週間情報通信ニュースインデックスno.1339 2022/8/6


1.KDDIの通信障害の全容が判明、大規模化・長期化を招いた本当の理由(8.5 日経XTEC)
2022年7月2日からおよそ3日にわたって続いたKDDIの通信障害。規模の大きさや期間の長さなどから社会的にも極めて大きな影響をもたらした。同社による通信障害の詳細からは、通信障害がこれだけ大きなものとなった要因も見えてくる。

 2022年7月初頭、大きな注目を集めることとなったKDDIの通信障害。2022年7月2日の深夜からおよそ61時間、3日にわたって影響が続いたこの通信障害は、4Gのネットワークで音声通話を担う「VoLTE」の部分を中心として障害が起こったことから、主として音声通話の利用に大きな影響が発生し、110番などの緊急通報ができなくなるなど深刻な事態をもたらした。

 それに加えて企業が利用する一部のIoT通信にも影響が及んだ。それを用いた物流や銀行、行政などのサービスが利用できなくなるなど、間接的にも非常に多くの人に影響が及ぶこととなった。KDDIでは音声通話利用者2278万人と、データ通信利用者765万人に影響が出たとしているが、何らかの形で通信障害の影響を受けた人はもっと多いとみられる。

 以前の説明時に判明していなかった要素の1つは、ルーターのメンテナンスで音声通話が15分間できなくなった原因である。今回の説明会ではその詳細についても説明があり、ルーターの設定ミスによるものだったことが明らかにされている。
 その結果、50%の確率で下りの通信が通らない状態となり、15分間通話が正常にできなくなってしまった。そこで端末からの位置情報登録が破棄され、ネットワーク内でその再送要求が繰り返された結果、通常の7倍というトラフィックが発生してVoLTE交換機の輻輳(ふくそう)を招いたようだ。

 一方で不幸中の幸いといえるのは、データ通信に障害が起きなかったことだ。端末に搭載するモデムチップやソフトなどのふるまいの違いから、音声通話ができなかったことで一部端末でデータ通信がしづらい状況も発生していたようだが、データ通信自体に輻輳の影響は及ばなかった。筆者も通信障害発生時にスマートフォンのKDDI回線を確認したところ、音声通話はつながらなかったがデータ通信は快適にできる状況だった。

2.最大9.6Gビット/秒の「Wi-Fi 6」、高速無線LANを実現する3つの技術(8.5 日経XTEC)
現在では、最大伝送速度6.9Gビット/秒のWi-Fi 5に対応するネットワーク機器が一般的だ。だが、家電量販店やECサイトには最大伝送速度9.6Gビット/秒のWi-Fi 6向けの機器も出回り始めている。

 Wi-Fi 5からWi-Fi 6では何が変わったのだろうか。技術的な違いについて見ていこう。

 高速化技術を解説する前に、まずはWi-Fi 5やWi-Fi 6のフレームの構造を見てみよう。実はフレームの構造については、無線LANの最初の規格であるIEEE 802.11から大きくは変わっていない。

 例えばWi-Fi 5とWi-Fi 6のいずれについても、フレームの最初には信号の物理的なタイミング(同期)を取るためのレガシープリアンブルと呼ばれる情報が格納されている。これらよりも以前の規格でも、呼び方は異なるが同様の情報が格納されている。

 ただしWi-Fi 6では、共有情報やユーザー個別情報などが追加された。共有情報には、上りか下りかといった通信方向や帯域幅に関する情報などが含まれる。一方ユーザー個別情報には、後述するリソースユニットの割り当てに関する情報などが含まれている。

 冒頭で記載したように、Wi-Fi 6では最大伝送速度が9.6Gビット/秒に達している。現在広く普及しているイーサネット規格である1000BASE-Tよりも理論値では高速になっている。このような高速通信を支えているのが、周波数分割、変調、伝送路多重──という3つの技術である。

3.世界のデジタルデバイド解消へ、ノキアらが衛星から6大陸の4G/5G端末へ直接接続(8.4 日経XTEC)
フィンランドNokia(ノキア)は2022年7月28日、米国の衛星通信会社AST SpaceMobileとの5年にわたる業務提携契約を締結したと発表した。世界初とする、4G/5G端末と通信衛星間で直接接続可能なモバイルブロードバンドネットワーク構築で協業する。AST SpaceMobileは、試験衛星「BlueWalker 3」を同年9月に打ち上げ、6大陸の事業者との連携試験を開始。これにより、世界のデジタルデバイドの解消を狙う。

 両社は、今回の業務提携により、世界人口の約半数に当たる50億人超が直面している移動通信へのつながりにくさを解消するとしている。これまで移動通信カバレッジの対応範囲外だった地域に高速モバイルブロードバンドサービスを提供し、地上ネットワークと衛星通信ネットワークを含めたローミングを可能にする。

 Nokiaは、1台で4G/5G両方に対応するSingle RAN装置「AirScale」を提供する。これには、最新世代の同社チップセット「ReefShark」を搭載するAirScale基地局をはじめ、柔軟かつ効率的に通信容量を拡張できるモバイルベースバンドプラグインカードなどが含まれている。これらを、これまでサービス提供できていなかった陸上の地点のみならず、海上や航空機などにも搭載する。ネットワークの管理運用自動化や最適化を支援するサービスシステム「NetAct」も提供する。

 通信衛星のBlueWalker 3は、低軌道(Low Earth Orbit、LEO)を周回し、アンテナの開口面は約64平方メートル、3GPPの定める周波数帯を介して携帯端末と直接接続できるように設計されている。2022年9月、フロリダ州Cape Canaveralから打ち上げ、その後、6大陸の通信事業者と連携した試験を開始する。最終的に約100基の通信衛星を配備し、世界規模のモバイルカバレッジを実現するとしている。

4.世界の70%を占める中国の5G基地局 「4Gは生活を変え、5Gは社会を変える」(8.3 日経XTEC)
中国の通信行政を担う工業情報化部によると、中国の第5世代移動通信システム(5G)基地局は185万4000カ所に達し、5Gネットワークは全国の市街地エリアの92%をカバーしている。5G対応スマートフォンの利用者数は4億2800万人に上り、5G通信量がモバイル通信量に占める割合は前年比19.1ポイント増の27.2%となった。同部情報通信管理局の王鵬(Wang Peng)氏は「各県に5Gが、各村にブロードバンドが行き渡った」と成果を誇る。中国の5G基地局の数は世界の70%を占め、今年末には200万カ所に到達するという。

 5Gネットワークはすでに1000カ所のスマート工場、600カ所の三級甲等病院(最高レベルの病院)、200カ所のスマート鉱山、180カ所のスマートグリッド(次世代送電網)、90カ所の港湾のプロジェクトで利用されている。

 地方や過疎地域で医療機関と医師が不足する中、5Gを導入した遠隔医療が実用化されることで、医師が離れた地域の患者の診察データを瞬時に入手して診察できるほか、手術支援ロボットの操作にタイムラグがなくなることで遠隔手術を行うことが可能となる。

 坑道作業に危険がつきまとう鉱山では、5Gを活用した無人採掘機やトロッコの自動運転が既に実現。5Gスマートグリッドでは、電力作業員が超高画質カメラを通じて送電線や配電施設の故障リスクを早期発見し、現場点検の人手を大幅に削減している。若者の少子化・高学歴化が進み、現場労働の従事者が減少している現状にも対応している。

 中国が世界に先駆けようとしている自動運転技術でも5Gは不可欠だ。高精度のデータ解析、リアルタイムの情報処理、そしてブレーキのタイミングが一瞬でもずれないようタイムラグが発生しない研究が進んでいる。

 5GはIoT(モノのインターネット)を促進し、市民の日常の暮らしにも恩恵を与える。照明やエアコン、洗濯機、家電などを高速通信でネットワーク接続し、生活を快適にするスマートホームが広まっている。交通、健康、教育、観光などあらゆる分野で5G技術の応用が進んでいる。情報・デジタル分野の専門家、袁師(Yuan Shi)氏は「5Gネットワークはほぼ全ての産業に変革をもたらす。4G技術は人のライフスタイルを変えたが、5G技術は社会そのものを変える」と話す。

 一方で課題もある。5Gネットワークは中国全土に網羅されつつあるが、「密度」は大きく異なる。5月末時点で1万人当たりの5G基地局数は12カ所を超えているが、5万4000カ所の基地局を持つ北京市は1万人あたり25カ所、上海市も20.8カ所と、全国平均を大きく上回る。中国人民大学(Renmin University of China)の王鵬(Wang Peng)准教授は「内陸の中西部地域では5Gのカバー率が低い。基地局の建設は地域間の不均衡があり、さらに最適化する必要がある」と指摘する。人、モノ、情報の地域格差を解消する役割が期待される5Gが、むしろ巨大な「ネットワーク格差」を生み出さないよう警鐘を鳴らしている。

5.「ミリ波の共有で通信容量が著しく増大」、クアルコムが周波数有効活用の新技術(8.3 日経XTEC)
米Qualcomm(クアルコム)は2022年7月27日(現地時間)、ミリ波共用周波数帯の効率的な活用を可能にする新技術をブログで公開した。干渉の可能性を事前に確認することで、高い通信品質を維持しながら、通信容量を増強できるとしている。

 増え続ける通信量需要に対応するため、5Gではサブ6(6GHz未満の周波数帯)に加え、ミリ波の活用も開始した。これにより利用可能となった、4G時の約25倍の帯域幅をさらに効率的に活用するための検討も始まっている。

 例えば、通信事業者は、自身に割り当てられたライセンス周波数帯を独占的に利用し、高品質なサービスを提供している。一方で、その他のサービスやアプリケーションが使用する周波数には、十分に活用されていないものも少なくない。もし、これら周波数帯の利用状況に合わせて調整できるツールがあれば、通信事業者との共用も可能となる。

 2016年7月、FCC(Federal Communications Commission、米国連邦通信委員会)は、37.0G〜37.6GHzのミリ波帯を共用周波数帯として割り当てるとしたが、その利用手段は明確になっていない。そこでQualcommは、この周波数帯に帯域幅100MHzの6つの優先ライセンスを割り当て、連邦政府や民間通信事業者など、各チャンネルの優先免許保有者が、残りの帯域も2次的に使用できる案の採用を求めている。

  Qualcommの構想では、各優先免許保有者は、一定時間ごとに干渉の可能性確認を行う装置を実装する。干渉が発生しないと確認された場合のみ、他の帯域への2次アクセスが可能となる。この方法を使えば、各優先免許保有者は、他のすべてのチャネル、つまり帯域幅500MHzに無  Qualcommでは、この技術の効果を空港ターミナルでの利用を想定したシミュレーションで確認。ミリ波共用周波数帯ライセンスを所有する事業者2社の協力を得て、それぞれ32個のMIMOアンテナパネルを搭載した6つの屋内用スモールセルと200MHz幅の優先帯域を使用して、30ユーザーを対象に実験を行った。その結果、共用周波数使用時は、未使用時に比べ、著しく通信容量が増大したことを確認した。なお、新技術のLTS(Long Term Sensing)採用時には、2社とも95%の時間帯で優先周波数帯のみ利用時と同様の高いサービス品質と信頼性を確保できることも確認している。

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