週間情報通信ニュースインデックスno.1341 2022/8/20


1.DX先行企業は2020年から2倍増の17.7%、IPAが2021年版の分析結果を公開(8.17 日経XTEC)
情報処理推進機構(IPA)は2022年8月17日、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実態把握を目的とした「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2021年版)」を公開した。2021年1月から12月に回答を提出した486社を分析したところ、DX先行企業が17.7%の86社に達し、2020年から2倍超に増えたことが分かった。

 IPAの分析レポートは経済産業省が作成したDX推進指標に基づき、2019年度から公開されている。DX推進指標は全35項目から成り、それぞれの成熟度を0から5の6段階で自己評価する。成熟度0は「DX未着手」、成熟度3は「全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベル」、成熟度5は「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル」を指す。

 全企業・全項目の成熟度の平均値は1.95で、2020年の1.60から0.35ポイント向上した。成熟度の平均値が3以上の「DX先行企業」は17.7%の86社だった。2020年のDX先行企業の割合は8.5%、2019年は4.4%であり、年々増加している。

 全企業の平均値が最も高かった評価項目は「プライバシー、データセキュリティ」で、IPAは「重要性が社会的に浸透しているためか、他の項目よりも優先的に取り組まれている」と分析している。一方、平均値が最も低かったのは「事業部門における人材」。「人材育成に関してはまだ戦略を立てられていない企業が比較的多い」(IPA)と考えられる。

2.ホスティングとコロケーションで何が違う、高付加価値化が進む「データセンター」とは(8.17 日経XTEC)
データセンター(DC:Data Center)は、情報システムを構成するサーバーやLANスイッチ、ルーターなどの機器の設置・運用に特化した施設である。もともとは金融機関の勘定系システムなど、大企業が基幹業務システムを運用するための施設として自前で保有していた。その当時は「電算センター」などと呼ばれていた。

 DCには災害や情報漏洩の対策として、耐震・免震構造や非常用自家発電機、入退場管理システムといった様々な仕組みや設備が必要になる。自前でDCを保有するのは、多くの企業にとってハードルが高い。一方で、情報システムの利用が一般化し、中小規模の企業もDCを必要とするようになった。そこで、情報システムを預かる場所を貸し出す「商用DC」が登場した。

 商用DCで提供されるサービスは大きく2つある。1つは、サーバーやディスクスペース、通信環境を貸し出す「ホスティング」である。日本では2000年代初頭からインターネット接続サービスとともに利用が広がった。最近では「IaaS(Infrastructure as a Service)」などクラウドサービスへの移行が進みつつある。

 もう1つは、サーバーなどの置き場所を提供する「コロケーション」または「ハウジング」と呼ばれるサービスだ。DC事業者が電源や通信環境を用意しておき、ユーザー企業がサーバーなどの機器を持ち込んでシステムを構築する。

 コロケーションのユーザー企業には、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や米マイクロソフトといった大手のクラウドサービス事業者も含まれる。大手クラウド事業者でも、本国以外の国や地域では商用DCを利用するケースが少なくない。

 情報システムを預かる場所として登場した商用DCだが、最近ではサービスの高付加価値化が進んでいる。その中でも存在感を高めているのが、DC内やDC間に張り巡らした高速の通信インフラを活用したネットワークサービスである。外国為替証拠金取引(FX)や株取引などの金融システムでは、システム間の通信遅延を数ミリ秒単位に抑える必要がある。また、大容量のデータを扱うコンテンツ配信ネットワーク(CDN)や大量のトランザクションが発生する電子商取引(EC)などのシステムでも、高速かつ安定した相互接続が求められる。

 こうした用途で広く使われているのが、DCを利用する企業のシステムを相互接続するサービスだ。インターネットを介さない閉域網でシステム間を接続する。同じDC内のシステムだけではなく、異なるDCに置かれたシステム同士も接続できる。同一企業のシステムを接続する場合もあれば、取引先企業とのシステムを接続する場合もある。

 DC内の相互接続サービスはクラウド接続サービスにも利用されている。オンプレミスとクラウドのシステムを連携させる場合、従来はインターネットで接続するのが一般的だった。しかし、企業の基幹システムなどでインターネットを使うのは、通信速度やセキュリティーの面で不安がある。そこで、DC事業者のDC内にあるクラウド接続のゲートウエイを利用してインターネットを介さずに接続する。

 このほか、人工知能(AI)などの処理に使用する発熱量の大きいサーバーを大量に収容する「高密度ラック」と呼ばれるコロケーションサービスも増えている。具体的には、ラックの電源容量やサーバールームの冷却能力、床の耐荷重を高めて対応する。

3.カインズが無人店舗の実証実験、AIカメラがリアルタイムで商品認識(8.16 日経XTEC)
ホームセンター大手のカインズは2022年8月16日、無人店舗「CAINZ Mobile Store」による実証実験を同年9月1日に開始すると発表した。会計のスムーズさ・正確さ、課題の有無などを確認するのが狙いだ。

 事前にスマートフォンで専用アプリをダウンロードしておけば、来店時に入り口のゲートにアプリのQRコードをかざすだけでレジでの会計が不要になる。店内のAI(人工知能)カメラが来店客の動きを解析し、手に取った商品をリアルタイムで認識する。出口ゲートを通った際に決済が完了する仕組み。購入済み商品の詳細はアプリで確認できる。

 実験で利用するのは、無人店舗向けソリューションで実績がある米AiFi(アイファイ)の技術。AiFiが日本の企業と組むのは初めてだという。

 CAINZ Mobile Storeは埼玉県本庄市にあるカインズ本社の1階ロビーに設置し、従業員だけが利用できる。扱う商品は日用品など約200アイテム。実証期間は少なくとも6カ月間で、その後の展開は実験結果を踏まえて検討するとしている。

4.メタバース時代に携帯電話事業者はOTTから主導権を取り返せるか(8.15 日経XTEC)
2022年7月27日から2日間にわたって実施されたメタバース関連のイベント「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」に、携帯電話大手がブースを出展した。唯一出展していないKDDIも以前よりメタバース関連の取り組みには力を入れているだけに、ここ最近携帯電話事業者がメタバースに積極的に取り組んでいる様子がうかがえる。その背景には何があるのだろうか。

 中でも大きなブースを構えていたのはNTTドコモである。同社は仮想空間上でコミュニケーションなどが楽しめる独自のメタバースサービス「XR World」や、AR(拡張現実)技術を使ったサービスプラットフォーム「XR City」などを展開している。そうしたプラットフォームに関する展示だけでなく、メタバースを支援するソリューションなどを展示していたのも特徴的だ。

 同社のブースでは、バーチャルのアーティストによる仮想空間上でのVRライブ配信を実現する「MATRIX STREAM」を展示した。バーチャルのキャラクターをリアルタイムかつ魅力的に表現し、なおかつライブ会場からオンラインに至るまで、多数のプラットフォームに同時配信できる仕組みなどを備えているという。最近ではVTuberの所属事務所が上場し、時価総額が高騰して注目されるなど、バーチャルのアイドルやタレントなどに対する関心が高まっているだけに、その活躍の場が広がることを見越してこうしたソリューションを提供するに至ったものと考えられる。

NTTドコモはメタバースのプラットフォームだけでなく、バーチャルのキャラクターによるリアルタイムでのライブ配信を支援する「MATRIX STREAM」など関連するソリューションにも力を入れている。

 そして楽天モバイルが展示していたのは、5Gを活用したメタバースでの新しい買い物体験に関する実証実験のデモである。これは2022年7月6日、楽天モバイルがプロサッカーチームのヴィッセル神戸らと実施したもので、スタジアム内の観戦ルームからメタバース上のストアを訪れ、ヴィッセル神戸のグッズなどを購入したり、メタバース空間内でのコミュニケーションを体験したりするというものだ。

 なぜ携帯電話事業者がメタバースなのか、という疑問も湧く。そこにはやはり通信インフラを提供しているからこそといえる。通信の基本はコミュニケーションにあるだけに、新しいコミュニケーションを自ら開拓することが、事業の主導権を握ることにつながってくるのだ。

 そして携帯電話事業者からしてみれば、コミュニケーションサービスの主導権がOTT(Over The Top)プレーヤーに移ってしまったという苦い思いもあるだろう。実際3Gの時代までは、音声通話や携帯メールで携帯電話事業者自身がコミュニケーションの主導権を握ってきたが、スマートフォンの普及が本格化した4G時代には「LINE」などのメッセンジャーアプリや、「Twitter」「Instagram」などの様々なSNSがコミュニケーションの主体となり、主導権がOTTに移ってしまっている。

 だが5G時代に入り、再びコミュニケーションの在り方が大きく変わる可能性が出てきている。そこで新しいコミュニケーションスタイルとして普及の可能性が見えてきたメタバースに力を入れることで、携帯電話事業者がコミュニケーションの主導権を取り戻したいという狙いが大きいのではないかと筆者はみる。

 もちろん現時点でメタバースが消費者に広く普及しているわけではなく、今後どこまで浸透するのか、というのは未知数だ。だがコミュニケーションが通信の大きな軸であることに変わりはないだけに、今後も携帯各社がメタバースに力を入れて取り組むことは間違いないといえそうだ。

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