1.日本の「AI国力」がわずか2年で4位から9位に転落、韓国やUAEに抜かれた要因(9.12 日経XTEC)
米スタンフォード大学が調査したAI(人工知能)国力のランキングで世界9位にとどまる日本。実は2年前まで、日本はAI国力4位を維持し続けていた。最新のランキングで日本を追い抜いたアラブ首長国連邦(UAE)や韓国との比較から、低迷の要因を分析した。
まずペロー氏が指摘したのは、2017年から始まった世界AI活発度ランキングにおいて、日本が2019年から2021年までAI国力で世界4位を維持していたという事実である。2021年のランキングでは1位は米国、2位は中国、3位は英国で、4位が日本だった。
しかし2022年、日本はインドに抜かれて5位に順位を落とす。そして最新のランキングである2023年には、日本はUAE(5位)、フランス(6位)、韓国(7位)、ドイツ(8位)に追い抜かれ、一気に9位まで順位を落としている。
2022年から2023年にかけて日本がどの分野で他国に差をつけられたのか。ペロー氏は日本を追い抜いたUAE、韓国、フランスの3国と比較する資料を筆者に示してくれた。
まず筆者が気になったのは研究開発だ。日本は既に2022年から研究開発で韓国に後れを取っており、2023年もリードを許している。
研究開発は、各国の「AI論文数」や「AI論文引用数」「AI特許数」「注目すべき機械学習モデル数」「産学連携モデル開発度」「基盤モデル数」「GitHubプロジェクト数」などの指標で構成する。AI論文数では日本と韓国はほぼ同じだが、AI論文引用数で韓国は日本を上回っている。またAI特許数や基盤モデル数などでも、韓国は日本を上回る。
先進国の企業はAIについて「自身のビジネスを脅かす」「既存の雇用を奪う」として、ネガティブに捉えがちであるのに対して、先進国以外の国や地域では、企業がAIに対してより楽観的で、自社のビジネスを成長させることを期待して、AI投資にも積極的な傾向があるのだという。
もし日本企業がこのままAIに対して消極的な姿勢を維持し続ければ、AIに対して楽観的である他の国々に、AI国力で次々追い越される恐れがあるということだ。日本企業はこのままでいいのか。現在のAI国力ランキングは、そう問いかけている。
2.「6Gは初期から幅広い用途に対応できる構造に」、Ericssonが提言(8.27 日経XTEC)
スウェーデンEricssonは、大規模IoT(モノのインターネット)からeMBB(拡張モバイルブロードバンド)まで、すべてのサービスを1つの6G(第6世代移動通信システム)で実現する方法について、自社のブログで解説した。
5Gでは、RedCap (Reduced Capability) 機能などが後付けされた結果、構造が複雑になり、市場への投入も遅れたとし、6Gでは最初から幅広い用途に対応できる構造を目指すべきだとしている。
ローエンド向けには、5MHzの帯域幅、1つの受信アンテナ、半二重FDD(周波数分割複信)をサポートすることで、複雑さを排除しながら多くの用途に対応できるとしている。ハイエンド向けには、より広域な帯域幅への高速アクセスを可能にするキャリアアグリゲーション、上りと下りリンクの分離、さらに大規模で高機能化したMIMO(Multiple Input Multiple Output)などへのサポートを挙げている。
3.経営者が積極活用するITツール、ついに登場 だけど現場のDX担当者は泣いている(9.8 日経XTEC)
久しぶりに「なるほど!」と思う話を聞いた。ある大手製造業の役員によると、「日本企業において現場の人よりも経営者や役員のほうが積極的に活用するITツールがついに登場した」とのことだ。そのITツールは何かというと、生成AI(人工知能)だ。恐らく、読者の多くは私同様「なるほど!」と膝を打ったと思うぞ。その製造業の役員によると、社長やCFO(最高財務責任者)が最も使い込んでおり、事業部門長クラスの役員も結構使っているとのことだ。
そもそも、日本企業の経営者が積極的に生成AIを使って皆ハッピーなら、この「極言暴論」で取り上げるわけがない。正統派コラムの位置付けで書いている私のもう1つのコラム「極言正論」のほうで記事にすることになっただろう。もちろん、いい話も聞く。例えば経営者が生成AIを活用するようになって、IT/デジタルにこれまで以上に関心を持つようになったといった類いの話だ。だけど、私の聞いた範囲では部下たち、中でも現場のDX担当者らの嘆きの声が数多く聞こえてきているぞ。
何でそんなことになってしまうのかについて、順に説明していこう。ただ、経営者が生成AIに夢中になることについては、それほど説明する必要はないだろう。経営者だけでなく、財務会計やマーケティングの担当者、そして技術者や研究者、私のような記者など何らかの知的労働に携わる者にとって、圧倒的知識量を持つ生成AIほど「有能なアシスタント」はいないからだ。ハルシネーション(幻覚)が心配だが、それは人間でも同じこと。生成AIの「勘違い」に注意を怠らず「相談相手」として活用すればよい。
そして問題はここからだ。この手の経営者にとってAIとは、チャット形式で答えてくれる生成AIでしかない。例えばAIエージェントのことなど思いも及ばないだろう。言うまでもなく、AIエージェントは人に代わって業務を遂行する自律的なAIシステムのこと。これをどう活用するかで企業の将来は決まるといった代物だ。もちろん、その導入はDXの一環として進めなければならない。業務プロセスなどを抜本的に見直した上で、どの業務を人からAIエージェントに置き換えるかを検討しなければならないからだ。
4.理研、スパコン「富岳」の基幹ネットワークを刷新 可用性向上と運用コスト減を両立(9.9 日経XTEC)
理化学研究所はスーパーコンピューター「富岳」の基幹ネットワークを刷新。外部接続の帯域を従来の100Gbpsから1.2Tbpsへ増強し、冗長性も確保。運用の内製化や調達機器の汎用品への変更などで、運用コストも抑えた。
理化学研究所は、スーパーコンピューター「富岳」と他の研究機関などとを結ぶ基幹ネットワークを刷新した。3本の光ファイバー回線を使い、国立情報学研究所(NII)の「SINET(学術情報ネットワーク)」と1.2Tbps(ビット/秒)で接続している。大規模シミュレーションなどで発生する大容量のデータも支障なく送受信できるという。高速回線で接続することで、研究機関はもちろん、AI(人工知能)開発など産業分野での「富岳」の利用を促している。
現行のネットワークに切り替える以前は、「ピーク時間帯に混雑して通信に時間がかかる」など様々な課題を抱えていた。一連の課題を克服するためにネットワークを刷新し、帯域を増強するとともに冗長構成を採用して耐障害性も高めた。
5.「メインフレームは終わらない」、AIの電力消費問題を逆手に攻めるIBM(9.11 日経XTEC)
マルチクラウドやハイブリッドクラウドのシステム環境を支える「中間層」のソフトウエアの充実に注力するIBM。一方、近年ではクラウド業界の勢いに押され「終わった」システムのように思われているメインフレームに対しても、同社は投資を続ける。同社にとってメインフレームは、今も金融をはじめとするインフラ産業の心臓部を支える、まだまだ「終わらない」重要なシステムという位置付けだ。
メインフレームは終わらない――。その言葉が示す通り、IBMは2025年4月に新機種「z17」を発表。併せてこれまでと同様に、3世代先までの製品開発のロードマップを示してみせた。2025年4〜6月の決算発表でも、z17は同年6月の出荷開始以降好調だとしている。
アイ・ティ・アール(ITR)の入谷光浩シニア・アナリストもメインフレームの重要性について「米国でAI(人工知能)がトリガーとなってオンプレミスが話題になっている。AIのリソースをどう確保するかが課題に挙がっているからだ」と述べる。
生成AIの普及を受けてメインフレームが再び注目を集めている背景の1つに、AIと電力を巡る問題がある。「これからのIT全体の課題としてアキレス腱(けん)が電力になるだろう」(IBMワールドワイド・システム事業開発の朝海孝バイス・プレジデント)。生成AIの高度化で処理するデータが無尽蔵に膨らむと、プロセッサーやストレージなどの消費電力も増えていき、家庭やIT以外の産業で利用できる電力を圧迫していく恐れがあるからだ。
IBMはこうしたAIによる電力消費の問題を逆手に取る形で、メインフレームの優位性をアピールする。IBMのフェローでメインフレーム担当の副社長兼CTO(最高技術責任者)のケビン・ストゥードリー氏はメインフレームによって消費電力を抑制した事例として米Citi(シティ)グループを挙げ、「x86サーバーからメインフレームに置き換え、サーバー全体の消費電力や設置面積を大きく減らせた」としている。
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