1.NEC、サントリーのビール工場にAIを活用した異常予兆検知システムを提供(2.18 日経XTEC)
ECは2022年2月18日、サントリービールに対し、AI(人工知能)を活用して設備異常の予兆を検知するシステムを提供すると発表した。「サントリー〈天然水のビール工場〉京都」(京都府長岡京市)に新設する缶充填ラインで2022年5月下旬の稼働開始を予定する。
設備に設置した約1500のセンサーから得られる電流値や電圧値などのセンサー情報を制御システムで収集・分析し、各センサー情報の不変的な関係性(インバリアント)をモデル化する。そうした関係性から予測されるデータの変化と実際のデータを比較することで、設備の異常を予兆段階で検知する。過程が分かるホワイトボックス型AIの特長を生かし、どこがどのような理由で異なるのかといった情報も出して、早期対処を支援する。
さらに充填機が設置されている部屋にマイクを設置し、音の特徴を調べることで早期の異常検知が可能かも検証する予定だ。
従来の大量製造現場では現場担当者が設備のセンサーデータを活用してしきい値による監視を実施しており、個々のデータの微細な変化を捉えるには経験やノウハウが必要となっていた。熟練した現場担当者のノウハウや経験を継承するとともに、熟練者でも気づきにくい異常を検知することで設備の安定稼働を支援し、生産ラインのDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる狙いがある。
2.3GPPの最新5G活動報告、産業アプリ向け機能強化を加速(2.18 日経XTEC)
移動通信の標準化団体3GPP(Third Generation Partnership Project)は、TSG SA WG6(SA6、Service and System Aspects:サービスおよびアーキテクチャー仕様検討)議長Suresh Chitturi氏による、同グループのリリース17、リリース18に向けた活動報告をWebサイトで公開した。以下はその概要となる。
3GPPでは現在、リリース17に向けて、公共安全や自動車、ドローン、スマートファクトリーなどが、リリース15からは、加えて、各種産業用サービスフレームワークやアプリケーション仕様標準化が加速。現在では鉄道、公益事業、海運、運輸など、さまざまな分野に向けた対応を行っている。
CAPIF(Common API Framework):3GPP準拠の統一化されたNorthbound API(コントロール層とアプリケーション層間API)フレームワーク。これにより、各種産業用アプリケーションのオンボーディング、認証、許可などの作業を簡単に行うことができるようになる。
SEAL(Service Enabler Architecture Layer):3GPP準拠のネットワーク上で動作する産業アプリケーション向けサービス(グループ管理、構成管理、位置管理、IDキー管理、ネットワークリソース管理など)に向け、共通化された機能を提供する。これにより産業アプリケーション間での再利用が可能となる。
EDGEAPP(Edge Application Enablement):エッジコンピューティング向けアプリケーションを産業向け5G機能の強化を行っている。SA6は、そのうちアプリケーション層のアーキテクチャーやサービスフレームワークの検討を進めている。
SA6では、ミッションクリティカルなアプリケーションを含むアプリケーション層のアーキテクチャー、サービスフレームワークを担当する。
リリース18以降、3GPPネットワークで動作するアプリケーションはますます多様化する。SA6では、現在リリース17で進めている機能強化に加え、ネットワークスライス機能強化やサブスク加入者識別型API、IoTプラットフォーム対応、位置確認機能付きフレームワーク、効率的なデータ配信、データ解析などを加速。スマートグリッドを含む新しい業界をサポートしていく。
3.「2026年には4人に1人がメタバースを日常利用」、ガートナーが展望(2.17 日経XTEC)
ガートナージャパンは2022年2月9日、メタバースに関する展望を発表した。その中で同社は、2026年までに4人に1人が仕事や買い物、教育、娯楽などの目的で1日1時間以上をメタバースで過ごすようになると予測した。
ガートナーはメタバースを「仮想的に拡張された物理的現実とデジタル化された現実の融合で創り出される集合的な仮想共有空間」と定義する。同社は、メタバースは単一のベンダーが所有するものではなく、デジタル通貨と非代替性トクーン(NFT)で実現する新たなデジタル・エコノミーになるとした。
米Gartner(ガートナー)のバイス プレジデントでアナリストのマーティ・レズニック氏は「世界の組織の30%が2026年までに、メタバースに対応した製品やサービスを持つようになる」と予測した。一方でメタバース技術の採用は始まったばかりで部分的であることを踏まえ、「どの投資が長期的に有効であるかを判断するには時期尚早」(レズニック氏)だとして、特定のメタバースへ多額を投資することに注意を促した。
4.ソフトバンクがPPAP拒否、暗号化添付ファイルは全て削除(2.16 日経XTEC)
ソフトバンクは2022年2月15日、社用メールアカウントでパスワード付き圧縮ファイル(暗号化添付ファイル)の利用を廃止すると発表した。同日午後3時以降、暗号化添付ファイルを含むメールを受信した場合には、添付ファイルを自動で削除している。3月以降は、送信メールに対しても同様の措置を取る。
狙いは「Emotet(エモテット)」などのマルウエアへの対策だ。Emotetの主要な感染媒介としてメールの添付ファイルがあるが、暗号化されていた場合にはセキュリティーチェックが困難になる。これまで同社でもEmotetに感染させる目的とみられるメールを受信していた。
Emotet流行の要因の1つに「PPAP」があるとみられている。PPAPは、暗号化したファイルをメールに添付して送った後、別のメールで解凍パスワードを送るファイル共有の手法だ。セキュリティー面の効果がほとんどないことから官公庁や企業で廃止が進んでいる。ソフトバンクの措置はこうした背景を踏まえたものだという。
今後は、ファイル授受用のシステムやアプリケーションのパスワード保護機能を利用して、取引先とファイルを共有する。具体的な共有方法は「社員と取引先の間でコミュニケーションを取って決める」(ソフトバンク広報)とする。
5.NTTコム、eSIMのプログラム領域開放 第1弾はIoTセキュリティー(2.14 日経XTEC)
NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は2022年2月14日、同社がフルMVNOとして提供する遠隔から通信プロファイルを書き換えられる「eSIM」において、SIM内のプログラム領域を第三者に開放する考えを明らかにした。SIMで取得できる位置情報や識別番号(IMSI)などを利用し、協業先企業がSIM上で動作する任意のアプリケーションを開発できるようになる。第1弾としてトレンドマイクロと共同で、IoT機器向けにSIMによる不正通信検出のアプリを開発した。同社は今後、協業先企業を広げ、単なる通信手段ではないSIMの付加価値提供を目指す考えだ。
契約者情報を格納するなどモバイル通信に欠かせないSIM。SIMはICチップを搭載したマイクロコンピューターであり、任意の小さなプログラムが動作するアプレット領域を持つ。
NTTコムはSIMベンダーと共同で、協業先企業がSIM上で動作する任意のアプリを開発しやすい独自SIMを新たに開発した。具体的には、通信に必要な情報を書き込んだ通信プロファイル領域と、任意のアプリを実行するアプレット領域を論理的に分離したSIMである。
通常のSIMは、通信プロファイル領域内にアプレット領域が含まれている。両者は共通の鍵情報を利用しており、アプレット領域へプログラムを書き込む場合も共通の鍵を利用する必要があった。共通の鍵は、ネットワークに接続するための重要情報を保管する通信プロファイル領域の管理にも使われている。強固なセキュリティーで守る必要があり、基本的にこの共通鍵はSIMを発行する通信事業者が管理する。そのため協業先企業はこれまで、通信事業者にアプレット領域への書き込みをその都度、依頼する必要があった。「協業先企業が早期にアプリを開発・実装することが難しかった」とNTTコム 5G IoTタスクフォース担当部長の内山貴允氏は話す。
NTTコムが新たに開発したSIMでは、通信プロファイル領域を管理する鍵とアプレット領域を管理する鍵を、独自技術によって別々にした。信頼できる協業先企業に、アプレット領域を管理する鍵情報を開放。これまで必要だった通信事業者とのやり取りが不要になり、協業先企業が独自にSIMのアプレット領域にアプリを書き込めるようにした。SIMを使ったアプリ開発の迅速化が図れるとNTTコムは期待する。
NTTコムは同SIMの活用の第1弾として、IoT機器のセキュリティー対策用アプリをトレンドマイクロと共同で開発した。SIMのアプレット領域に書き込んだプログラムが、IoT機器の通信情報を収集し、ネットワーク上に設置したマネージメントシステムへと情報を送信。通常とは異なる通信を検出した場合、通信をブロックするような仕組みを構築できる。
NTTコムとトレンドマイクロは22年2月14日から6月30日まで、同アプリのフィールドトライアルを実施する計画だ。その結果を踏まえ、同アプリの22年度内のサービス化を目指す。
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