1.AWS幹部が語る通信インフラとクラウドの現在、「今後2〜3年で基地局も移行」(3.17 日経XTEC)
スペイン・バルセロナで2023年2月27日から3月2日にかけて開催されたモバイル業界最大級のイベント「MWC Barcelona 2023」。2022年のMWCに引き続き、米Amazon Web Services(AWS)や米Microsoft(マイクロソフト)といった巨大クラウド事業者が通信インフラへと進出する動きが目立った。かつては通信事業者や大手通信機器ベンダーが巨大クラウド事業者に警戒感を示すケースもあったが、今年のMWCではむしろ蜜月ぶりがうかがえた。通信インフラとクラウドサービスは今後ますます接近していきそうだ。
「通信インフラ分野へのAWS活用は過去、法人顧客がAWSを利用してきた流れと似ている。最初はリスクが少ない分野から始まり、その後、どんどんクラウドサービスへと移行が進むだろう」
AWSで通信事業者向けビジネスやエッジクラウド分野のCTO(最高技術責任者)を務めるIshwar Parulkar氏は、日経クロステックの取材に対してこのように答えた。
AWSはここに来て、通信インフラ分野のビジネスを急拡大している。通信事業者自らが通信設備を持つのではなく、クラウドサービス上に通信設備を構築できるようにすることで、トータルコストの削減やデジタル化の支援につなげている。
AWSの通信インフラ分野進出の背景となっているのが、通信機器に押し寄せている仮想化やクラウド化の波だ。専用機器がほとんどだった通信機器が近年、汎用サーバー上のソフトウエアとして動作するようになってきた。そのため、クラウドサービス上でソフトウエアとして通信機器を構築することが可能になりつつある。
そんなAWSにとっての大きな成果の1つが、2022年に米国で新たに携帯電話事業に参入した新興企業Dish Network(DISH)の事例だ。DISHはコアネットワークなど通信インフラの多くをAWSのクラウドサービスを活用して構築した。「DISHのネットワークは既に商用動作しており、AWSを活用した通信インフラが可能になったという証明の1つになっている」とParulkar氏は強調する。
通信インフラへのクラウドサービス適用の最終ゴールは、基地局などの無線アクセスネットワーク(RAN)である。無線信号のリアルタイム処理など、厳しい要件が求められる。こちらについてもAWSは、クラウドサービスと同様の操作感を実現し、企業の拠点などに設置できるサーバー「AWS Outposts」を開発している。AWS Outpostsを仮想化基地局のサーバーとして利用することで、基地局分野にもAWSの技術を適用する道筋を示している。
2.クラスメソッド、ChatGPTを活用したコンサルティングサービスを開始(3.17 日経XTEC)
クラウド技術によるシステム統合やアプリケーション開発を手掛けるクラスメソッドは2023年3月16日、米OpenAI(オープンAI)の対話型AI(人工知能)である「ChatGPT」を活用したコンサルティングサービスを、同日から始めると発表した。
クラスメソッドはエンジニア数十人体制で、ChatGPTなどの技術検証やプロトタイプサービスの作成などに取り組んでいたり、AIを適用するプロジェクトを手掛けたりしている。同社はそうした中で得た知見を踏まえて、顧客企業が自社業務にChatGPTを適用し効率化やコスト削減などを図れるよう、今回のサービスを通して支援していく。
クラスメソッドによると、「顧客から届くメールの振り分けや返信メールの作成」「報告書やプレゼンテーション資料の作成」「長文の要約作成」「AIチャットボットによる顧客サポート」「FAQ(よくある質問とその回答)の生成」といった業務にChatGPTを適用できるという。この他、顧客の購買履歴や売り上げデータの分析に適用することで、新しいビジネス機会の創出や効果的なマーケティング戦略の策定につなげられるとする。
3.GPT-4で「マルチモーダル」の威力痛感、アプリの世代交代に技術者は生き残れるか(3.17 日経XTEC)
過去3カ月間ほどIT業界の話題は「チャット」一色だったが、これからしばらくは「マルチモーダル」一色になるだろう。米OpenAI(オープンAI)が2023年3月14日(米国時間)、テキストに加えて画像の意味も理解できるマルチモーダルな基盤モデル「GPT-4」を発表したからだ。
マルチモーダルとは、複数の種類や形式のデータに対応する、という意味。画像も扱えるGPT-4が一般公開されるのはまだ先のことだが、論文やデモで示されたその威力はすさまじい。例えばGPT-4は、文章に加えて複雑な数式や図などが含まれる大学レベルの物理のテストを解けるようになったという。
恐ろしいほどの能力を備えたマルチモーダルの基盤モデルが世に解き放たれることで、産業や社会にどのような変化が起こり得るのか。筆者が全てを予測するのは到底不可能だが、一つだけ確実に言えることがある。それはマルチモーダルの基盤モデルが全く新しい種類のアプリケーションを生み出すプラットフォームになり、それに伴ってアプリの世代交代が起きるということだ。
GPT-4のようなマルチモーダルな基盤モデルを活用することで、アプリはどう変化するのか。
例えばデンマークのBe My Eyes(ビーマイアイズ)はGPT-4を使って、視覚障害者向けのアシスタントアプリ「Virtual Volunteer」を開発した。ユーザーがスマートフォンのカメラで冷蔵庫の中を撮影すると、GPT-4が冷蔵庫の中身を説明するだけでなく、冷蔵庫の中にある材料から調理可能な料理などを教えてくれるのだという。
しかしAPIが無いようなアプリであっても、人間向けのGUI(グラフィック・ユーザー・インターフェース)やCUI(キャラクター・ユーザー・インターフェース)は必ず備えている。基盤モデルを活用することで画像もテキストも意味が理解できるようになった新世代のアプリは、他のアプリのGUIやCUIを操作することで、容易に他のアプリと連携できるようになるはずだ。
動画や音声を理解できるアプリに何ができるのか。物体の形状からその意味を理解できるアプリに何ができるのか。ソフトウエア開発者がこれから考えるべきアプリのアイデアは数限りない。
4.米OpenAIがマルチモーダルの「GPT-4」発表、画像の入力が可能に(3.15 日経XTEC)
米OpenAI(オープンAI)は2023年3月14日(米国時間)、生成AI(人工知能)の最新版「GPT-4」を発表した。テキストと画像の入力に対応するマルチモーダルの巨大言語モデルになっており、画像の内容を説明する文章などが生成可能。「ChatGPT」の有償版のユーザーはGPT-4を即日利用可能になった。
マルチモーダル化したGPT-4は、画像に質問文を添えて入力すると、その画像の内容に基づく回答文などを生成できる。例えばオープンAIが同日公開したGPT-4のデモでは、ノートに手書きしたWebサイトの概要を撮影した画像ファイルに「これを基にしたカラフルなWebサイトのHTML/JavaScriptコードを書いて」といったテキストを添えて入力することで、Webサイトを構成するコードなどが生成された。
GPT-4では扱えるテキストの長さが2万5000単語(3万2768トークン)にまで増えた。従来よりも長い文章を生成可能になったのに加え、チャットにおける会話のやり取りも長くなり、ユーザーの意図をより深く踏まえたうえでの返答が可能になった。従来のGPT-3.5が扱えるテキストの長さは最大4097トークンだった。
例えばGPT-4はGPT-3.5に比べて、米国司法試験の模擬試験を解かせた際の成績が大きく向上したという。GPT-3.5の成績は下位10%にとどまっていたのに対し、GPT-4の成績は上位10%で合格できたとする。
5.シングテルが5Gミリ波で上り速度1.6Gビット/秒を達成、クアルコムやエリクソンと(3.14 日経XTEC)
シンガポールSingtel(シングテル)とスウェーデンEricsson(エリクソン)、米Qualcomm(クアルコム)は2023年3月1日(現地時間)、5Gミリ波での上り速度最大1.6Gビット/秒を達成したと発表した。4キャリアを使用した5Gミリ波のキャリアアグリゲーション(CA)と上り/下り通信のバランス調整により実現した。試験端末には、Qualcommの「Snapdragon X65 5Gモデム-RFシステム」が使われている。
製造業や輸送、医療、エンターテインメント、ニュース制作などの分野では、一般顧客向けアプリケーションより高速な上り通信容量と速度が求められる。今回は、上り速度と下り速度を効果的に変更できるよう、上り/下りでバランスのとれた構造にし、5Gミリ波の上りリンク比をより高くすることで、上り速度を改善した。この手法を使うことで、高速の上り速度を必要とする企業などに向けて、柔軟で信頼性が高く安全な方法でのネットワーク提供が可能になるとしている。
このほかSingtelは2023年3月6日(現地時間)、フィンランドNokia(ノキア)と協力して、5G IPトランスポートネットワークのエンドツーエンドでのネットワークスライシング実験を行っている。Nokiaの7750 Service Router、Network Services PlatformとIPトランスポート・ネットワークスライシング・ソリューションを使用し、Singtelの5G試験施設5G Garageにて実施した。
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