週間情報通信ニュースインデックスno.1262 2021/02/06


1.いよいよ富士通も仲間入り、ドコモが「Open RAN」海外外販で狙う捲土重来(2.5 日経XTECH)
「グローバルベンダーの強みを単純に結合するのではなく、ドコモが融合させて多様な価値を生み出していく」――。

 NTTドコモが2021年2月3日にオンラインで開いた記者会見。井伊基之社長がこう語るのは、海外で新たに手掛ける5G(第5世代移動通信システム)のインフラ整備支援事業についてだ。

 ドコモがこの日発表した取り組みは2つある。 1つは、米Intel(インテル)や米NVIDIA(エヌビディア)や米VMware(ヴイエムウェア)といった米国勢と、NEC、富士通、NTTデータなど日本勢との計12社と共同展開する「5GオープンRANエコシステム」だ。これは、基地局の様々な構成装置をマルチベンダーから調達できるようにした仕様である「Open RAN」方式に対応した5G基地局に関して、導入から運用・保守までパッケージにして海外の通信事業者に外販する取り組みだ。

 ドコモの国内にある研究開発拠点に検証環境を設け、2021年度に海外事業者との共同実験を実施する。そのうえで2022年度の商用化を目指すとしている。

 もう1つは海外拠点を持つ日本企業など向けに、エリア限定で5G通信ができる技術「ローカル5G」などを利用した自営ネットワークの構築を支援する事業だ。こちらは富士通やNEC、NTTデータに加えて、NTTコミュニケーションズやNECネッツエスアイなども含めた計12社と「海外法人5Gソリューションコンソーシアム(5GEC)」を設立することで基本合意した。

 まずは多くの日本企業が進出しているタイで2021年度下期から実証実験を進める。5GオープンRANエコシステムと同様に2022年度の商用化を予定している。

2.菅政権の携帯料金値下げ圧力でMVNOが窮地に、矛盾は解消されるのか(2.5 日経XTECH)
NTTドコモの「ahamo(アハモ)」に代表される低料金サービスが携帯電話大手から相次いで投入されたことで、低価格を武器としてきたMVNO(仮想移動体通信事業者)が一転して窮地に立たされている。総務省は携帯電話大手の新サービス開始までに、MVNOの競争力を維持できる施策のめどをつけられるのだろうか。

 NTTドコモが月額2980円で20GBのデータ通信が利用できる「ahamo」を提供して以降、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルは相次いで低価格帯を主体とした新料金プランを打ち出し、低価格で利用できるサービスの選択肢が大幅に増えた。消費者にとってはありがたい一方で、他の事業者にとって脅威を生み出してしまったようだ。

 とりわけ影響を強く受けているのがMVNOである。もともとオンラインでの販売を主体にすることで大幅に安い料金を実現していたのがMVNOだった。だが、携帯電話大手がそうした手法を取り入れて低価格化を推し進めたことで、MVNOからしてみれば市場破壊を起こされかねない事態となっている。

 現状のMVNOの料金プランを見ると、ahamoなどと同じ高速データ通信の20GBプランで、月額4000円から5000円前後といったところのようだ。だがahamoはそれより1000円以上安い料金水準を実現しており、MVNOのサービスにはない1回5分の通話定額や、国際ローミングなども提供している。しかも混雑時も通信速度が落ちにくいなど品質面では圧倒的な優位性がある。

 そこでテレコムサービス協会 MVNO委員会は、2021年1月18日に緊急措置を求める要望書を提出。データ通信の接続料の可及的速やかな引き下げに加え、音声通話の卸料金見直しによる低廉化、そしてMVNOの低価格通話サービスを利用しやすくする「プレフィックス番号自動付与機能」の早期実現を要望している。

 そしてもう1つの要望が「イコールフッティングを担保するルールの在り方について」である。具体的には携帯電話大手とMVNOが同じ条件で設備を利用できることの担保を求めている。とりわけ廉価プランに関しては、利用者の料金とMVNOに対するデータ通信接続料や音声卸料金との関係を検証し、不当な水準となっているかどうかを確認する「スタックテスト」の実施を求めているようだ。

 いくつかのMVNOは、現時点の状況でも大手の廉価プランに対抗すべく、新料金プランを打ち出す動きを見せている。例えば日本通信は2020年12月10日に、ahamo対抗プランとして「合理的20GBプラン」を打ち出している。月額1980円で16GBの高速データ通信と70分の無料通話が利用できる他、ahamoのサービス開始に合わせて高速データ通信量を20GBに増量するとしている。

 また「mineo(マイネオ)」ブランドでモバイル通信サービスを提供するオプテージも、2021年1月27日に新料金プラン「マイピタ」を発表。携帯電話各社の回線を使ったサービスの料金統一を図るとともに、大容量を中心として料金を大幅に引き下げる。5GBのプランで月額1380円、20GBでは従来プランの半額以下の水準となる月額1980円という料金で提供する。

 しかも2021年1月29日に楽天モバイルが発表した新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」は、月当たりのデータ通信量が1GB以下であれば月額0円という料金を実現。スタックテストをするまでもなく競争できる水準にない料金プランの登場で、MVNOの小容量プランは一斉に競争力を失い致命的な打撃を受けかねない。

 菅政権の姿勢がNTTドコモのahamoをはじめとした各社の廉価プラン提供へとつながっているわけだが、このように携帯電話大手がMVNO以上に安い料金プランを提供すれば、立場が弱いMVNOが太刀打ちできないのは自明だったはずだ。政権による圧力という拙速な手段で料金引き下げを実現しようとした結果、市場競争を促す役割を果たすはずだったMVNOに危機をもたらし、アクションプランに矛盾が生じてしまった。総務省や武田総務大臣、ひいては菅政権には、拙速な手段によらずに矛盾を解消する施策が求められるだろう。

3.コンテナ(2.3 日経XTECH)
コンテナとは仮想化技術の一種。クラウド環境などで広く使われている。従来の仮想化から順に追っていくとコンテナを理解しやすい。仮想化とは、ハードウエアをソフトウエアによって再現する技術だ。コンピューターの機能をソフトウエアとして実現する。このソフトウエアは仮想マシンや仮想機械などと呼ばれる。

 仮想マシンは仮想化されたコンピューターであり、アプリケーションだけではなくOSやミドルウエアといった実行環境も含まれる。仮想マシンに導入するOSはゲストOSと呼ばれる。

 仮想マシンはソフトウエアなので、1台のハードウエアで複数のゲストOSを動作させられる。1台のコンピューターで複数のコンピューターを同時に動かすイメージだ。ハードウエアを効率的に利用でき、運用や管理のコスト削減も期待できる。

 異なるOSを搭載した仮想マシンを動かせることも特徴だ。例えばWindows上でLinux環境の仮想マシンを動かすといったことが可能だ。

 仮想マシンは仮想化ソフトと呼ばれるソフトウエア上で動かす。米ブイエムウェアの「vSphere ESXi」や米マイクロソフトの「Hyper-V」が代表的である。

 だが仮想マシンを使う仮想化では、ゲストOSをそれぞれにインストールしなければならない。ゲストOSを動かすためのハードウエアリソース(メモリーやCPUといったコンピューター資源)が必要となり、ゲストOSの起動に時間もかかる。仮想マシンを作成するのも「部品」が多いために手間がかかるという欠点がある。

 そこで考え出されたのがコンテナである。コンテナはゲストOSがない仮想マシンといったイメージだ。アプリケーションやミドルウエアなどが詰まった「容器」であり、ハードウエアのOS(ホストOS)を使って動作する。ホストOS上で動作するので、ハードウエアリソースは少なくて済む。既に動いているホストOS上で動作するので、ゲストOSの起動を待つ必要もない。

 コンテナとホストOSを仲介するソフトウエアはコンテナエンジンやコンテナ管理ソフトなどと呼ばれる。コンテナエンジンとしては、オープンソースソフトウエア(OSS)として開発されている「Docker」が代表的だ。

 移行の手軽さもコンテナのメリットだ。前述したようにコンテナにはゲストOSが含まれていない。このため仮想マシンよりも軽量だ。しかもコンテナエンジンさえ動いていれば、どんなコンピューターでも実行できるため、移行にかかる手間を大幅に削減できる。

 コンテナは移行が容易なので一時的にハードウエアリソースを増強したい場合などに便利だ。リソースが必要なときだけコンテナをハイスペックのサーバーに移行したり、コンテナをコピーして複数のサーバーで動かしたりできる。例えばEC(電子商取引)サイトでバーゲンセールを実施した場合、一時的に大量のリクエストを処理しなければならなくなる。そういった場合に有用だ。

 現在はDocker向けのコンテナを配布・更新したり、負荷に合わせてコンテナの数を増減したりするコンテナ管理システムが登場している。OSSの「Kubernetes」などが挙げられる。また複数のクラウド事業者がKubernetesの機能をサービスとして提供している。これらのサービスはCaaS(Container as a Service)と呼ばれる。CaaSを利用すれば、Kubernetes用のサーバーを自前で用意しなくてもコンテナを効率的に運用できる。

4.参加企業に温度差、NTTの大胆すぎるIOWN構想(2.3 日経XTECH)
「われわれは、100%賛同してNTTのIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想に参加しているわけではない」

 NTTが提案する次世代ネットワーク構想「IOWN」。そのあまりに大胆な内容から、IOWNの仕様を検討する国際団体「IOWN Global Forum」参加企業の中からも異論が出ている。冒頭の発言は、IOWN Global Forumに参加するとあるIT企業幹部が取材中に漏らした言葉だ。

 IOWN構想は、通信とコンピューティングの分野にまたがるNTTの巨大構想である。目標時期は6G到来の2030年ごろ。フォーラムの拠点を米国に置き、設立メンバーのNTTや米Intel(インテル)、ソニーに加えて、2021年1月までにスウェーデン・Ericsson(エリクソン)や米NVIDIA(エヌビディア)など世界の通信主要各社も加盟した。NTTの将来インフラのみならず、世界の通信とコンピューティング基盤を塗り替えていこうという壮大な計画だ。

 「プロセッシングと伝送に膨大なエネルギーが要る将来のデータセントリックの世界において、光電融合技術は十分ゲームチェンジャーになりうる」とNTT社長の澤田純氏は力を込める。IOWNが狙うのは、大容量データを低遅延に伝送し、低エネルギーで処理する情報処理基盤を構築することだ。キーとなる技術は、現在の電子回路の基本となっている電子技術に加えて、低エネルギーが特徴の光技術を融合した「光電融合」である。長距離伝送に使われてきた光技術をサーバーの中の演算LSI直前などにまで広げ、最小限の処理に電気を用いる。光電融合を実現するには、光と電子回路の緊密な連携が不可欠であり、同社が開発した低エネルギーで動作する光−電気変換デバイスを活用する。

 光通信自体は、NTTのみならず世界中の通信・コンピューティング事業者が活発に研究開発し、実用化も進んでいる。IOWN構想が大胆なのは、その先のビジョンにある。

 再送やパケット変換等で遅延が発生する現状のTCP/IPではなく、HPC(High-Performance Computing)のメモリーアクセスに用いられるRDMA(Remote Direct Memory Access)を活用しようというのだ。IOWNの特徴であるオールフォトニクス・ネットワーク(APN)は、1つのサービスごとに1つの大容量光パスを割り当て、エンド・ツー・エンドで伝送するシステムのこと。データ圧縮処理が必要なく、大容量データを低遅延に送れる。ここで現在のTCP/IPを用いたままになると、APNの実力を生かしきれない。たしかに、RDMAと組み合わせることで、APNの低遅延性を最大限に引き出すことができる。しかし既存のインターネットの基盤を変えてしまうという大胆な発想となる。

5.「5GやAIが医療を変革」、Qualcommのコネクテッドホスピタル戦略(2.1 日経XTECH)
米Qualcomm(クアルコム)は2021年1月13日、5GやAIを活用して同社が取り組む医療変革を紹介するブログを掲載した。医療従事者と患者両方の福祉のために、最新技術とあらゆる資源を使って、革新的な医療を実現していくとしている。

 コネクティビティーは今までにも増して、患者が必要とする医療を平等に提供するために不可欠なものとなってきている。既に現在、患者が家にいながら医師とビデオで会話できる医療サービスも提供開始されているが、これは変革の始まりにすぎない。

 高速で安全な5G通信を活用することで、医療業界全体が、現在の課題を解決し、新たな可能性を切り開くことができるようになる。Qualcommでは、社会の要請に応え、将来を見据えたイノベーションを支援するために、次世代の医療において、医療従事者と患者の両方の生活を大幅に改善する取り組みを進めている。

 医療分野に5Gを適用することは、データ転送やセキュリティー、ブロードバンドアクセスや技術改善をさらに推し進めること以上の意味を持つ。広帯域幅、低遅延な5G通信により、高精細度の動画や画像のやりとりが可能になり、遠隔医療のみならず、患者に対する医療の質の向上につながる。診療所に行くことによる感染のリスクが下がるほか、医療機関に行くのが困難な遠隔地の患者も支援できるようになる。

 医師から看護師、検査技師、救急救命士まで、さまざまな医療従事者が大量のデータを共有するようになり、医療におけるデータ管理の重要性はますます高まってきている。ネットワークでいかに効率的にデータ共有を行うかが、患者の治療や医療上の重要な判断に多大な影響を与える。

 安定的で高速な接続が可能な5Gを使うことで、救急車が緊急搬送を要する患者のデータを医者に転送したり、医者がほぼリアルタイムに遠隔地の患者の状態を確認したりできるようになる。

 医療関連のデータは大容量である上に、非常に機密性の高い個人情報などを含んでいる。5Gでは、4G LTEからセキュリティーとプライバシーをさらに強化。遅延時間も大幅に削減し、エッジクラウドやAIなどを使った、エッジ側での高速なデータ分析も可能にする。

 ホームページへ