1.全銀システムは世界最先端に返り咲けるか、大手5行主導に潜む不安要素(10.9 日経XTECH)
2020年に入り、にわかに動き始めた「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」改革。目玉の1つがノンバンクへの開放である。これまで銀行などに限られてきた同システムへの参加資格を、キャッシュレス事業者などに開放しようとする動きが本格化し始めた。
どのように全銀システムの開放を進めるのか。方法は大きく3つだ。直接接続、間接接続、新たに構築した決済システムへの参加である。
直接接続の場合、ノンバンクは今の銀行と同じ立ち位置になる。中継コンピュータ(RC)と呼ばれるアプライアンス製品を導入して全銀システムと接続。資金決済の最終的な確定を担うため、日本銀行に当座預金を開設する。当座預金間の決済には、「日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)」を使う。
このやり方を採る場合、特段の制約はない一方でキャッシュレス事業者などの負担は大きい。特に重荷になりそうなのが、日銀による考査(日銀考査)。日銀が金融機関の業務や財産の状況を把握するため、立ち入り点検などを実施する。
システム面の負荷も小さくない。多くのシステムをクラウドベースで構築している新興事業者にとってはなおさらだ。「接続だけで年単位の期間と億単位のコストがかかるのではないか」と、キャッシュレス事業者の担当者は懸念する。
そこで次の選択肢として浮上してくるのが間接接続だ。全銀システムの直接参加者に決済を委託し、間接的に全銀システムを利用する。
全銀システムの開放を進めるもう1つの方法は、重厚長大な全銀システムとは別に低コストの決済システムを構築して、キャッシュレス事業者が接続するというパターンだ。厳密には「開放」ではないが、安価な手数料を実現できればキャッシュレス事業者が抱える振込手数料の問題解決につながる。「成長戦略実行計画」も多頻度小口決済を想定した新たな資金決済システムを検討するとしており、政府の筋書きでもある。
2.デジタル化の後に何が起こるのか、コロナ禍で加速する「アフターデジタル」の神髄(10.8 日経XTECH)
新型コロナ禍の今、「デジタル化」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」がそこここで語られる。だが、実際のデジタル化、DXとはどういったものなのか、デジタル化の後で何が起こるのかを明確に指摘したものは意外に少ない。
シリーズ累計15万部を突破した「アフターデジタル」「アフターデジタル2 UXと自由」(日経BP)の2冊は、この疑問に正面から答えてくれる数少ない書籍だ。読めば、アフターデジタルの時代を勝ち抜くために必須の思考法である「OMO(Online Merges with Offline)」、さらには「UX(User Experience)」の重要性が伝わってくる。
OMOは、オンラインとオフラインの融合を意味する。アフターデジタルの世界では、人々のあらゆる活動がオンラインにつながり、企業が提供するサービスはオンラインですべて完結することが当たり前になる。UXについては、多くの人がサービスのデザインや使い勝手の問題と考えるかもしれない。しかし単なる使いやすさの向上と捉えるのではなく、企業経営や社会の在り方を左右するものとして重視する必要があるという。
このまま日本がデジタル後進国に落ちぶれるのか、デジタルの力で世界を席巻するのか。我々は分水嶺に立っている。
3.5Gミニバスがスウェーデンの観光地を走る、700MHz帯利用(10.7 日経XTECH)
スウェーデンEricsson(エリクソン)と同国に本拠地を置く通信サービスプロバイダーTeliaは2020年9月24日、同日より約2週間の予定で、5G制御のミニバス「5G Ride」を運行すると発表した(Ericssonのニュースリリース、Teliaのニュースリリース)。同国ストックホルムの観光地ユールゴーデン島を走行する。発表式典にはスウェーデン王室のダニエル王子も出席した。このミニバスは、ソーシャルディスタンスを保つなど、新型コロナウイルス感染症関連の厳格な規定に準拠して運行し、一般客も搭乗できる。
北欧のデジタル化を推進する戦略的5Gパートナーシップの一環として、EricssonとTeliaが5G基地局を試験導入した。Ericssonは、ネットワーク用に商用のEricsson Radio Systemとソリューションを提供すると同時に、関連する管制塔施設にも技術提供している。なお、Teliaは2020年前半にEricssonの製品を使ってストックホルム中央部での700MHz帯の5Gネットワークを運用している。
今回のパイロット事業には、革新的な事業を進める企業や学術機関、公営企業が集まる団体Urban ICT Arenaやフランスの鉄道バス輸送会社Keolis、米Intelも参加し、より持続可能で効率的な公共交通システムの実現に向けた連携を進めている。スウェーデンイノベーションシステム庁(Vinnova)とその推進プログラムDrive Swedenがこの活動を支援しており、ミニバスはスウェーデンT-Engineeringが提供している。
今回のミニバスは、5Gの高速・高信頼・低遅延通信により、管制塔からの指令にリアルタイム応答する。2021年にはさらなる実証実験を実施して、最終的に5Gを使った自動運転の電動公共交通サービス実現を目指す。
4.G Suiteが「Google Workspace」に改称、アプリ連携を強化(10.7 日経XTECH)
米Google(グーグル)は2020年10月6日(米国時間)、電子メールやオフィススイート、ビデオ会議などからなるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を「Google Workspace」として刷新すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大によってリモート勤務が広がるなか、従業員が協業しやすくなるよう、各アプリケーションの連携を強化した。
Google Workspaceに含まれるのは、従来G Suiteの名称で販売していたサービスで、電子メールのGmailやビデオ会議サービスのGoogle Meet、ビジネスチャットのGoogle Chat、Docs、Sheets、Slidesなどのオフィスソフトウエア、ストレージサービスのGoogle Driveなどからなる。
Google Workspaceと言う名の通り、効率的に業務をこなせるようにビジネススイートのサービス間の連携を強化した。例えばGmailの画面からグループチャットや文書の共同編集などを立ち上げて、従業員同士が連携しながら業務を進められる新機能などに対応した。今後、数週間以内に、外部のゲストユーザーとチャットでドキュメントを共有し、共同編集するといった機能も追加する。
また、数カ月間で無償の一般ユーザーにもこうした連携機能を提供していくという。現時点ではGmailの画面からビデオ会議サービスを起動できるようにするなどしている。
5.「グローバルのデジタル金融分野に本格進出する」、NECの新野社長がスイス社買収で意気込み(10.5 日経XTECH)
NECは2020年10月5日、金融機関向けの資産管理支援ソフトウエアなどを手がけるスイスのIT企業Avaloq Group(アバロク)の買収についてオンライン会見を開いた。NECの新野隆社長兼CEO(最高経営責任者)は会見で「今回の買収でグローバルのデジタル金融分野に本格進出する」と意気込みを話した。
NECは同日、アバロクの持ち株会社WP/AV CH Holdings Iの全株式を取得し、子会社にすると発表した。取得価額は約2360億円で、21年4月までに買収を完了する。
アバロクは勘定系システムや金融資産管理支援ソフトウエアを提供している。資産管理や証券取引、不動産投資などのデータの分析を通じて、顧客ごとに資産運用のアドバイスをする「アドバイザリー機能」などに強みを持つ。
NECはアバロクを手中に収めて、金融分野でのデジタル化が進む欧州でのノウハウを取り入れ、金融向けの新たなSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の開発に注力する。その後、NECが顧客基盤を持つ日本やAPAC(アジア太平洋)、米国へ拡販する。「日本は金融のデジタル化が遅れているが、今後必ず国内でも大きなトレンドとなる」(NECの新野執行役員社長兼CEO)。
資産管理ソフトに着目した理由として新野社長兼CEOは「金融分野において現金預金から運用へと潮流が変化する中で、金融機関が収益源として強化する分野である」点を挙げた。加えてNECのAI(人工知能)やブロックチェーンなどの技術を生かしやすい領域であるとした。
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