸を欠いている。多くのアルコール中毒患者は、低栄養で栄養障害だけが原因で病気になることがある。
 外科医は、通常、妊婦のアルコール服用を厳禁している。アルコールは胎盤を自由に通過することができ、精神遅滞や様々な身体奇形を特徴とする胎児アルコール症候群の原因となるからである。

Nicotine ニコチン

 ニコチンは、タバコ由来のアルカロイドで、神経学分野の薬物として幅広く利用されている。(紙巻)タバコを吸えば、ニコチンは迅速に中枢神経系と末梢神経系に分布する。中枢神経系では、ニコチンにより以前に述べた神経伝達物質であるドパミンの放出が行われる。ドパミンの過剰は、ニコチンへの依存を増強する効果がある。末梢神経系では、ニコチンはアセチルコリンの作用するのと同じシナプス後受容体を刺激し、骨格筋の活動を上昇させる。ニコチンは、心拍数と血圧の増加や、消化管運動の促進作用もある。
 紙巻タバコや葉巻を吸う人の多くが禁煙を断念するのに困難を感じる原因は、ニコチンには身体と精神の両方の依存性があるからである。禁断症状として、頭痛、胃痛、いらいら(過敏性亢進)、不眠がある。タバコはニコチンだけでなく、他の多くの有害な物質も含んでいる。喫煙は、癌による寿命よりも早い死亡の原因となり、その癌には肺癌だけでなく、喉頭、舌、膵臓、膀胱もが含まれている。現在では、女性も男性と同様に喫煙するようになり、女性の癌死の原因の中で肺癌が乳癌を上回っている。性的に活発である若い女性の喫煙は、妊娠の際に、ニコチンが他の向精神薬と同様に胚や胎児の発育に悪影響を及ぼすことから大変好ましくない。
Cocaine コカイン

 コカインは、学名 Erythroxylum coca の低木由来のアルカノイドである。コカインは粉末状で販売されていて、より強力な抽出物がクラックである(Fig. 12.19)。コカインはドパミンのシナプスでの吸収を阻害し、このことが原因でコカインを摂取するとブッ飛ぶような感覚を経験するのである。ドパミンのエピネフリン様作用により、ブッ飛び体験後に暫く続く覚醒状態が発生する。
 コカインの悦楽は数日間続くことがあり、その後、崩壊がおとずれる。悦楽の期間は、使用者は活動性が亢進し、食物や睡眠に対する欲求が低下し、セックスの愉悦がいつもよりも良くなる。崩壊の時期になると、使用者は、疲労し、抑うつ状態になり、いらいらし、記憶や集中障害が生じ、性欲が皆無になる。その際、男性はしばしば実際にインポテンスになる。
 コカインの使用が続けば、身体はドパミンの過剰な放出に見合うだけの十分なドパミンを産生することができなくなる。コカイン使用者は、ドパミンが不足するようになると、耐性や、禁断症状が出現し、コカインに対する激しい欲求を感じるようになる。これらは、使用者が薬物に高度に依存していることを示し、別の言い方をすれば、コカインは非常に習慣性の強い薬物であるということである。コカインの大量の服用は、発作や心停止、呼吸停止の原因となる。(page 267) コカインを長期間服用すると、脳障害を発生することがある。コカイン常用者から産まれた児は禁断症状を呈し、神経学的障害や発育障害を生じる。

Heroin ヘロイン

 ヘロインは、アヘンアルカロイドであるモルヒネの誘導体である。ヘロインを静脈内に注射すると、鎮痛作用に伴って多幸感が3〜6分後に生じる。副作用には、嘔気(おうき)、嘔吐(おうと)、気分不快、死に至る循環機能低下がある。
 ヘロインは、痛覚を消し精神安定作用を生じる特殊な神経伝達物質であるエンドルフィンの受容体に結合する。時間とともに、身体のエンドルフィン産生は低下する。耐性が生じ、使用者が禁断症状を呈しないためにヘロインを更に求めるようになる。中毒になる以前には注射することで得られた多幸感を感じることがなくなる。
 ヘロインの禁断症状には、発汗、瞳孔の散大、振戦(しんせん)、不隠、腹腔痙攣、鳥肌、排便、嘔吐、収縮期血圧の上昇と、呼吸数の増加がある。依存性が高い使用者は、痙攣(けいれん)、呼吸不全、死を経験する。身体依存をもつ女性から産まれた乳児も母体と同様に禁断症状を呈する。
Marijuana マリファナ、大麻

 インドの麻科の植物である Cannabis sativa のドライフラワーの花、葉、幹はTHC(テトラヒドロカナビノール)を豊富に含んだ樹脂を内部や表面にもっている。cannabis と marijuana の名前は、植物とTHCの一方に対応している。通常、マリファナはジョイントと呼ばれる紙巻タバコの形体で吸われる。
 頻繁でない使用者は、空間と時間のゆがみを生じる視覚と判断の変化を伴った緩い多幸感を得ると報告している。理路整然とした会話の不能を含んだ運動の協調の消失がおこる。過度に使用すれば、幻覚、不安、抑うつ、観念奔逸、身体同一障害、妄想反応、精神病類似症状が生じる。cannabis psychosis と cannabis delirium の語はそういった反応に対応している。
 最近、研究者はマリファナは、生体内に通常存在する物質であるアナンダマイド(辞書にでてない)の受容体と結合することを発見した。マリファナを常用すれば、マリファナに対する切望と停止することに対する困難が生じる。学者の中には、マリファナを長期間使用することで脳障害があると考えている者たちがいる。胎児アルコール症候群に類似した胎児大麻症候群が報告されている。心理学者(ps.精神科医は psychiatrist)の中には、青年期(思春期)のマリファナの使用と青年期に発生する人格障害との関連を論じている者たちがいる。
Methamphetamine (Ice) メタンフェタミン

 メタンフェタミン(メタアンフェタミン)は、アンフェタミンと関連のある物質で、良く知られた刺激剤である。メタンフェタミンとアンフェタミンはどちらも乱用の対象となる薬物である時期があった。しかし、メタアンフェタミンの新しい形態である「アイス」として知られている薬剤はコカインに代わる物質として今日使用されいる。アイスは純粋な塩酸塩の結晶で、シート状の結晶の外観をもっている。コカインと違って、アイスは合衆国内の実験室で不法に生産され、輸入する必要がない。
 アイスは、クラックと同様に、静脈注射による合併症を防ぐ目的で、パイプから吸入したり、ふかして吸うこともできる。血流に急速に流入すると、アイスは迅速に脳に達する。アイスは、コカインと同様の作用をもち、文献は静脈内注射の後でのコカインとアイスの作用を区別することはできないと報告している。しかしながら、メタンフェタミンの効果は数時間持続し、コカインの数秒とは異なる。それ故、乱用薬物愛好家の多くはコカインよりもアイスを選んでいる。

 神経学的薬剤は、身体のもつ神経伝達物質の作用を増強させるか減弱させる。



ダメ。ゼッタイ。
Figure 12.19








ダメ。ゼッタイ。
画像から
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リンクしています。
ゼッタイにダメなのだ。
じゃなくてすごく良いページです。
お薦めです。
見ましょう、是非。
ダメ。ゼッタイな 加藤 あい。
ダメ。ゼッタイ。



Chapter 12, Nervous System

♪ Defeat from Galaxy Force II