1.中学生がPythonを学べば生涯収入が5000万円増、ChatGPTが示した計算の根拠(7.4 日経XTEC)
先日、「13歳からのPython超入門」という書籍を出版した。「13歳からの」と付けているのは、中学生以上の読者を想定しているという意味だ。上限はないので、Pythonに興味がある大人の読者に読んでもらっても一向にかまわない。
近ごろは英語だけでなくプログラミングも小学生のうちから学ぶようになってきた。小学生向けのプログラミング環境としてよく使われているのが「Scratch」だ。様々な機能を持つブロックをドラッグ・アンド・ドロップで組み合わせることでプログラムを作成できる。
子供に幸せになってほしいのはどの親も同じ。幸せかどうかはお金だけが決めるわけではないが、「お金で苦労してほしくない」というのは共通した願いだろう。下世話な話ではあるが、子供がPythonを学ぶことで収入がどれくらい変わってくるのかに興味がある親もいるはずだ。
そこで、対話型AI(人工知能)サービス「ChatGPT」に「Pythonが分かる中学生と分からない中学生とでは生涯収入はどれくらいの差になると思いますか」と尋ねてみた。
この質問に対してChatGPTの出した答えが「約5000万円」である。中学生がPythonを学べば生涯収入が5000万円増えるというのだ。計算の根拠も示してくれた。正直にいって、ここまではっきりと金額を提示するとは思わなかった。
ChatGPTによると、Pythonが分かる中学生は「伸びる道を早く知っている」ことになるという。それを生かせば数億円の生涯収入の差が出る可能性がある。重要なのは継続だ。Pythonに少しでも興味を持ったなら、楽しく学習を続けていってほしいと思っている。
2.米企業の約9割が「AI導入には5Gが必要」、Ericsson調査(6.17 日経XTEC)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は、米国企業における調査結果をまとめた年次リポート「U.S. State of Enterprise Connectivity Report」を発表した。技術関連の意思決定者1000人へのアンケートを基にまとめた。
5G(第5世代移動通信システム)については、社内でのAI(人工知能)活用が進むにつれ、5G導入の必要性を認識したとする回答が88%に上った。また、IoT(モノのインターネット)の導入については、58%が既に事業全体でIoT機器類を利用、34%がIoT技術への投資を計画していると回答した。なお、AIやIoTの導入における5Gのメリットは認識した上で、5G導入の障壁として、52%が導入および保守費用、46%がハードウエアの更新に手間がかかる点を挙げた。
3.中国発「DeepSeek」は何がすごいのか、試して分かった他のAIより「賢い」点(7.4 日経XTEC)
ディープシークが開発した生成AI(人工知能)が、その性能やコストパフォーマンスの高さから話題となったのは記憶に新しいところだ。ディープシークが2025年1月に発表したDeepSeek-R1(以下、DeepSeek)は同社の資料によると、米OpenAI(オープンAI)が開発した「ChatGPT」などで利用するLLM「OpenAI o1」に匹敵する性能を持つとされる。DeepSeekはオープンソースで公開されており、商用利用も可能としており、性能の高さやオープンソースで公開されている点で「DeepSeekショック」などと呼ばれた。
deepseek-chatはWebブラウザー版もアプリ版も無料で使える。他のアプリなどからdeepseek-chatを使って読み込む際は、100万トークン入力のうち必要なデータがキャッシュに存在する場合で0.07米ドル(約10円)、必要なデータがキャッシュに存在しない場合は0.27米ドル(約40円)の料金がかかる。だが、他の生成AIサービスと比べると10分の1程度と破格の安さになっている。プロンプトは最大6万4000トークンの入力に対応しており、他のサービスと比べてと文字入力数の制限もゆるい。
簡単な文章の生成やコード作成・解析、言語の翻訳などAI利用の多くを占める作業では、ChatGPTと遜色ない結果を得られる。AIの「思考」過程を詳細に表示するため、回答に至る道筋を理解しやすい。DeepSeekは他の生成AIよりも計算に強いともいわれている。
便利なDeepSeekだが、AIに提供した情報の安全性については懸念もある。中国・中国移動(China Mobile)が管理するサーバーに情報を送信する機能がある、といった点だ。デジタル庁は、DeepSeekが取得した個人情報を含むデータは中国に所在するサーバーに保存されること、当該データについては中国の法令が適用されることを理由に、各省庁へDeepSeekの利用について注意喚起している。
4.きょうも誰かがネットワークトラブルを脱出している(6.30 日経XTEC)
トラブルに遭遇し、そして脱出したネットワーク管理者に直接取材し、その過程をドキュメンタリータッチでまとめる「トラブルからの脱出」。今回は趣向を変え、ここ3年で掲載した本コラムのランキングを紹介し、トップ3の内容をおさらいしたい。
第3位は、食酢の製造・販売を手掛けるマルカン酢で、ITシステム室長を務める荒木恵一さんが経験した脱出劇をまとめた記事である。2024年3月号に掲載した。
同社では、神戸市の本社事務所と本社工場、データセンター、関東地方の拠点を広域イーサネットで結び、さらに本社事務所と海外の拠点とをインターネットVPN(Virtual Private Network)で結んでいる。本社事務所や工場では多くの端末が無線LAN(Local Area Network)につながり、各端末は無線LAN接続時にはデータセンターにある認証サーバーとIEEE 802.1X認証をしている。
トラブルが発生したのは2023年8月3日午前9時ごろ。本社工場の製造担当者から、同じ敷地内の本社事務所にいた荒木さんに「生産管理システムが使えません」と報告が入った。荒木さんの自席端末からは同システムを問題なく使えたことから、荒木さんは工場側の端末に問題があると考えた。
荒木さんによれば、酢の生産工場はIT(Information Technology)機器にとって過酷な環境という。気化した酢酸の成分が影響して機器が故障するリスクが相応に大きく、実際に導入1年ですっかりさび付いた機器もあったという。
原因は不明だが、初期化されたのであれば、以前の通りに設定すれば復旧できる。荒木さんはバックアップしていた設定ファイルをルーターに登録し直したところ、見立て通りネットワークが復旧。発生から1時間でトラブルを脱出できた。
5.処理はクラウドかオンデバイスか、スマホにおけるAI活用の最適解を探る(6.30 日経XTEC)
スマートフォンメーカー各社は、AI(人工知能)を活用した機能をアピールしている。だがその取り組みや方向性には、かなりの違いがあるようだ。とりわけメーカーによって方向性が異なるのが、AI関連の処理をクラウドで実施するか、デバイス上(オンデバイス)で実施するかだ。それぞれの考え方と課題から、スマホにおけるAI活用のあり方を考えてみたい。
生成AIのブーム以降、AIに対する関心が大きく高まっている。そのためスマホメーカーは自社製品にAI機能を搭載し、積極的にアピールし始めた。2025年の夏シーズンに向けて国内で発表されたスマホでは、その傾向が顕著だった。
例えばソニーは、カメラの撮影やオーディオなどに活用してきた独自のAI技術を、新機種「Xperia 1 VII」の発売を機に「Xperia Intelligence」と銘打ち、積極的にアピールするようになった。
AI関連の機能をオンデバイスで処理する環境はある程度整っているといえる。スマホ向けのチップセットには、生成AIのブーム以前からAI関連の処理を効率良く実施するNPU(Neural Processing Unit)が搭載され、顔認証やカメラの被写体認識などに活用されてきた経緯があるからだ。
このため文字起こしや翻訳などのようにコンピューティングパワーを必要する機能でなければ、オンデバイスで処理されることも多い。
やはり現在の主流はクラウドである。主にクラウドで処理することで、性能の低い機種にもAI関連機能を提供するメーカーが出てきている。中国のOPPO(オッポ)は、2025年6月19日に発表したミドルハイクラスの新機種「OPPO Reno14 5G」に加えて、ミドルクラスの新機種「OPPO Reno13 A」にもAI関連サービス「OPPO AI」を提供する。
クラウドでAI処理を実施することの課題の1つは、セキュリティーだ。スマホは個人情報の宝庫である。それらの情報がクラウドに送信されることを懸念する声は少なくない。そのため米Apple(アップル)は、同社のAIプラットフォーム「Apple Intelligence」では可能な限りオンデバイスで処理するとしている。
セキュリティーとサービスの継続性を考慮するならば、オンデバイスでの処理を主体としながらクラウドも併用する形が理想的だ。ただそのためには、低コストが重視されるミドル・ローエンド向けのチップセットでも、AI関連の機能強化が求められる。こちらの道も険しいことは確かだ。
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