1.ビデオ会議のズームは増収増益、新型コロナ対策特需は来期の追い風に(3.6 日経XTECH)
ビデオ会議サービスを手がける米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(Zoom Video Communications)の勢いが増している。現地時間2020年3月4日に発表した2020会計年度第4四半期(2019年11月〜2020年1月期)の決算によれば、売上高が前年同期比約78%増の約1億8830万米ドル、GAAP(米国会計基準)ベースの営業利益は同92%増の約1060万米ドルとなり、増収増益だった。
2020会計年度通期(2020年1月期:2019年2月〜2020年1月)では、売上高は前年同期比約88%増の約6億2270万米ドル、GAAPベースの営業利益は同106%増の約1270万米ドルとなった。
Zoomのシステムは、企業のビデオ会議以外にも、ウェビナー(オンラインセミナー)や教育などさまざまな用途に活用できる。米国では一般的で、例えば遠方の企業と電話・ビデオ会議する際には、Zoomの利用を指定してくる企業が多い。同社によれば、2019年11月〜20年1月期終了時点で、従業員10人超の利用企業が8万1900社と、前年同期比約61%増だったという。
2.国内スマホメーカーの5G戦略を斬る、注目はフラッグシップ以外の「あの端末」だ(3.6 日経XTECH)
シャープとソニーモバイルコミュニケーションズは、国内での5G(第5世代移動通信システム)商用サービス開始に合わせ、相次いで5Gに対応するスマートフォンやモバイルルーターを発表している。ともに5Gの高いネットワーク性能を生かす機能に力を入れた「王道」というべきフラッグシップのスマートフォンを投入しているが、両社の戦略を見る上でより注目すべきなのは、むしろフラッグシップ以外の5G対応端末である。
5Gの商用サービスは国内ではNTTドコモが2020年春、KDDIとソフトバンクが2020年3月のサービス開始を予定しており、まさに秒読み段階に入ったといえるだろう。そうしたことから国内のスマートフォンメーカーも、5Gに対応する端末を投入する動きを見せている。
その1社がシャープだ。シャープは2020年2月17日に新製品発表会を実施し、5Gに対応した端末を発表した。中でも注目を集めたのはスマートフォンの「AQUOS R5G」である。
AQUOS R5Gは同社のフラッグシップモデルの1つ「AQUOS R」シリーズの最新モデルであり、なおかつ同社初の5G対応スマートフォンとなる。フラッグシップモデルだけあって、米クアルコム(Qualcomm)のハイエンド向けチップセット「Snapdragon 865」を搭載するなど非常に高い性能を備えているのだが、最も力を入れているのはカメラだ。
実際AQUOS R5Gには、1200万画素の広角カメラと望遠カメラ、4800万画素の超広角カメラ、そして被写体との距離を測るToF(Time Of Flight)カメラの4つを搭載。3つのカメラを切り替えて多彩な撮影シーンに対応できるのはもちろんだが、最大の特徴は超広角カメラにある。
というのもこの超広角カメラは非常に多い画素数を生かし、4個の画素を1個として扱うことで高感度撮影ができることに加え、8Kの動画撮影にも対応しているのだ。それゆえ5Gの高速大容量通信を活用し、8Kの映像をスマートフォンだけでなく、テレビやパソコンなど幅広いデバイスで活用できることが、大きな特徴となっている。
ソニーモバイルコミュニケーションズは2020年2月24日に、5Gに対応したフラッグシップモデル「Xperia 1 II」を発表している。これは2019年に発売された「Xperia 1」の後継モデル。4K解像度で21:9比率のシネマワイドディスプレーなどといった特徴はそのままに、5Gに対応したモデルだ。
こちらも大きな特徴となるのはカメラである。1200万画素の広角、望遠、超広角カメラに加え、新たにToFセンサーを搭載する4眼カメラ構成というのはAQUOS R5Gと同様である。特徴的なのは、光学機器メーカーである独カールツァイス(Carl Zeiss)の「ZEISSレンズ」を採用している点、そしてソニーのデジタル一眼カメラ「α」シリーズで培ったカメラ機能をふんだんに取り入れている点だ。
だが正直なところ、国内メーカーの5G戦略を見る上で重要な意味を持つと感じたのは、これらフラッグシップモデル以外の5G端末だ。それらは先述したスマートフォンが対応していない28GHz以上の周波数帯を使う「ミリ波」に対応する点、そしてコンシューマー向けではなく法人向けという点で共通している。
実際、シャープが提供を発表した「5Gモバイルルーター」は最新の高速無線LAN規格である「Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)」に加え、USB Type-Cや2.5GBASE-Tのポートを備え、高速有線接続も可能となっている。帯域幅が広く、ダウンロードだけでなくアップロードの通信速度も高速になるミリ波の特徴を生かし、オフィスの有線LANと同等のネットワーク環境を、場所を選ぶことなく構築できる。これにより、仮設の事務所や有線LANを引けない店舗などに向けたオフィスのネットワーク需要開拓を目指しているという。
シャープの5Gモバイルルーターは、ミリ波の受信感度を高めるために向きの異なる3つのアンテナを搭載している。またXperia PROは側面の4方向にアンテナを配置する他、ボディーに樹脂製の素材を採用することで受信感度を高めている。加えて、ミリ波の方向と速度を表示するアプリを用意し、ミリ波での高速通信を確実にできる仕組みを整えている。
3.ソフトバンクの5Gは3月27日開始、「使い放題」は打ち出さず(3.5 日経XTECH)
ソフトバンクは2020年3月5日、5Gの商用サービス「SoftBank 5G」を3月27日に始めると発表した。既存の料金プランとは別に月1000円(税別)の「5G基本料」を追加で支払い、対応端末を用いることで5Gのサービスを利用できる。8月31日までに加入すれば5G基本料が2年間無料となる「5G無料キャンペーン」を提供するが、スタート時点でデータ通信の「使い放題」は打ち出さなかった。
5G対応スマホにはシャープ製の「AQUOS R5G」、中国ZTE製の「ZTE Axon 10 Pro 5G」、韓国LGエレクトロニクス製の「LG V60 ThinQ 5G」、中国OPPO製の「OPPO Reno3 5G」の4機種を用意した。3月27日以降、順次発売する。ソフトバンクショップ(直営店)の販売価格はAQUOS R5Gが12万9600円、ZTE Axon 10 Pro 5Gが8万9280円(どちらも3月27日発売予定)となっており、新しい販売プログラム「トクするサポート+」を適用できる。
スポーツやエンターテインメント分野を中心とした新しいコンテンツ配信サービス「5G LAB」も3月27日に始める。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、多視点映像などを活用したタイトル、クラウドゲームをそろえた。
4.AWS・Azure・GCPの世界3大クラウドをいいとこ取りできる「究極技術」の活用法(3.3 日経XTECH)
デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるのに役立つ3つのクラウド技術、「データレイク」「コンテナ」「マルチクラウド」の中から、今回はマルチクラウドを活用するZOZO、NTTドコモ、星野リゾート、マイナビの事例を紹介する。
「新しい事業や商品・サービスを作る際、クラウドの先端サービスでなければニーズを満たせないことがある。そこで複数のクラウドのサービスを併用し、マルチクラウドの構成にしている」。ZOZOのIT子会社であるZOZOテクノロジーズの岡大勝開発部Chief ZOZOTOWN Architect(CZA)はクラウド利用の方針をこう説明する。
ZOZOが最も利用するクラウドは米アマゾン・ウェブ・サービスのAmazon Web Services(AWS)だ。「AWSは顧客の声に基づいてサービスを開発しており、全般に使い勝手が良い」と岡CZAは評価する。しかしAWSのサービスだけでは足りないという。
「分野によってはAWSより先進的なサービスを米グーグルのGoogle Cloud Platform(GCP)や米マイクロソフトのMicrosoft Azureが提供している。それらの先進的なサービスを選んで、AWSのサービスと組み合わせて使っている」(岡CZA)。
先進的なサービスの1つがGCPのデータウエアハウス(DWH)サービス「BigQuery」だ。拡張性を高める独自の仕組みを備えており、数千ノードによる大規模分散処理も可能だという。ZOZOはBigQueryをWebサイトのログデータの分析などに使っている。
マルチクラウドにすることで各クラウドの先進サービスを取り入れられる半面、新たに生じる問題もある。例えばネットワークの遅延だ。複数のクラウドをインターネットで結ぶと遅延がばらついて安定しない。そこでZOZOは1カ所のデータセンターからAWSとGCPそれぞれに対して毎秒10ギガビットの専用線を敷設した。これにより「通常のデータセンター間の遅延と同じレベルに抑えられている」(岡CZA)。
マルチクラウドにすることで運用監視の手間が増える問題もある。クラウドはそれぞれ個別に運用監視サービスを提供しており、クラウドごとに監視しなければならない。
ZOZOは複数クラウドの運用について一元的に監視できるツールを導入した。採用したのは米データドッグの「Datadog」だ。「Datadogにより運用監視の負担は増えていない」(岡CZA)という。
5.DXやるなら活用必至、3大技術のデータレイク・コンテナ・マルチクラウド導入術(3.2 日経XTECH)
多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。この取り組みを加速させるのに役立つクラウド技術が3つある。「データレイク」「コンテナ」「マルチクラウド」だ。
データレイクは様々なデータをためるデータ基盤だ。WebサイトのログやIoT(インターネット・オブ・シングズ)のセンサーデータなどを蓄積する。
従来のデータ基盤であるデータウエアハウス(DWH)は確実に使うデータに絞って保管する。これに対してデータレイクは対象を「使う可能性がある」データに広げる。多様なデータは新しい事業を作る際にアイデアの源泉になる。AI(人工知能)の開発にも使える。
例えば眼鏡大手のジンズは新規事業でセンサー付き眼鏡を開発し販売している。付帯サービスとして、デスクワーク時の集中力を測定するアプリなどを提供する。そのアプリはデータレイクにためたデータを活用して作った。
新事業を支えるアプリケーションは日々更新する必要がある。コンテナはその際に役立つ。コンテナにはアプリケーションとOSを合わせて入れる。コンテナの実行環境さえあれば、クラウド上の開発・テスト・本番環境に加え開発者の手元のパソコンでも動作する。実行環境のOSを設定変更する必要が無いので、コンテナを移行させやすい。この特性は更新頻度を高めるのに役立つ。コンテナは前田建設工業や中古車大手のIDOMが導入している。
マルチクラウドは複数のクラウドからAIやデータベースといった分野ごとにサービスを選んで組み合わせたITインフラだ。クラウド事業者各社のサービスには一長一短がある。マルチクラウドの技術を使うとクラウドのサービスの選択肢を広げられる。企業は自社のDXに適したITインフラを構築しやすくなる。ファッション通販大手のZOZOやNTTドコモがマルチクラウドを運用している。
データレイク、コンテナ、マルチクラウドの3技術を使いこなす企業の取り組みを見ていこう。
「新規事業を進めていくうえでどんなデータが必要になるか分からない。だから全てのログをデータレイクに蓄積している」
こう話すのはジンズの菰田泰生MEME事業部統括リーダーだ。菰田統括リーダーらのMEME事業部はIoTを応用したセンサー付き眼鏡「JINS MEME」を開発している。この事業部でデータレイクを運用している。
データレイクに蓄積するのはJINS MEMEで生成されるログデータだ。JINS MEMEは加速度センサーや眼球の動きを捉える眼電位センサーなどによって、黒目の動きやまばたき、頭部の傾き・揺れなどを測定し、専用スマホアプリにBluetoothで転送する。ジンズはこのデータを吸い上げ、米アマゾン・ウェブ・サービスの「Amazon Web Services(AWS)」上のデータレイクにためる。ジンズはオブジェクトストレージの「Amazon S3」を使い2017年にデータレイクを構築した。
ためたログデータは1テラバイト近くに達する。蓄積し始めた当時、具体的な用途や新サービスのアイデアがあったわけではなかった。「ログデータの分析で新しいアプリのアイデアが湧くと考えた」(菰田統括リーダー)。
データ分析のため、S3にビッグデータ処理サービスの「Amazon EMR」を接続している。EMRはオープンソースのデータ分析ツール「Apache Spark」の機能を備えており、指定したデータをその都度読み込んで高速に処理する。いわゆる「アドホック分析」だ。EMRに常にデータを持たないこともあり、「データウエアハウスに比べて1桁以下の少ないコストで利用できる」(菰田統括リーダー)。
菰田統括リーダーらはデータレイクのログデータを分析して、JINS MEMEの新しい活用方法を考え、用途別のスマートフォンアプリを拡充してきた。
2018年以降、2つのアプリを開発しリリースした。アスリートやランニング愛好者向けに走行フォームの改善点をアドバイスする「JINS MEME RUN NEXT」、デスクワーク時の集中力を測定する「JINS MEME OFFICE」である。このほか、自動車運転手の覚醒度や眠気の変化を検知する「JINS MEME DRIVE」など既存アプリの改良にもログデータを役立てている。
「新しいアプリや機能はデータを基に作り出している。データレイクは試行錯誤を繰り返すDXに不可欠な基盤だ」と菰田統括リーダーは強調する。
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