週間情報通信ニュースインデックスno.1499 2025/10/25


1.オンラインの本人確認が厳格化、券面撮影など原則廃止へ iPhoneでの確認は時期尚早 (10.22 日経XTEC)
政府は携帯電話や金融口座の不正入手を防ぐため、オンラインでの本人確認の方法を相次ぎ厳格化する。「iPhoneのマイナンバーカード」といったスマートフォンで本人確認ができる選択肢が増えた一方、普及にはまだ時間がかかるため、企業にとっては戦略的な対応が必要となりそうだ。

 携帯電話不正利用防止法では2026年4月から、非対面のオンライン上で契約する際、本人の容貌と免許証やマイナンバーカードの券面を撮影したり、本人確認書類の写しを送付させたりする本人確認の方法を原則廃止する。同様に、金融機関に顧客の本人確認などを義務付ける犯罪収益移転防止法(犯収法)も、2027年4月から本人確認の書類の画像や写しを送信させる方法を原則廃止する。

 いずれも廃止の理由は、精巧に偽造された本人確認の書類が出回っているためだ。偽造された本人確認の書類によって不正に入手した携帯電話や金融機関の口座を用いた特殊詐欺が後を絶たない実態がある。非対面のオンラインでは、マイナンバーカードや免許証、在留カードなどの券面情報をICチップで読み取るか、マイナンバーカードに搭載した電子証明書を利用する公的個人認証(JPKI)やスマートフォンでの本人確認機能を使うしかなくなる。

2.「AIによる失業」を恐れていない日本人、先進国では異例の楽観視の謎 (10.24 日経XTEC)
急速に進化するAI(人工知能)によって、我々の仕事がなくなってしまうのではないか――。多くの日本人が、そうした懸念を実は「抱いていない」ことが日経BPの独自調査で明らかになった。海外の調査と比較すると、日本人のAIに対する楽観的な姿勢は、先進国では異例である。

 実はこの調査では、AIの活用実態に加えて、AIに関する「意識調査」も行っている。果たして日本で働く人々は、AIのことを「脅威」だと感じているのか、人間の知能を大きく上回るAGI(汎用人工知能)がいつごろ実現すると考えているのか。そんな正解のない問いについても聞いたのだが、その結果がすこぶる興味深かったのだ。

 目立ったのはAIに対する楽観的な姿勢だ。「AIは人類の脅威となる」との設問に対して、「強くそう思う」としたのは回答者の5.5%、「そう思う」としたのは18.8%だった。一方「そう思わない」は30.4%、「全くそう思わない」は13.9%だった。AIを人類の脅威だと思っていない割合の合計は44.3%で、脅威だと思う合計の24.3%を大きく上回った。

 「AIによって自分自身の仕事がなくなる」との設問については、「強くそう思う」はわずか3.2%で、「そう思う」も12.1%に過ぎなかった。「そう思わない」は35.9%、「全くそう思わない」は17.7%であり、合計で53.6%。つまりは回答者の過半数がAIによって自分の仕事がなくなるとは思っていなかった。

 結果を見ると、役職が上がるほど楽観度が増すことが分かった。「AIによって自分自身の仕事がなくなる」との設問に対して「強くそう思う」「そう思う」と回答した合計の割合は、「経営層」が5.7%、「本部長、部長クラス」が10.6%、「課長クラス」が14.0%であり、全体の15.2%(注)に比べて低かったのに対して、「係長・主任、一般、専門職」では20.6%と全体よりも高かった。

 実は海外の調査と比較すると、日本人のAIに対する楽観的な姿勢は先進国の中で異例であることが分かった。ロイター通信が調査会社の米Ipsos(イプソス)と共同で2025年8月に米国人を対象に実施した世論調査によれば、「AIによって多くの人が職を失うだろうか」との設問に対して、71%が「心配している」と答えたという。

 AGIについて「2029年までに実現する」という回答者は全体の18.8%、「2030年代に実現する」は40.1%、「2040年代に実現する」は11.8%、「2050年以降に実現する」は6.7%、「実現しない」は6.7%だった。実に全体の6割弱がこれから15年の間にAGIが実現すると考えていたのだ。

 日本がAI開発競争で後塵(こうじん)を拝している状況の中で、日本人はなぜAIに対して楽観的なのか。その理由の探求は、我々メディアにとって興味深いテーマになりそうだ。

3.フォーティネットがSSL-VPNを2026年5月に廃止、テレワーク環境の見直し急務 (10.24 日経XTEC)
テレワークなどの目的で多くの国内企業が利用する技術「SSL-VPN」が2026年5月以降、危険にさらされる恐れがある。米Fortinet(フォーティネット)が同社製VPN(仮想私設網)装置で提供してきたSSL-VPNの技術サポートを終了(EoES:End of Engineering Support)するためだ。

 日本法人のフォーティネットジャパンが2025年10月7日に開いた顧客企業及び販売パートナー向けウェビナーで明らかにした。フォーティネットはセキュリティー製品用OS「FortiOS」のうち、SSL-VPNを利用できるバージョンの技術サポートを2026年5月に終了する。同社が2025年4月に公開したFortiOSの最新版は、SSL-VPNを搭載していない。

 技術サポート終了まであとわずか。直前になって移行を検討し始めても間に合わない可能性が高い。同社のVPN装置でSSL-VPNを利用する企業や組織は、早急な対処が求められる。

 SSL-VPNには、企業が運用するファイアウオールの設定を変更しなくても利用できることが多いといった特徴がある。使い勝手の良さが支持を集め、主にリモートアクセス用途で多くの企業や組織に広まった。

 そんなSSL-VPNをなぜやめるのか。フォーティネットジャパンの今井大輔マーケティング本部プロダクトマーケティングマネージャーは「最近はデメリットのほうが目立つようになった」と話す。

 デメリットとは、近年に脆弱性が頻発していることだ。2024〜2025年にフォーティネットが公表したSSL-VPNの脆弱性は、CVSS(共通脆弱性評価システム)における「High(重要)」と「Critical(緊急)」の合計で6件あった。同じ期間、別のVPN技術であるIPsec(アイピーセック)は1件だった。脆弱性を修正するためのパッチを適用する回数が増え、ユーザーの運用負荷が高まっているとする。

4.AIへの幻想を打ち壊す、価値創出の鍵 「PoCの壁」を越え成果につなげる要諦とは(10.24 日経XTEC)
AIを導入するだけでは成果は得られません AIを前提とした業務プロセス全体の再設計が肝要です  皆さんの会社では、P/L(損益計算書)にインパクトを与えるような成果をAIで出せていますか。AI活用に挑戦したものの、PoCを行ってもなかなか本格的な効果創出に至らない、いわゆる「PoCの壁」を越えられないというケースは珍しくありません。その理由はシンプルで、「AIを導入するだけではコストは減らない」からです。当社でも、自社開発の生成AIチャット/ナレッジ検索ツールなどを本格導入し、約1万人に対し月平均4時間の作業時間を削減しました。しかし、現段階ではその効果は机上の試算に過ぎず、実際のコスト削減はまだ途上にあります。

 AIは、何でも叶えてくれる魔法の杖ではなく、高性能なエンジンのようなものです。存分に性能を発揮できる環境(業務プロセス)が適切にデザインされ、明確な目的地(KPI)があってこそ、はじめて成果を出せるのです。真の成果創出に向けた私たちの取り組みをご紹介します。

 現在、NTTデータグループでは、「Quality Growth」の実現を目指しています。これは、顧客への提供価値を最大化し、持続的な成長と両立する「質の伴った成長」を意味します。そのために、既存の主力事業に加えて、「Digital&Experiences」「Next-Gen Infra」「Agentic AI」の3点を新たな注力領域として定めました。この中でも、今回特に強調したいのがAgentic AIです。

 そうした取り組みの肝となるのが、利用者の指示に応じてAIエージェントが自律的に業務タスクを実行する「Smart AI Agent」です。これをオフィスワーカーのあらゆる業務シーンに業界横断で提供することで、お客様や当社のビジネス変革を進めていきます。

 東京ガス様では、AIを前提とした未来像からマーケティング業務を再設計しました。どの業務に、どうAIを使えば便利になるか議論した上で、新たなマーケティング施策アプリを開発しました。これにより現場の作業時間を短縮できたほか、さらに改善を進め、売り上げ拡大につなげることを目指されています。

 PoCの壁を越えて真の成果を創出するための分水嶺となるのが、「目的の差」「範囲の差」「時間再投資の差」の3点です。単なる生産性向上を目的としたAI活用では、ROI(投資対効果)は良くなりません。売り上げやコストなど、P/Lに直結するKPIをゴールとすべきです。また、個別業務の自動化にとどまるのではなく、点から面へと範囲を広げることが重要です。加えて、AIによって捻出できた時間は、新たな挑戦や高付加価値業務へと再投資する必要があります。これが会議や休憩で潰れてしまったのでは意味がありません。既存業務にAIを適用するのではなく、AIで業務プロセス自体を再設計することが成功の鍵なのです。

5.ソフトバンクとシスコが連携、「All optical network」を全国メトロネットワークに展開(10.23 日経XTEC)
ソフトバンクとシスコシステムズは2025年10月23日、両社が連携し、光電変換が必要ない光伝送技術で通信ネットワークを省電力化する「All optical network」を全国のメトロネットワークに展開すると発表した。メトロネットワークとは、コアネットワークとアクセスネットワークを接続するネットワークを指す。第1弾として、2025年9月に初期エリアである大阪府への展開を終えた。

 基本的に、通信は受け取った光信号を電気信号に変換し、電気信号を処理した上で、光に戻して伝送する光電変換が必要になる。変換過程で大きな電力が求められる。光電変換不要な技術で消費電力を抑制することで、AI(人工知能)などで急増する電力消費を削減する。具体的には、ソフトバンクが利用するメトロネットワークの従来構成と比較すると、消費電力を9割ほど削減できるという。

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